ロザリオのソナタ |  ヒマジンノ国

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長谷磨憲くんち


ハインリヒ・イグナツ・フランツ・ビーバー(1644-1704)による、ヴァイオリンのための16のソナタ集。ドイツ・グラモフォンの姉妹レーベル、アルヒーフから。演奏はムジカ・アンティクワ・ケルン。


新約聖書の物語から表題を戴いた、バロック期のヴァイオリンの名手、ビーバーのヴァイオリンによる技巧的名曲集です。ロザリオ(数珠)を手にして一曲ずつ、聖母マリアに祈りをささげるための音楽、とのこと。


確かに、これは一種の宗教音楽なのですが、世俗的な舞曲を多く含んでいて、多彩でもあり、静かですが、曲に入り込めれば、それほどしんねりむっつりしておらず、華やかでさえあります。


初めこの曲を聴いたときは、技巧的なパッセージばかり耳について退屈していましたが、この曲の本質が「祈り」である、と感じてから、すっかりこの曲の意味が分かるようになりました。技巧的な要素はあくまでおまけであって、ビーバー自身が演奏の楽しみを味わうためのものであったような気がします。しかしそこには穏やかな「祈り」が確かに介在していて、この曲を聴く意味を持たせてあります。この曲を聴き進めば進むほど、人は精神の安定を得るでしょう。


僕は、夜、寝つきが悪いとき、この曲をかけ流しにすることがあります。全て演奏すると2時間近くになる曲ですので、全部聴くということはありませんが、初めの2,3曲を聴くうちに知らず知らず、眠ってしまいます。


通奏低音を形作るため、伴奏にはチェロ、リュート、チェンバロ、あるいは、オルガンなどが加わります。それらは古楽器のアンティークで味の濃い音色をたたえながら、時にはまるでリアルな時代物のオルゴールのように響きます。そしてそこにこの曲は、柔らかい宗教的雰囲気を漂わせているのです。


個人的に好みなのは11番のソナタで、表題は「キリストの復活」となっています。アダージョで、時には平明で、時には華やかで、伸びやかに人間のやさしさを表現していきます。中間部で歌われる、ヴァイオリンによる歌が心に染み入ります。


最後の16曲目だけは無伴奏のパッサカリアになっていて、熾烈な祈りを描きながら、印象的にこの曲を結びます。


長い曲なので、全曲を聴き通すのは中々大変かもしれません。しかしそれでもなお、全曲を通せば、いじらしくも美しい感情にあなたが満たされること、うけあいです。