アーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」。訳は福田恒存。新潮文庫。
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アメリカ文学なんてほとんど知らない。僕も読んだのはせいぜいこのヘミングウェイの「老人と海」と、昨日ブログで書いた「ライ麦畑でつかまえて」ぐらい。アーネスト・ヘミングウェイ(1899-1961)もまた、サリンジャー同様、アメリカ合衆国の小説家。
内容は短編映画のような感じで、面白い。色んな物事が外面的になっていくのはアメリカの宿命かもしれないが、この小説もまたそんな感じが強く、人物の内面的な描写がほとんどなくて、外面的描写に終始している。だから読んでいると、映像的な印象を受け、リアルなイメージがわく。
端的で、サリンジャーのようにネチネチしてない。爽快で、誰にでも分かるような内容は素直に好感が持てる。しかし、ヨーロッパの文学の濃い内容のものを読んで、「文学とはかくあるべき」という何か難しいことを望んでいるなら、そういうものはここにはない。いうなれば、通俗性がある、ということぐらいだろう。
翻訳者の福田恒存はあとがきで、その辺りのことを詳しく述べている。やはり国の歴史が浅いと、民族性も薄くなるから、作家も基盤が出来にくい。文学が各個人の内面的な告白であると考えるなら、近代アメリカではそれが育つのに、時間がまだ足りなかったのだろう。
翻訳者はそれでもこの「老人と海」はヨーロッパ文学に比肩しうるものであることを述べている。キューバの年老いた漁師の力強い描写は確かに、ヨーロッパ人にはなかった発想かもしれない。心理的でも、センチメンタルでもなく、どこか肉体的で、乾いた描写は、アメリカ的なものを感じさせてくれるだろう。
