イザベル・ファウストの無伴奏が結局手に入れられなくて、何か代わりのものを探していました。代わりといっては怒られるんでしょうけど、ユリア・フィッシャーの無伴奏をアナログ盤で購入しました。
2004年の録音で、当時まだ21歳という若さの録音です。
比較ついでに、先日発売されたヒラリー・ハーンの無伴奏を聴いてみました。ハーンの演奏は、これに比べると厳しめの演奏です。少しシゲティを思い出すような、鋭い音色の切れ口で、細部をクローズアップするようなスケールの大きさがありました。
聴いていると、欧州の生の空気そのものを詰め込んだような、フレッシュな印象です。その分、ヴァイオリンの音色も濃くて、少しくどさはあるのかな。自分は1度に全曲を聴き通そうとは思わないような雰囲気です。
それに比べると、フィッシャーの無伴奏は音の角も弱く、すらすらと進みます。しかしヴァイオリンの音色の潤いと艶は丁度良くて、聴き心地が良かったです。
無伴奏はどの曲も同じような音型がちょっとづつ姿や角度を変えて進みます。こういう演奏で聴いていると、そのどの側面にも美と調和があることに気付かされます。落ち着いて心静かに聴くと、その文脈の長さと、繊細さとに驚きを新たにします。
このLP、ジャケットが真っ白なんですが、1曲聴き終わると、不思議とそのイメージ通りの感想を持ちます。真っ白な、クリーム状の静謐さです。昔からCDなんかでも、レコードのジャケットはその演奏の雰囲気を良く表しているケースがありますが、今回もそれを感じました。
聴き心地と嫌味のない味わいで、音も良く、当面のお気に入りになると思います。
最近聴いたうちで1番びっくりした演奏が、フランスの天才ヴァイオリニスト、ジネット・ヌヴ―(1919-1949)の演奏です。曲目はシベリウスの協奏曲(1947)です。
音は固くて悪く、高音部は鋼のようです。キンキンします。それでも聴き込んでしまう様な迫力がこの演奏にはあります。
ヌヴ―は、今の人のように曲全体の造形とか、客観性にそれほどの注意を払いません。
彼女はヴァイオリンを通して人に伝えたい気持ちがあるに違いなく、今の人たちとは比較にならないような集中度で、ヴァイオリンを弾き切ります。そのアタックの強さ、強烈な情熱的訴えに、目頭を熱くする人もいるかもしれません。胸を熱くさせる演奏家です。まるで巫女のようです。
小股が切れ上がるような強力な表現、その迫力は原始的な何ものかに例えられるともいえましょうか。
生まれながらの天才だったようです。将来も嘱望されたに違いありませんが・・・。
残念ながら、1949年、彼女の乗った航空機はアゾレス島の山腹に墜落し、兄ジャンと共にその若すぎる命を散らしたそうです。30歳という若さです。
数は多くないようですが、彼女の他の録音も聴いてみたいと、強く思わされました。




