ジャン・クリストフ |  ヒマジンノ国

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長谷磨憲のブログ-クリストフ


ロマン・ロランは理想主義者で、必ずしも現実的な事柄だけに発想を縛られない、自由な考えの持ち主だった。


彼の尊敬するトルストイが、緻密な調査を経てリアルな文学世界を組み上げていったのに対し、ロランの描く文学は人類の理想と人間の弱さを描くことに終始している。


はたして世の中には、理想主義者をあまり評価しない者もいる。

ドフトエフスキーに高い評価を与えていた作家の加賀乙彦も、ある本のなかでロランに対してやや否定的な発言をしており、僕はとても残念だと思ったのを憶えている。


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そんなロランがベートーヴェンに人類の理想の一端をみていたのは、当然の成り行きだったのだろう。確かに彼はベートーヴェンの研究者としても有名だった。


そして、ロランが書いた小説を推薦するなら、そのベートーヴェンをモデルにして書いたこのジャン・クリストフが妥当だろう。


ロランが尊敬するベートーヴェンをモデルにして描いたこのジャン・クリストフは面白く、ロマン・ロランのよさを満喫できる。

長編の大河小説だが、退屈などしないのではないだろうか。


内容は作曲家ジャン・クリストフの生涯を追ったもので、この文庫本では二千ページを超える。


クリストフの幼年時代の生い立ちはまさにベートーヴェンその人を思わせ、成長し孤独と理想、現実の狭間で葛藤する主人公の姿は人々を感動させるには充分なものがある。


オリヴィエとアントアネットのジャンナン兄弟の悲しみに満ちた関係は、自己犠牲と良心にあふれたもので、本当に切なくはかない。

その中でも、アンアネットの自己犠牲的な生き方が僕にはとても感動的にみえた。


これは全編を通じて感動的な大河小説だと思う。そして、このアントアネットの存在こそ、この小説にでてくる人々、ひいていえばロラン本人の人生観を要約しているように僕には思えて仕方がなかった。