ブルックナー宗教曲集 |  ヒマジンノ国

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長谷磨憲くんち


オーストリアの作曲家アントン・ブルックナーによる晩年の宗教曲集。ここには彼が円熟期をむかえようとする40歳台以降の宗教音楽が集められています。CD4枚組。


メインになるのはミサ曲1,2,3番と、テ・デウム。その他モテットなど。グラモフォンによる録音で、1963年から1972年までのもの。演奏はオイゲン・ヨッフム。オーケストラはバイエルン放送交響楽団・合唱団、及びベルリン・フィルハーモニー管弦楽団等。

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交響曲の大家として知られるアントン・ブルックナーは敬虔なカトリック教徒であり、熱心なその賛美者でした。40歳台以降の人生を交響曲の作曲に費やした彼でしたが、それ以前は教会のオルガニストとして活躍し、宗教曲も作っていたようです。しかし、彼が40歳になり、自分の作曲の実力に自信を深めた後も、交響曲の作曲のかたわら、以前のように宗教音楽も作曲していました。


彼はパレストリーナ様式を学んだといわれていましたが、こうした純粋な宗教曲を聴く限り、ロマン派後期の作曲家として認知されていたこの作曲家の本質は、古くからのヨーロッパ人の原型を示しているようにみえるのです。

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さて、そのような彼の宗教曲の傑作は、間違いなく、第7シンフォニー作曲後に完成された「テ・デウム」でしょう。作者不明のこの神への賛美の詩は、「神であるあなたを我らはほめたたえます。・・・Te Deum laudamus」と始まり、それがこの詩の名前の由来となっています。


ブルックナーはこの曲を全体で5部に分け、熱烈な歓喜に満ちた、神への賛美歌としました。全体でも20分強のこの曲はブルックナーの宗教音楽の中でも唯一、彼の雄渾な交響曲に匹敵する内容を持っており、冒頭、曲が始まると、ブルックナーの威厳に満ちた輝かしい音楽が、放射状に鳴り響くのです。


その様子はまるで、イエスの背後にさす後光が、無限の彼方に放射されていくようで、壮観です。


そして、受難の描写がないこのテ・デウムは、通常のミサ曲よりもずっと輝かしく描かれており、聴き手はこの曲の持つ、圧倒的な栄光の喜びに浴することができます。


指揮者のオイゲン・ヨッフムは充分な感情移入をして、その興奮をしっかり味あわせてくれます。オーケストラの響きはやや粗いかもしれませんが、名演でしょう。興味のある人は是非一聴を。


その他、彼のミサ曲の中で一番有名なのは3番で、これはテ・デウムほどの雄渾な迫力はありませんが、随所に柔らかい祈りに満ちた部分がある名曲です。ここにはブルックナー特有の清潔で新鮮な官能美が、ミサ曲の持つ静かな祈りと結び合わさっていて美しいです。


ミサ曲2番は冒頭に8声によるア・カペラ部分が印象的な名曲です。余り演奏されませんが、ブルックナーの性格の一部を、このア・カペラ部分に、僕は垣間見ます。3曲あるうちのミサ曲の中で僕個人はこの曲が一番好きです。寂しさを底流にした、厳かなキリエの合唱は、無伴奏によることがより現実味を与え、この世のはかなさを訴えて余りないからです。


ミサ曲1番は現在交響曲1番と認識されている作品よりも前の曲で、彼が交響曲の作曲の準備が整ったことを証明する作品でもあります。ミサ曲3番などと比べると少し音の厚みが薄いですが、本質的な変わりはありません。充分に魅力的なミサ曲といっていいと思います。


最後は一応、「詩篇 第150篇」について触れておきます。


これは晩年に書かれた曲で、先の「テ・デウム」を思わせる輝かしい音楽です。9分余りの曲ですが、力強く、内容的です。結末部のハレルヤの合唱はブルックナーの人生の総括のように響くことでしょう。

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指揮者のヨッフムの演奏は感情的な表現が多く、分かりやすいです。ただちょっと合唱なんかは雑に聴こえますかね。まあ、しかしある程度感情移入をすると、音のテクスチャーが荒れるのは仕方ないかとも思えます。


<おまけ>


長谷磨憲くんち

ブルックナーの大家、チェリビダッケもテ・デウムとミサ曲3番は、EMIから録音が出ています。こちらは音の処理が徹底していて、曲が雑になることなく、美しい再現がされています。その代わりといっては何ですが、感情表現が薄く、テンポが遅いので、個人的には、ミサ曲3番などは聴いていてかなり疲れます。


テンポが遅くなることにより、より感動的になる部分もありますが、全体としてまとまった感動を得ようとすると、やや空中分解気味で、曲の印象を自分でつなぎ合わさねばなりません。


テ・デウムも基本的に同じことがいえますが、こちらはスケールが大きくなっても、それほど問題のない曲なので、この演奏はありでしょう。演奏時間は30分ほどになっていますが、名演だと思いました。