ブルーノ・ワルターの演奏するマーラー交響曲4番(1945)。33CX1043。
ワルターの演奏するマーラー4番を初めて聴きます。シュワルツコップとのコンビで入れた有名なステレオ盤は聴いていません。
ソプラノはデジ・ハルバン(1912-1996)で、ちょうど今月のレコード芸術にこのワルターとハルバンによるマーラー4番のレコードの特集があり、興味深く読みました。
記事はデジ・ハルバンの人生に触れていて、面白かったです。
ハルバンについてはあまり情報がないようです。オーストリアのオペラ歌手だったようですが、4年程の短い期間ウィーンで活躍したのちに結婚して引退、その後戦争により、未亡人となった彼女はニューヨークに渡り、ワルターが世界に紹介したがっていた、マーラーの交響曲の録音に抜擢されたようです。
彼女自身、子供時代にウィーンでワルターと面会していて、彼女のオーディションなどにも付き合ったそうです。
録音も彼女の名前で検索するとヒットするのがこのマーラー4番がほとんどで、これだけで彼女のことを書くことは難しいです。しかしこの録音がこの曲の商業録音としては2番目であり、実質この録音がこの曲を世界に広めたものといって良いでしょう。
近代のマーラー演奏は各楽器の音色を生かして、パートごとの旋律を浮かびあがらせ、立体的であると同時に、色彩的な演奏を行います。近代的なオーケストラ美を存分に発揮できるのがマーラーの音楽で、その楽しみは感覚的であり得るものです。
ところがブルーノ・ワルターの演奏は、旋律の感情的な側面を自然に表現することが主題となっていて、近代的な機能美を発揮したマーラー演奏とは一線を画します。
旋律は時代錯誤かとも思われるほど優美な歌い方で歌い抜かれ、優しさが零れ落ちるような感情と、ロマンティックな雰囲気は、恍惚とした世界に我々を誘なっていきます。旋律の角は削り取られ、丸みを帯び、優しい魔法がきらめくような、ファンタジーの世界へと、私達は導かれます。愛情に溢れた演奏で・・・まさに21世紀でもなく、20世紀でもない、19世紀の味わいでしょうか。
感情の美しさに言葉を失うような演奏といえば良いでしょうか。
この4番は自然とファンタジーが組み合わされたような美しい曲ですが、そこに秘められた美しい感情を、自身の感情からこれ程はっきりと表現できるのは、ブルーノ・ワルターぐらいでしょう。
フィナーレのハルバンは特に癖のない(当時としては)、自然な歌い方です。


