バルトリの「夢遊病の娘」。 |  ヒマジンノ国

 ヒマジンノ国

ブログの説明を入力します。

長谷磨憲くんち


今回は珍しくヒストリカルでない録音を買ってきました。


ベルリーニのオペラ「夢遊病の娘」全曲。

アレッサンドロ・デ・マルキ指揮、スキンティッラ管弦楽団。メゾ・ソプラノ、チェチーリア・バルトリ、他。

______________________________


______________________________


最近は雑誌も、あるいは新しい演奏者の情報も、ほとんど興味がなくなってしまって、レコード屋とかネットで、調べて気になったのを買うことが多くなりました。


その分、失敗も多いですけど。以前、渋谷のタワーレコードで、カンプラのレクイエム(エラートから出ているフレモーの演奏)をやたら押していたので買ってみたんですが、全然感動しなかったりしてね。試聴もしたんですが、レコード屋で試聴したものはどれも「良さげ」に聴こえて仕方がないんです。装置がいいのかしらん。


まあ・・・クラシックが好きな人にしてみると、レコードの選別の失敗は日常茶飯事ですから・・・無駄使い多し・・・です。


僕は演奏者も最近の人はあんまり知りません。チェチーリア・バルトリは名前ぐらいは聞いたことはあったんですが、歌を聴くのは今回が初めてです。テノールのファン・ディエゴ・フローレスもその道じゃあ、有名らしいですけど・・・。完全に勉強不足ですね。何でも両者ともベル・カントの大家らしいです。

______________________________


______________________________


しかし、今回買ってきたこの録音はとても良かったです。


買ってきたのは、ベル・カントの大家二人が歌うオペラ「夢遊病の娘」全曲の録音で、2007年のもの。この曲はヴンチェンツォ・ベルリーニという19世紀のイタリアの作曲家の作品で、いわゆる「ベル・カント・オペラ」とのこと。


ベル・カント全盛期といえば、イタリアの、このベルリーニ(1801-1835)とドニゼッティ(1797-1848)が生きていたころぐらいでしょうか。その中でもベルリーニといえば第一に「ノルマ」、次に「清教徒」、そしてこの「夢遊病の娘」・・・ぐらいが挙がる、というところでしょう。


僕もこの辺の作品に触手を伸ばしたのは最近ですので、そんなに詳しいわけではありません。


作品そのものを見ると、台本は完全に時代遅れの文学性しかなく、オーケストラの音も素朴、そのため、現代の我々に訴えるものは少ない作品といえるでしょう。現代人が聴くと、心理描写なんかもちょっと素朴すぎて、ついていけないときもあります。しかしその分、大昔の人々の考えを垣間見た気にはなれます。


どの場面も歌に頼ることが多く、ベル・カント作品がいつもあるように、歌手の歌を楽しむ作品だと思います。


舞台は時代設定のない、スイスの小さな村で、エルヴィーノ、アミーナという恋人の物語です。物語の核になるのは、水車小屋の娘、アミーノが夢遊病者であるということで、そのことを中心にエルヴィーノとアミーノの恋の試練を描きます。結末で、二人の仲は丸く納まりますので、素朴な内容とあわせて、中々可愛らしい物語ではあるとは思いました。

______________________________


______________________________


さて、このCDについてです。結論からいえば、先にも書きましたが、「とても良かった」の一言でしょう。演奏は素晴らしく、オーケストラをピリオド楽器で演奏し、そこへ研ぎ澄まされた歌手の歌が加わるのでした。


とても清潔で、透明な空気に満ちた演奏といえます。


録音も非常に鮮明、時代遅れの物語を極めて新鮮に、爽やかに再現しています。ピリオド楽器による、美しくも涼やかなフルート、柔らかいホルンの音色。牧歌的で、冷たい空気に包まれたスイスの村の雰囲気を鮮やかに描き出しています。


そして歌手陣も、冒頭のリーサ役のベルタニョーリから、清澄な澄んだ空気感いっぱいに歌いだし、合唱も快活です。主役のバルトリの歌声も、大変に美しいものがあります。


装飾的な効果を付け足しながら、バルトリは清潔な艶やかな歌声で、アミーノの恋心を歌います。時に伸びやかに、時に鈴の音が振るうように、妙技を駆使して歌う彼女の歌は、飴玉を舌で転がすようなコロラトゥーラとあいまって、極めてエレガント。この作品での彼女の印象は、まさにジャケットで彼女自身が持っている、白い百合の花のようで、爽やかに、におい立つかのようです。


うーん、物語のことなんか忘れてしまい、歌に聴き入ってしまいます。


テノールのフローレスも歌いだしが一瞬、女性かな?とも思えるような、やや中性的ともいえる音色で、伸びやかに歌っていきます。


第一幕、第七景の二人で歌う「Ah!!!Mio bene!(ああ!愛しい人!)」のデュエットなど美しいことこの上ないでしょう。


何だかこの演奏を聴いていると、単純な物語のせいで、登場人物が天使や妖精が歌っているような気になってきます。最近ではこんな演奏ができるんですね。


聴後はとても爽やかな気持ちに満たされます。本当に、清潔で、エレガントな、おとぎ話のような名演だといえましょう。