一体、何が起こったのか、判らなかった。
福は、死んだ。
何で？
原因は嘔吐しかない。
何で嘔吐で死んだの？
何で嘔吐したの？
わからないわからないわからない。
でも、今から蘇生は、無理だ。
夜中の2時に病院は開いてない。
開いてるとしても、10分近くかかる。間に合わない。
救急病院はさらに遠い。20分くらいかかる。
むり、だ、もう。
もう、福は、帰ってこない。
※※※※※※※※※
死んでしまった以上、福には旅支度をさせないといけない。
動物病院からもらってた、安置用の箱を組み立てた。
（快斗のもしもの為にもらっていたものだ）
福愛用のピンクの毛布を畳んでいれたら
大きかったので、薄い敷き物にして、
その上にペットシーツを敷いた。
ペットシーツの下に、大きめの保冷剤を差し入れて、
まだ温かい、やわらかい福を横たえた。
頭の下にも、保冷剤を入れて。
時間が経つと体液が出て来てしまうから
口と、鼻と、お尻に栓をするんだけど
鼻とお尻は動物病院でしてもらうことにして
口に脱脂綿を詰めようとした。
福の口は、もう、開かなかった。
支度を始めるまでに時間がかかったせいだ。
箱に納まった福は、いつもと変わらず可愛かった。
・・・可愛すぎないか。
あれ？
いや待ておかしい。福が可愛い。
相方さんも同意見で、今までの子と違うね、
なんだろうなんだろう、て2人で考えて
どうやら、頭の下に入れた保冷剤が原因だと判った。
今まで見送った子達は、寝てるみたいと言いながらも
首がちょっとのけぞってるとか、落ちてるとか
微妙に、その子がしない姿勢になってたのね。
胴体の下に、大きい保冷剤を敷いていたから
胴が浮き上がった分、頭が落ちるのだ。
でも、福は、良い感じのマクラ（保冷剤）のお蔭で
いつも横向きにちょっと丸まって寝ている時の姿勢、
それと全く同じに見えた。
うわあ、寝かせ方大事！可愛い。可愛いよう。
この後、病院で処置をしてもらったり、
保冷剤を取り換えたりするたびに、
福の頭の向きをチェックして、保冷剤の位置を調整した。
福は、本当に寝てるみたいだった。
「寝床の横に箱を置いてたら、こっちで寝ちゃった」
て言っても通りそうなくらいの、いつもの寝顔だった。
可愛い、可愛い福。
大人になっても、歳を取っても、寝たきりになっても、
最期まで、死ぬまで、死んでからも、福は可愛かった。