山本会 別会 その3 | 能楽師 辰巳満次郎様 ファンブログ

能楽師 辰巳満次郎様 ファンブログ

こちらは、不休で普及に励む宝生流グレート能楽師の辰巳満次郎先生♥に「惚れてまったやないかぁ~!」なファン達が、辰巳満次郎先生♥と能楽の魅力をお伝えしたいな~、と休み休み、熱い思いをぶつけるブログです。

一週間のご無沙汰です。山本会別会の続きです。

 

三兄弟による「樋桶」。文句なしにGood!です。堪能しました!
自分の留守に太郎冠者が下戸の次郎冠者を無理矢理に引き込んで酒を盗み飲んでる、と思い込んだ主人は、下戸の次郎冠者を酒蔵に、酒飲みの太郎冠者を小物蔵に閉じ込めて外出します。
しかし、実は次郎冠者は下戸どころか酒好き! 幸い太郎冠者と次郎冠者の閉じ込められた蔵は隣同士。太郎冠者のいた蔵にあった「樋」を窓越しに渡してそこに酒を流してもらい、宴会が始まります…。
宴会の最中に、盛り上がって二人で順番に舞うのですが、太郎冠者が舞ったのは「七つ子」というもの。
まだいとけない子が「殿が欲し」と言うた、という歌詞で、地唄舞では「おちや乳人」という上品で洒落た曲になってるんですが、出自は狂言だったんですね~。

 

 

 

 

さらに続いて「那須」語。5月5日に野村萬師による同曲を鑑賞したばかりだったので、やっぱり流儀が違うと微妙に違うもんだな~、と思いました。
ずっと動かずに語るのではなく、身振り手振り豊かに義経になったり那須与一になったりして語りが進行しますが、なんといっても動きが大きいです。義経の時は舞台中央に居て正面を向いているものが、義経の御前に出る那須与一になると、なんと、膝詰めでダダダダっと、目付け柱まで移動して正面に向かってお辞儀をします。それで義経に戻るとまた膝詰めでダダダダっと中央まで移動します。
野村萬師(和泉流と言っていいのか)の場合は、そこまでの距離は移動していませんでしたし、役の使い分けの演技?があったように思います。コウイウ型ナンデスカネ~。
山本則重師ですが、熱演だけど肩の力は抜けていて、でも若々しい感じがすごく好感持てました。

 

 

 

 

 

 

そして、今日のもうひとつの目玉の「獅子聟」。ワタシは一番コレが観たかったんです~。

 

 

 

 

この曲は、初生山本東次郎則正が藤堂家にのみ伝わる曲を特別に一代限として相伝されたものだそうです。それを四世山本東次郎が復曲し、許しを得て山本家の曲となったそうです。
しかし、今年になってからTVで野村萬斎が獅子舞するの見たゾ???と思って調べてみたら、それは「越後聟」という曲で獅子舞の部分だけが残ってるらしいですね~。

 

 

ということで、「獅子聟」ですが…、
吉日に聟入の儀式をするために家人(又六)を連れて舅のところに向かう聟。待ち受けていた舅と盃を酌み交わします。人の良い舅は連れてきた家人の又六も同席させて酒を振舞います。
そして一通り盃事が終わると、舅は我が家のしきたりなので、ぜひ獅子舞を舞って欲しいと聟殿に要求します。
聟殿は支度をするといって中座(中入り)し、後に残った家人の又六に舅は、獅子はわが子を千尋の谷に突き落として試練を与えるという、この舞でそれを乗り越えて初めて家族になるのだと言い、めでたいので又六にも舞を所望します。
又六が舞い終える頃に揚幕(既に半幕で姿を見せている)を見込んで「支度ができましたぞ」とふれて、聟の颯爽たる獅子舞が始まります。
それを暖かく見つめる舅。だんだんにノッてきて体が動き始めます。そして最後には聟と舅が一緒に舞って無事舞い納める、というストーリー。

 

 

この日のシテ(披キ)の山本則秀師は、舅をなさった山本東次郎師と組んだ「二人袴」の親子が非常に良かったのでそれ以来のファンなんですが、この「獅子聟」がまた素晴らしかったです。

 

 

このシテは獅子といっても、お能の「望月」の格好になります。なので二枚扇に赤い毛がついた獅子頭をかぶり(宝生流では扇は一枚でした!)下は婿入りの衣裳のまま(つまり長袴のまま!)に唐織を羽織り(登場時は頭から被り)ます。
半幕で姿を見せてから一度引っ込み、今度はバっと幕を上げて走り出てきて、上座で舞台に伏せ、起き上がる時に被った唐織を一瞬で(なんだか蝉が殻を脱ぐみたいに)肩から羽織って構えます。

 

 

そこから獅子の曲なんですが、なんと長袴のまま跳び廻り平臥するんです! それもかなり跳ぶ!
足元は長袴ですよ!滑るんですよ!度肝を抜かれました。スゴイです。若干バランスが崩れたところもありましたが、よっぽどお稽古を積んでるんだと思います。最後まで跳ぶ高さも変わりません!

 

 

そしてなんと、この獅子には「髪洗い」の型もあるんですね。そして舅もつられて体が動き出し、居所で獅子を舞い始め寄っていった聟を蹴る(谷に落とす)型があります。
とにかく、長袴で舞うというだけでも大変なのに、それが獅子という…。

 

 

おおいに感動しまくって帰途についたのでした。
イヤ~、ええもん、観させていただきました。