はたしてこの「議定書」なるものは本物なのでしょうか?一般にいわれているようにこの「議定書」が偽書であるのなら、ナチスのホロコーストを生んだ深刻な原因として、看過されるべきものではありません。あるいはこの書物が「本物」だとしてもですが・・・。
ホロコーストではおよそ600万人のユダヤ人が殺害されたといいます。マス・プロダクションによるベルト・コンベアー式の大量殺人は、「人類そのもの」の価値を下げるものであり、残虐さを通り越しています。では、仮にユダヤ人がこうしたやり方を見込んでまで、自分達のやり方をリークするのか?という疑問が出てきます。しかもユダヤ人全体がこうした陰謀に関わっているといういい分もどうなのでしょう?
議定書には次のようにあります。
「下層階級に属する我々の同族を一致団結させるために、我々は反猶太主義を必要とする。然し余は此の問題に関して、既に度々論じたことがあるので、茲では之に就ては詳述することを差し控える。」
次は前にも引用しましたが。
「神聖なる猶太王の頭に、欧州各国が彼に捧げる王冠を戴くとき、彼は全世界の族長、家長となるであろう。此の事は勿論犠牲を要するが、然しこの数は、非猶太人政府間に行われた誇大狂と競争とが、数世紀間に人間に課した血腥い犠牲に関しては、論ずるに足りない。」
確かにユダヤ人の犠牲に関して述べているところがあるのは確かですが・・・。ノーマン・コーンの著作の訳者、内田樹氏はこのことについて、以下のように書いています。
<『プロトコル』を本物だと思っている人は(失礼だが)頭が悪い。なぜか。わかり易く説明しよう。
『プロトコル』とその書類は堂々と天下に流布している。版元が火事にもならず、校注者が変死するでもなく、読者が秘密警察に拉致されるでもない。この事実を説明するロジックは二つしかない。
(i)シオンの賢者はその陰謀の実相を暴露する書物の刊行を停止せしめるほどには実効的に世界を支配していない。
(ii)シオンの賢者は世界を完全支配しており、『プロトコル』の漏洩(リーク)と宣布はシオンの賢者が計画実行している。
(i)の場合、シオンの賢者の超政府は無能無力であり、これは『プロトコル』中の記述と矛盾する。
(ii)の場合は『プロトコル』はシオンの賢者の世論操作は一手段であるはずだから、これを宣布する者はシオンの賢者の走狗であり、これを信じる者はその傀儡である。それにシオンの賢者の世界支配戦略は『プロトコル』の故意のリークと宣布、さらにユダヤ人虐殺をも含めたきわめてトリッキーなシナリオでなければならず、『プロトコル』のごとくふざけたものではりえない。
ユダヤ人の世界支配陰謀について本を書くほどの人は、せめてこのトリッキーなメタ=陰謀にまで考え及んでほしいものである。そしてユダヤ人虐殺によって大いに利を博す「真犯人」を探し当てていただきたい。>
としています。しかしこれもかなり雑な議論で、ちゃんと「議定書(プロトコル)」を読むと色々気になることも書いてあります。ちなみに内田氏は別途新書でこの問題を述べていますので、興味ある方はそちらを参照してください。
