ジョバンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ(1525?-1594)による声楽集。ブリリアント・クラシックス、CD5枚組。演奏はプロ・カンティオーネ・アンティクワ、その他。
これは、16世紀ローマの宗教音楽の大家、パレストリーナの音楽です。ア・カペラによる心のこもった宗教音楽がメインの曲集になっており、複数の声部を使った対位法の大家による、透明なポリフォニーの世界が心行くまで堪能できます。
そこには優しさと、純粋さ、真摯さが同居していて、特に宗教音楽は素晴らしいものがあります。透明な人の声の魅力を知りたい人は是非とも、この時代の音楽を聴いてみるべきです。
パレストリーナの生きていた時代は、さかのぼって、バロック期を超えて、ルネサンス期に分類されます。この時代の音楽にはア・カペラによる純粋無垢な宗教音楽が多く、透明度抜群の神秘の人声による音響世界が展開されるのです。
バロック期の宗教音楽も悪くありませんが、このルネサンス期の音楽と比べると随分楽観的に聴こえてしまいます。
・・・当然、これは大まかな比較で、バロック期の宗教音楽が全てそうだとはいいませんが・・・。少なくとも僕にはバロック期においても、バッハ、ヘンデル、ガブリエリ、モンテヴェルディ・・・なんかは文句はいいずらいものです・・・。
この四人だけではなく、その他にも色々ですが、ルネサンス期の音楽の真摯さを知ってもらいたいと思い、今回はわざとこう書かせていただきます。
パレストリーナで有名な曲は「教皇マルチェスのミサ」でしょうか、このアルバムにも収められています。ただ個人的には、あまりどの曲がこう、といって聴くよりも、何でもよいから気になった曲を聴いてみたらよいと思います。どの曲も美しいですから。
音楽をかけた瞬間から、我々は400年以上前の悠久の世界にいざなわれるのです。
僕はこういう音楽を本当に精神的に辛いとき、良く聴きます。不思議なもので、こうした音楽はその精神的な辛さを、自分の実感では2,3割程度ではありますが、取り除いてくれます。オケゲムやビクトリアのレクイエムなど、とても効果があります。
日本でいえば「お経」を唱えるようなものでしょうか。興味のある人は聴いてみてください。
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まだ人々が大地と共に生き、草原の香りを嗅ぎ、谷川を慕っていた時代・・・その時代、彼らがネウマ譜に記した祈りと信仰心は心からのもの。
教会内にこだまする無伴奏の透明なポリフォニーの世界こそ、聖堂に差し込んでくるステンドグラスの、柔らかい光のように清潔で純真な心。
そして、その祈りの世界の果てに広がるのは、はるかなヨーロッパ中世の草原とふるさとの悠久の大地。
そして僕はそうした音楽の美しさに、心から、頭を垂れたいと思います。
