
「ザ・エージェンシー」シーズン1 ('24)
フランスの人気ドラマシリーズ「Le Bureau des légendes(英題:The Bureau)」('15-'20) のアメリカ版リメイクで、CIAのベテラン潜入諜報員を主人公としたスパイスリラーシリーズのシーズン1全10話です。主演はマイケル・ファスベンダー、共演はジェフリー・ライト、ジョディ・ターナー・スミス、リチャード・ギア、キャサリン・ウォーターストン、ハリエット・サンソム・ハリス、ジョン・マガロ、サウラ・ライトフット=レオン、ヒュー・ボネヴィル、ドミニク・ウェスト他。
主人公を好きになれなくて序盤は全くハマらなかったのですが、中盤以降は物語そのものの面白さで充分に楽しめました♪
ただ、面白いことは面白いのですが、主人公がどうしても好きになれないので、特に心に響くものはないんですけどね (^^;;;
オリジナルのフランス版は全5シーズン全50話もあるので、人気が落ちることさえなければ、これから数シーズンは続くのでしょう。
とりあえず、ジェフリー・ライトとジョン・マガロが良いので、次のシーズンも機会があれば観ようと思います (^^)v
「Sublet」('20)
記事を書くためにイスラエルのテルアビブにやってきたニューヨーク・タイムズの旅行コラムニストの中年男性と、彼にアパートの部屋を又貸し(sublet)することになった男子学生の5日間の交流を描いたドラマコメディ映画です。主演はジョン・ベンジャミン・ヒッキー、共演はニヴ・ニッシム、リヒ・コルノフスキー、ピーター・スピアーズ、ミキ・カム他。
文字通り「中年の危機」にある超真面目な主人公と、享楽的で楽天的な若者という親子以上に年の離れた対照的な2人の男性の交流をユーモラス且つ爽やかに描いていて![]()
自分も圧倒的に主人公側なので、若者とのジェネレーションギャップに同じように戸惑うとともに「そうか、1980年代から1990年代って、もはや『歴史』なんだなぁ…」と気付かされて愕然としたり。
決して「感動の大傑作!!」ではないですが、テルアビブの景色や街並みののんびりとした雰囲気はもちろん、後味の良さもあって、観終わった後にはちょっとだけ幸せな気持ちになれる映画でした。
「緑の夜」('23)
運命的に出会った2人の女性が社会の底辺から抜け出そうとするさまを描いた逃走犯罪劇です。主演はファン・ビンビンさん、共演はイ・ジュヨンさん、キム・ヨンホさん、キム・ミングィさん他。
現代を舞台にしているし、現代の映画らしい演出ではあるのだけれど、ストーリー自体は1970年代の映画のよう。
だからと言って「古臭い」話ではなく、半世紀以上経った今でも、こういった状況にある女性は山のようにいる現実をまざまざと見せつけられ、ただただ切なく虚しい気分に。
救いはあるものの、結末は辛いもので、後味も悪く、この終わり方もまた1970年代の映画っぽく感じられた理由なのでしょう。
ただ、映画としての出来はイマイチ。
「逃走劇」のはずなのに全く緊張感がないのはダメ。もっとスリリングに描かなければ2人の女性の言動に説得力がないと思うのですが、この映画の監督はその点には全く興味がなかったようで、「感覚の違い」を感じるばかりでした。
「ハンテッド 狩られる夜」('23)
深夜のガソリンスタンドで謎のスナイパーに命を狙われた女性のサバイバルを描いたスリラーです。主演はカミーユ・ロウ、共演はジェレミー・シッピオ、J・ジョン・ビーレ、アレクサンダー・ポポヴィッチ他。
スリラーとしては充分な出来だとは思います。
ただ、今の時代にこういうタイプの話を作ろうと思うと社会問題を絡めないわけにはいかないのかもしれませんが、この映画に関して言えば、それがスリラーとしての効果を高めているとは思えず。絡めるならもっとガッツリ絡めるか、そうでなければさらっと流せばいいのに中途半端なままなので生煮え感でいっぱい。
そもそも犯人の手口自体が中途半端なのも![]()
ま、この手の映画で難しいことを考えるのは野暮なんでしょうけど。
「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」('22)
韓国軍兵士が偶然拾った賞金約6億円に当選したロトくじが風に乗って北朝鮮兵士の手に渡ったことから大騒ぎとなる南北の兵士たちを描いたコメディです。主演はコ・ギョンピョさん、共演はイ・イギョンさん、ウム・ムンソクさん、パク・セワンさん、クァク・ドンヨンさん他。
→ 輝国山人の韓国映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」
後味は悪くないし、面白いっちゃ面白いんですけど、あまりにノーテンキで現実離れしていて、そこがどうしても気になっちゃったんですよね。題材が題材なだけに。
が、これが今の韓国の人々の「南北統一は実はそんなに難しくない(はず)」との強い願望の表れかと思うと、それはそれでちょっと切ないものがありますけどね。
ただ、このネタで2時間近い尺は無理があって間延び感は否めず。90分程度でさくっとまとめて終わらせた方が良かったんじゃないかなぁと思います。
「殺人鬼の存在証明」('21)
1978年から1990年にかけ、50人以上の子どもや女性たちを惨殺し、旧ソ連史上最悪の連続殺人犯とされる実在の殺人鬼アンドレイ・チカチーロをモデルに、連続殺人犯と彼を追う捜査陣が織り成す錯綜したドラマを、時系列をシャッフルさせながら描いたロシアのサスペンス映画です。主演はニコ・タヴァゼ、共演はダニール・スピヴァコフスキ、ユーリヤ・スニギル、エフゲニー・トゥカチュク他。
