内田樹著、「私家版・ユダヤ文化論」。
ユダヤ問題を専門的に掘り下げています。「政治的に正しい」とは何かを考えさせられました。
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ただ前もっていっておきますが、ここまで書いてきてちょっと卑怯かもしれませんが、個人的にこの書物が「本物」か「偽物」かは分かりませんね。ただ単純に世の中では偽書説が有力だとして、話を進めてますが、どうもそれだけでは説明できないところも世の中にあるのかなと思って、その理由を書いています。
まず(i)についてです。現在の権力の根源が資本にあることと、その集約的な状況があり、そこにいる人達が実質的に世界を支配をしているような状況を考えると、何かしらの一団がいるような気がすることが挙げられます。そしてことは必ずしも「議定書」の内容と矛盾しません。彼らは「超政府」の出現はタイミングを見るとしていて、現在既に存在するとはいってませんね。
「我々の、未来の世界の世界支配者の出現によって、我々の政府は外観的には臣下の禍福に対して家長的な関心を持つように見える。」
「我々が公然と世界支配権を掌握したならば、我が施政の如何に善政であるかを證示する為にめに、従来の法律を全般的に改造するが、我々の法律は簡単明瞭にして不可変であろう。」
「われわれが世界各国に同日同時刻に惹起させようと準備してゐる革命に力によって遂に政権を獲得した時、而して現存の各国政府の無能力が確認された後(之が為には多少の時日を要し、殊によると一世紀を要するかも知れぬ)には、われわれに対して陰謀が起こらぬようにせねばならない。」
「各人は平和を求めて、懐かしい平和のためならば、万事を犠牲にする気になつてゐる。然し我々は、彼らが我々の世界的超政府を公然と無条件に承認する迄は、彼等を休ませることはしない。」
「我々が既に久しい前から心に描いて居た全く新しい国家の殿堂には、あらゆる国民を賛成ならしめる事が肝要である。」
とまあ、以上のようなことが書いてあるので、何故翻訳者が(i)のような定義をしたのはかは分かりません。問題は(ii)の方でこちらは説得力があると思います。
実際に「議定書」内に反ユダヤ主義が必要とされる部分がありますから、この書物を宣伝すればするほど、彼等への憎悪と偏見は高まる可能性がありますし、実際そうなったわけです。また、なんでシオンの賢人が、仮にユダヤ人への憎悪をかきたてるためとはいえ、自分達の世界戦略のためにここまでの分量の内容をリークする必要があるかということも疑問です。
この辺のところは結局歴史的事実から見てみるしかありません。
ユダヤ人の虐殺は人類の決定的な問題です。しかしこのせいで、「ユダヤ人に国家を持たせなければ」、という「シオニズム運動」が肯定されたのも事実です。この件は、いい方に問題ありますが、運よく「議定書」通りに運んだ、という印象があります。だから、これを全て陰謀のせいにはできないという側面もあります。一体誰がヒトラーの出現まで「陰謀」だけでなしうるか、というところがありますね。
「議定書」のリークがシオンの賢者の「世論操作」になっているという点については、次のようなことが挙げられます。
まず、実際「陰謀論」があるとして、急にこのことが他者によって明るみに出れば、衝撃は大きいです。ですので、あらかじめ、偽書とも本物とも分かりずらい感じで、世に出して印象を操作する、というものです。
また、その為かどうかは知りませんが、この書物が「偽物」、「本物」という点で未だに人々が争っている、という事実です。これは決定的な証拠がありませんから、結局「答え」が出ませんね。そうすれば未来永劫、その内容が「本物」だとするのなら、そこに辿りつくことはありません。
自分が引用している「議定書」の訳文は1936年のものです。ヒトラーの「我が闘争」も第二次世界大戦がはじまる前に書かれました。
その後第二次世界大戦が終結し、冷戦時代はあったものの、資本主義によって世の中の権力は「金」に集中するようになってきたわけです。そんな中でなお、訳者の内田氏のいう「さらにユダヤ人虐殺をも含めたきわめてトリッキーなシナリオ」も出来上がっていることを考えると、ちょっとこれを本物だといっている人のことも分からなくないと感じてしまいます。
証拠はないので、結局何ともいえないですし、ヒトラーの意見を肯定するのか、といえば答えに窮します。また、仮に信じたとしても本当に「ユダヤ人全体」が「陰謀」に関わっているのか、と聞かれれば、それも違うかと考えるところです。
初めにいったように自分はこの書物に触れたくありませんでした。どのみち、結論が出ないし、頭のおかしい人(もうすでにおかしいですが・・・)の仲間入りもしたくないからです。ただ、この本が偽物本物以上に、まとめた人が何かしらの洞察力があり、現代にも生かせる部分があると思ったのでここまで書きました。それは当然反面教師的な内容ですが、そのことを次に書いていきたいと思います。
