「白夜行」('06) | Marc のぷーたろー日記

「白夜行」('06)

白夜行 完全版 DVD-BOX
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東野圭吾さん原作の傑作ミステリーを大胆にアレンジし、「罪と罰」、そして究極ともいえる「純愛」を描いた濃厚な人間ドラマです。主演は山田孝之さん、綾瀬はるかさん。共演は武田鉄矢さん、渡部篤郎さん、八千草薫さん、麻生祐未さん、余貴美子さん、柏原崇さん、小出恵介さん他。
この作品は、雑誌「ザテレビジョン」主催の第48回ドラマアカデミー賞で、最優秀作品賞、主演男優賞 (山田孝之さん)、助演女優賞 (綾瀬はるかさん)、助演男優賞 (武田鉄矢さん) の 4冠を獲得しています。因みに山田孝之さんと綾瀬はるかさんのコンビは、「世界の中心で、愛をさけぶ」('04) でも最優秀作品賞、主演男優賞 (山田孝之さん)、助演女優賞 (綾瀬はるかさん) をはじめとする 9冠を獲得しています。
Wikipedia「白夜行」
「白夜行」まとめサイト
ザテレビジョン第48回ドラマアカデミー賞

2004年の「超」傑作ドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」 とは、主演コンビだけでなく、プロデューサや脚本などスタッフも同じということで、放送前から話題になっており、僕も非常に楽しみにしていたのですが、当時は本業があまりに忙しくて観ることができず、悔しい思いをした作品なのです。

今回、何とかようやく観ることができ、全11話を一気に観ちゃいました (^^)v

放送当時、そのあまりに壮絶で残酷なストーリーに賛否両論が噴出し、また原作のミステリー要素を完全に排除し、ラブストーリー中心にアレンジした内容に原作ファンが猛反発。更には原作者自らも「主人公の性格が180度違う」と発言するなど物議をかもした作品ということで、期待半分、不安半分で観始めました。

そして、





廃人になりました…。



ドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」 も毎回のように観終わった後は軽い廃人状態になっていましたが、それでも最終回は救いのある終わり方だったので、全てを観終わった後はむしろ温かな気持ちになったのです。

それに対して「白夜行」は…


こんなに苦しくて、辛くて、切ない話があっていいのでしょうか?


感動したとか、可哀想だとか、泣いたとか、そんな生易しい陳腐な言葉では説明できない、この気持ちをどう表現していいのか分かりません。

主人公・亮司 (山田孝之さん) と雪穂 (綾瀬はるかさん) が重ねた犯罪はあまりに身勝手で残酷。とても人間のできることではありません。まさに人の皮をかぶった「化け物」。そこに共感も同情もありえません。また冷静な目で見れば、2人はあまりに愚か。別の選択肢もあったはずなのに、敢えて自ら進んで暗闇に堕ちていっているとしか思えないほど、自らの不幸な境遇に酔いしれている部分が多々ある…。

それなのに、そんな 2人の姿を見ているだけで、何故こんなにも胸が苦しくなってくるのでしょう…。

毎回毎回、観ているだけで辛くて辛くてたまらないのに、それでも 2人の行く末を見守らなくてはいけないような、そんな義務感も感じながら最後まで一気に観ました。特にラスト 3話は息をするのを忘れるくらいに集中して…。

「白夜行」というタイトルの意味があまりに切ない…。柴咲コウさんによる主題歌「影」とともに流れる 8mmフィルムのようなエンディング映像での亮司と雪穂の幸せそうな姿は涙なしには見られません…。

このドラマで特に印象に残ったのは、亮司の独白めいたナレーションと 2人を追いつめていく笹垣 (武田鉄矢さん) のセリフにある親鸞の教えを説いた「歎異抄」の1節。どちらも一回聴いただけでは理解しきれないところがあるのですが、噛み締めるほどに深みがあるのです。

大胆な脚色が原作のファンからは批判を浴びていますが、原作では全く描かれていない亮司と雪穂の内面を脚本の森下佳子さんの「解釈」で描いた点は素晴らしく、確かに作り手側の宗教観や「罪と罰」の考え方が色濃く出ているため、かなり好みが分かれるとは思いますが、非常に良く出来た脚本だと思います。

このドラマに関しては、はじめから「山田孝之-綾瀬はるか」の「ゴールデンコンビ」ありきでの企画なので、脚本も 2人に当て書きしている部分は多々あると思いますが、それでも主演の 2人の熱演ぶりは素晴らしい。

「世界の中心で、愛をさけぶ」 でまさに「純愛」の代名詞ともなった 2人に、敢えて「究極の汚れ役」を演じさせることで、その奥にある「究極の純愛」を浮かび上がらせようという企画意図はあざといと言えばあざとい。

しかし、それでも 2人がこのような汚れ役を演じ切った点は見事としか言いようがなく、また、いくら演技力を評価されている 2人とは言え、放送当時はピュアな魅力でアイドル的人気のあった 2人にここまでの汚れ役をやらせた周りのスタッフも、ある意味「スゴい」。
山田くんの場合は、ちょうどこのドラマの放送時に、その役柄とも重なるようなスキャンダルがあり、アイドル的な人気は一気になくなりましたが、その分「大人の演技派俳優」としてのイメージチェンジには成功したとも言えます。結果的には「白夜行」の放送とスキャンダルが重なったのは彼の俳優人生にとってはラッキーだったかもしれませんね。
気弱な少年だった亮司が徐々に人間としての良心を捨てていく過程や、雪穂に全てを捧げ、亡霊のように雪穂の影として生きる道を選択した後の、恐ろしいまでの「死相」を漂わせた姿は、独特の暗い雰囲気のある山田くん以外で表現できる俳優はいないと思います。

一方の綾瀬はるかちゃんは、清純な顔の裏にある魔性と狂気を生々しく的確に表現し、同時にぞくっとするような大人の色気を発していたのが印象的でした。

更にこのドラマは主演の 2人だけでなく、周りのキャストも素晴らしい演技を見せています。特に武田鉄矢さんと雪穂の子役時代を演じた福田麻由子ちゃんの演技には身震いするほどでした。

他にも渡部篤郎さんや麻生祐未さんなど、ベテランの実力派を贅沢に配したキャスティングもこのドラマの魅力だと思います。

とにかく、大きく好みの分かれる作品なので万人にお勧めはしませんが、ドラマ版「世界の中心で、愛をさけぶ」を観て感動した方には、それとは真逆の世界を描いた「白夜行」を比較しながら観ることを強くお勧めしたいです。

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