「グスタフ・マーラー」。アルマ・マーラー著、石井 宏訳。
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マーラーのプライベートを知る人物が、彼との死別後記した手記。
マーラーのことを知りたいと思うなら、この本を読むことを僕は薦めたい。
当時の空気がじかに伝わってくる気がし、妙な評伝でマーラーのことを知るより面白い。
実際、マーラーとの出会いから彼と結婚し死別するまでが、映像的で鮮明な描写で読める。
文章も簡潔で才媛アルマ・マーラーのまさに証明だと思った。
気難しいマーラーを愛そうと努力し、苦悩するアルマ。
何処でも自分の理想を通そうとし、人々と衝突するマーラーを支えるのは大変だったに違いない。
読んでいるとアルマの心細さが伝わってくる。
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その他にも、19世紀末から20世紀初めにかけての有名な作曲家達が出てくるのも、興味が湧くのではないだろうか。
天真爛漫なブルックナー、マーラーのライヴァルであったR.シュトラウス、指揮者でマーラーの友人のメンゲルベルグ、そして弟子に近い関係であったシェーンベルグなどが目の前にまだ生きているかのように思えた。
マーラーとの結婚は幸福だったとは言い難かったようだ。
彼女自身大変な才能の持ち主で、マーラーとその妻アルマはお互いの才能に嫉妬していたとも聞いたことがある。
こうした手記を読むと僕自身はマーラー自身がそれほど人間として立派だったかはやや疑問に感じてしまう。
どうしても大人になりきれないマーラーの人物像が本の中から垣間見れる。
人間的弱さは魅力的ではある。
例えば、人々がベートーヴェンやブラームスの音楽を好む場合、彼らの人間としての強さ、つまり自分を信じきれる強さ、が愛好家の心の支えになっている場合が珍しくない。
しかし、マーラーはその点を欠いているのだ。
とはいえ、多忙な指揮の合間をぬって書かれた10曲もの巨大な交響曲は、人々を圧倒するには十分なのものがある。
結局、彼が作曲家として偉大だったというのは事実なのだろう。
その点に関しては僕も多くの人と同意見だ。