旧ソ連を舞台にしているので覚悟はしていましたが、中盤までは予想以上に過剰なマッチョイズムを見せられ続けてゲンナリ。
ただ、その間も微妙な違和感が常に付きまとい、それが終盤に明らかになる真相の伏線になっていたことが分かってからは一気に引き込まれてしまいました。
実在の殺人鬼をモデルにしているとは言え、あくまで着想を得ただけのフィクションのはずですが、いわゆる「有害な男らしさ」の罪深さを描いた作品と解釈すると、いまだにマッチョイズムに支配されているロシアでこのような映画が作られたのは評価に値します。とは言っても、監督のラド・クヴァタニアはジョージア出身らしいので、ちょっと割り引いて受け取る必要はありそうですけどね。
初の長編監督作品ということもあってか、トリッキーな作りにこだわり過ぎるあまり、必要以上に分かりにくく、一貫性に乏しくてバランスが悪いなど、完成度がイマイチなのは残念ですが、それでも「終盤は」かなり楽しめました。
「Point Defiance」('18)
人里離れた山の中の邸宅で1人で暮らしている男のもとに問題を抱えた弟がアフガニスタンでの兵役から戻って来たことで兄弟の秘密が明らかになっていくさまを描いたサイコスリラー映画です。主演はデレク・フィリップス、共演はジョシュ・クロッティ、ローレン・エレイン、サラ・バトラー、スティーヴン・スワドリング他。
もったいない…。
思いっきり好みの題材。
主人公とその弟を演じた2人の役者も役に合ってる。
が、それらを充分に活かし切れておらず、ただ分かりにくいだけの作品に![]()
それでなくても、この題材は好みが分かれ、「後出しジャンケン」だとか、「反則」だとか言われやすいので、それだけに説得力のある見せ方をするのが作り手の腕の見せ所のはず。が、まったくもって力及ばず。
アイデアは悪くないんですよ。
ただ、主人公の「自宅軟禁」をはじめ、時系列の件など、様々な点が中途半端に放置されたままなので、観終わった後にまったくスッキリしないのです。この手の題材は、パズルのピースが最後にカチッとハマるところに快感があるのに、全然ハマらずにバラバラのままなんですから。
おそらく真面目に映像化すると2時間を悠に超える尺になってしまうので、編集の結果としてこうなったのかもしれませんし、そもそも全3話くらいのミニシリーズ向きの話なのかもしれませんが、それにしても、もうちょっと何とかならなかったのかなぁと。
ただただ残念。
「Big Boys」('23)
14歳の大柄なぽっちゃり少年の一夏の淡い恋を描いた青春コメディドラマ映画です。主演はアイザック・クラスナー、共演はドーラ・マディソン、デヴィッド・ジョンソンⅢ、エミリー・デシャネル、タージ・クロス、マリオン・バン・キュイク他。
「思春期を迎えた少年の淡い初恋」なんて手垢の付きまくった題材ですが、今の時代だからこそ可能になった設定がとても新鮮な雰囲気に。
主人公が縦にも横にも大きい文字通り「big boy」であること自体は映画の主人公として珍しくないものの、よくある漫画チックな「オタクで冴えない」というタイプとは異なり、誇張のない自然な少年像がむしろ新鮮。
また「初恋」とは言っても、本当に「淡い」もので、もはや「恋」とも呼べないような可愛らしいもの。「憧れ」に「恋心」をまぶしたようなイメージ。
そして何と言っても、主人公の少年がほのかに想いを寄せる相手が、今までにないタイプで、この設定が本作を既存の同様の作品とは大きく異なる新鮮なものにしています。
とにかく、この映画を観て勇気づけられる同年代の男の子はきっといるはず。その意味でも本当に意義のある作品だと思います。
「Elijah's Ashes」('17)
何もかもが正反対の腹違いの兄弟が急死した父イライジャの遺灰を埋葬するための旅を描いたロードムービー・コメディです。主演はアリ・シュナイダー、ライアン・バートン=グリムリー、共演はトニ・シャーリーン、クリスティーナ・チャンシー、マット・クレイグ、ケイシー・グラフ、パイパー・ギリン他。
もう8年も前の映画なので今とはちょっと違うとは思いますが、アメリカの田舎の保守的な白人男性の愚かしさを極端に分かりやすく描いていて、面白いと言えば面白いのですが、ここまで行くと「バカにしすぎじゃない?」とちょっとひいてしまいます。
こういう「上から目線でバカにする」姿勢が、保守層からリベラルが嫌われる理由だってことがよく分かりますし、むしろそういうリベラルの「根性の悪さ」を描いた映画と読み替えることもできるかもしれません。
「響け!情熱のムリダンガム」('18)
インド伝統音楽の打楽器「ムリダンガム」に魅せられた青年が、さまざまな困難を乗り越えながら一流の奏者を目指す姿を描いた音楽青春ドラマ映画です。主演はG・V・プラカーシュ・クマール、共演はネドゥムディ・ヴェヌ、アパルナー・バーラムラリ、ヴィニート、ディヴィヤダルシーニ、スメッシュ他。
ストーリーそのものは「ムリダンガム」を題材にしていることを除けばかなりありきたりで予想通りにしか展開しません。
が、背景に今も根強く残るカースト制に基づく身分差別の問題があることで、表現自体はあっさりで軽めにもかかわらず、かなり重めな印象。
さらにそこに「伝統と革新」というテーマも加えることで、ストーリーに厚みが生まれています。
ただ、ストーリー展開にぎこちないところが多く、もうちょっと自然な流れにできなかったのかなぁというのが正直な感想。








