色々してたら日付が変わって、3月3日、日曜日。
午前2時は回っていたと思う。
ようやく寝る前の歯磨きをしながら、考えていた。
また今日の点滴をしてないんだよね。
水分の多いペースト状ゴハンの給餌は
水分補給でもある。
ゴハンを食べてないなら、余計に点滴しないと。
先にお風呂に入ってから、点滴するか、
今から点滴して、お風呂に入るか、
お風呂遅くなっちゃうなあ。でも先に点滴しとくか。
そんなことを考えながら部屋に戻ると
福が、変な顔でこっちを見ていた。
よく思い出せないんだけど、とにかく見たことのない顔。
私を呼んでるのは、判ったので
「どした、福？」
慌てて傍によったら、
嘔吐が始まった。
猫の嘔吐は、吐く前に、
『今から吐くよ！』ガポッ
『今から吐くよ！』ガポッ
と音がして、それから本番（嘔吐）。
体が動かない子が嘔吐すると、
吐いたモノがノドに詰まって、窒息死の危険がある。
なので、吐く前に慌てて抱き上げて
うつ伏せに、体を極力まっすぐに、
頭は下に傾く姿勢を取らせた。
これで、吐いたモノは、そのまま下に落ちていくハズ。
福は、茶色い液体を、頑張って吐いた。
消化されていないゴハンだ。
終わったと思ったら、
福はまたガポッ、ガポッ、を始めて、
1回目よりも大量の、茶色い液体を、吐いた。
そして、1、2秒、手足をバタバタ、と動かした。
慌てて抱き上げて、縦抱っこして
「大丈夫、大丈夫」と、背中を軽くトントンしながら、
福が落ち着くのを待った。
福が落ち着いたら吐いたモノを片付けて、
吐いたなら、尚更点滴しないといけないけど
しばらく時間を空けた方が良さそうだ。
そんなことを考えながら、
福の様子をうかがった。もう落ち着いたことだろう。
福は、反応しなかった。
目を閉じて、くったりと完全に力が抜けていて
呼びかけても、起きなかった。
うそやろ。
名前を呼んで、何回も呼んで、体を揺すって、
ベッドに下ろして顔を叩いた。初めて福を叩いた。
気絶しているだけなら、戻ってきてくれると思ったのだ。
福は、目を覚まさなかった。
うそや。
そして、床に寝かせて、呼吸と、
心臓の鼓動を、
胸は、動いていなかった。
いつもトクトクと私よりもずっと速い鼓動も、
聞こえなかった。
福は、死んでいた。