夜と霧 |  ヒマジンノ国

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長谷磨憲くんち


V.E.フランクル、「夜と霧」。霜山徳爾訳、みすず書房。

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ダンテの地獄編で描かれる地獄の修羅の惨状・・・。

苦しみ、腐敗、憎悪、汚物、残酷、そして突き詰められた非人間性・・・。


「地獄」。それは想像の産物のような気がする・・・。しかし、ナチスはそれを現実の世界に移し変える事に成功した・・・。本人達にその気はなかったのだろうが・・・。


人類の歴史は時に人間の醜さを露呈させ、発見させてきた。

第二次世界大戦中、ナチスがゲットーと呼ばれるユダヤ人拘留施設で見せた前代未聞の大量虐殺は、人間というものが時に非常に高貴になれると共に、信じられないほど恐ろしい存在になれるということを示すこととなった恐るべき例である。


人類の歴史には虐殺は付き物だったかもしれないが、アウシュビッツやダッハウ等のゲットーで、こうも合理的に進められた殺人は歴史上、類を見ない。

ここには形式化された残虐性がある。


そこには一切の人間らしさを排除した形式であり、信じられないほどの意地悪と慢心とがここにはある。

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この邦題「夜と霧」で描かれるのは、そのユダヤ人ゲットーに捕えられたが、奇跡的に生き延びたフランクル氏の悲惨極まるゲットーでの体験記である。


精神分析医である氏は1997年に亡くなったが、彼は第二次世界大戦中、妻と子をナチスに殺され、本人はアウシュビッツでガスかまどに送られそうになりながらも、かろうじて生き残った。


・・・読めば読むほど不思議に思う。人が人にこんな事がどうしてできるのかと・・・。


目の前にいる人がまるでぼろぼろの亡者のようになっているのにもかかわらず、ほとんど与えられない食料、汚物で汚れたベット、腐っていく四肢・・・。


「可愛そう」という感情はないのだろうか・・・と思う。


全てはユダヤ人だと言う理由からだが、ナチスはこの強制収容所で600万人近いユダヤ人を殺したと言う。第二次世界大戦でのドイツ人や日本人の戦死者がそれぞれおよそ300万人と言われているから、これは膨大な数である。


ヒトラーの考えを完全に実行し、そしてそれが至上命題だったのかもしれないが、そこにどんな正義があったとしても、これを読めばとても笑っていられない。


この本を読むと、正義と言う偽善の裏にある激しい憎悪を感じずにはいられないだろうし、人間の本質と生き方について、深く考えさせられるに違いないだろう。