3月3日日曜日、福が死んだ日の朝。
診察開始時刻より少し早く、病院に行った。
福は相方さんと外で待たせた。
ペットの死骸を待合室に持ち込むのは、
衛生面でも心情面でもためらわれた。
受付で事情を話して、処置をお願いして、
出て来た看護士さんに福は連れられて行った。
診察室に呼ばれた時には
福の処置は終わっていて、綺麗にしてもらっていた。
「福に何があったんですか」
直接の原因が嘔吐なのは間違いない。
獣医師によると、
嘔吐で死ぬ原因は大きく2種類。
吐瀉物による窒息と、心不全だそうだ。
窒息の場合、死までの数分間、もがき苦しむ。
心臓が止まった場合は、数秒。
福がもがいたのは、1、2秒だった。
「じゃあ心臓でしょうね」
それなら、抱っこしたあの時、福は、もう。
猫が、嘔吐で心臓が止まることは稀だ。
よほど衰弱している時とか、たまたま止まることがある。
止まっても、すぐまた動き出すこともある。
福は、それくらい弱っていて
ギリギリのところで命を保っていたのが
たまたま、嘔吐して、
たまたま、心臓が止まって、
たまたま、戻って来られなかった。
そういうこと、だ。
嘔吐した大量のゴハン。
食べるのを嫌がっていたこと。
おそらく、ゴハンが腸に流れずに
胃に溜まったままになって
気持ち悪くなって吐いたんだろう、と言われた。
ゴハンが溜まって、気持ち悪くて？
だからあんなに嫌がったのか。
嫌がる福に・・・私はムリヤリ食べさせてしまった。
だから、
「10ccやったくらいでは吐きません」
その前の分が、もう胃に溜まっていたんでしょう。
10ccやっていなくても結局吐いたと思います。
10ccやっていなければ、吐いた時刻が、
午前3時だったのが5時になったかも知れませんけど
5時でも診察は始まっていないし、
仮に診察時間内でも、連れてきたところで手遅れです。
蘇生は心停止から数分以内に処置する必要があります。
そんな話を聞いて、
それでも、福にムリヤリ食べさせてしまった時のことが
頭から離れなかった。