数週間前に、電話で、ピアノレッスンについての問い合わせがあった。「友人の為にレッスンについて知りたい」と言う。私の本職に関しては「友達のことで相談したい」と言う人は珍しくなかったのだけど、ピアノレッスンについて、友人の為にと電話が掛かってきたのは初めてだった。私の本職での経験では、当事者と話をしないと、結局「本人に相談してみます」と、こちらの時間の無駄使いをさせられることが多いので「私は、当事者ご本人さんとしか話は進めません」と言っている。ピアノレッスンでも、似たような状況になる気がしたので「なぜ、本人が問い合わせないのか」と聞くと、電話を本人に渡してくれた。
すると、この方、相当のお年のようで、電話越しでは、こちらの言っていることが、よく伝わらない。お耳が遠いとなると、ピアノを教えるにししょうが出るだろうし、前にピアノを習っていたこともあるというのだけど、どの程度の教材まで進んでいたのか、聞こうとしても「チェルニーをやっていた」と言うだけで、どのチェルニーなのかも分からないし、他に弾いたことのある曲を聞いても、こちらの言っていることすら伝わらない。
兎に角、一度相談という形で会うことにして、アポイントメントを取った。そして、当日現れたのは、歩くのもままらないおばあさんで、頭に何か器具のようなものを付けている。脳梗塞とか、そういった病気で脳の機能が十分でないのだろう。言葉を上手くしゃべれないし、手の指を上手く動かすことも出来ない。しかし、譜読みはきちんと習ってきたようで、楽譜を見ながら、正しい鍵盤を押さえる知識は、ちゃんとあった。心配していた会話も、対面では、どうにか意思疎通が出来たでの、レッスンをすることになった。
さて、実際のレッスンでは、何かを教えるというよりは、五線譜からはみ出した音符が読めないので、その音名(ドレミ)を教えたり、音符を読み間違えて、違う鍵盤を弾いた時に訂正したり、と言う程度の物ものだった。それでも、私が5言うと、聞いている、理解できるのは2位で、私も、その方が、ピアノを弾いている(弾こうとしている)のを、見ているだけみたいな感じだった。
そんな人のレッスンの最中のことだった「このピアノの音は大きくなりませんか?これだと聞こえなくて」と言われた。
確かに、その方は指の力もないので、ピアノの音は弱めだし、聞こえの良くない耳だと聞き取れないレベルの音しか出せていないのかもしれない。でも、私がレッスンで使っている(生徒に使わせている)のは、カワイのグランドピアノ。アコースティックのピアノの音量の調節をしたいという人には、初めてあった。それにしても、この方は、ずっと電子ピアノや、キーボードしか使ったことがなかったのだろうか。アコースティックピアノには、音量を調整する機能がないことは知らないのだろうか。



