金沢でもお能を鑑賞したの♪ | 能楽師 辰巳満次郎様 ファンブログ

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強行軍の第ニ日めは金沢でお能を鑑賞でゴザイマス。
昔から一度金沢でお能を観てみたかったんだけどなかなかチャンスがなく、やっと実現できて感無量です。

 

金沢自体は何度か、それも寒い彡(-_-;)彡時期にばかり訪れてます。初回はセンチメンタルジャーニーで…。しかしこれがちっともセンチメンタルになれなかったトンデモ旅で、それはまたいつか…。

 

 

さて、加賀宝生の雰囲気を満喫せんと乗り込んだ能楽堂で、できれば正面の良い席を取りたくて、まずは受付へ。
察するに受付はお当番の社中の方々がボランティアでなさっているようです。
皆さんとても親切なんですが、なんか会話がチグハグで、どうも観光客がふらっとお能を覗きに来たと思ったらしく、お安い方のチケットしか出してくれないの…。でも最後は「遠くから来なさったみたいだから」と一番安いチケットの価格で正面席のチケットを出してくれました。どうもありがとう♪
正面の良い席を早く確保したくて焦ってたので、ついやりとりの口調がキツくなってしまって、ゴメンナサイ。

 

 

さあ、席さえ確保できれば、後は駅で買った美味しいお弁当(写真忘れた!)をバクバク食べるだけ。食後は雪の庭で寒そうな杜若像を記念撮影し、観光客丸出しではしゃぐ♀ふたり…。

 

 

イメージ 1

 

 

さて、金沢12月定例能は定時に、佐野社中による素謡「絵馬」から始まりました。
 ココ→金沢能楽会「十二月定例能」
素人の素謡があるので、見所の雰囲気もなんとなく普通の発表会っぽい空気が漂っていて、何だか不思議な感じ。わざわざお能を鑑賞に来ました~、って気張った空気ではなく、普段の生活の延長線上にあるみたいなごく自然な空気とでもいうのか、これが空から謡が降ってくるという土地柄の醸す空気なのかなぁ、とも思いました。

 

 

この能楽堂はもちろん写真どおりではありますが、見所の座席も良い椅子で座りやすく、橋掛リの角度など、ちょっと国立能楽堂っぽい感じです。

 

 

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まずはお目当ての「巻絹」から。この曲はお稽古&発表会の素謡をしているし、何度も拝見している好きなお能のひとつで、だからこの日のシテを見逃したくなかったのが、金沢遠征の一番の理由です。
ツレはいわゆる職分の方ではないのかしら。「巻絹」のツレも割とオイシイ役だとワタシは思うの(素謡だとワキが損な役回り)ですが、なかなか良い声の方だと思いました。
都の男は、勅命により巻絹を奉納すべく熊野権現に向う途中、音無天神に参詣し和歌をむけるが期日に遅れた罪で縛られてしまう。天神の乗り移った巫女は和歌の徳を賞し、都の男を助け、神がかりの態で神楽を舞う。
五/略脇/四番目物、季節:冬
  ☆社団法人能楽協会HPの曲目データベースより引用☆
ツレが遅刻した罰で捕縛される(狂言方が「捕ったぞ」とか「がっきめ」とか言う)と、その間に幕が上がって、シテの呼び掛けになります。
ここの能楽堂は橋掛リにかなり角度がついているので、正面席から幕の中のシテが佇む姿が見えます。水道橋ではゼッタイに望めないお宝?ショット♪ 香里能楽堂も橋掛リの角度はほぼ見所と平行なので、こういうショットは望めません。
いや~、これだけでも来た甲斐がありました~。
シテは紫(濃い小豆色?)の長絹に緋大口に烏帽子の巫女スタイル。
既に神懸かっていて「遅れたのは神に一首の歌を手向けた為、神はそれ納受した」と謡いながら静々と橋掛リを進みます。なおも疑うワキに「猶も神慮を疑うか」と、ツレの男に上の句を謡わせ巫女が下の句を続けて、疑いを晴らしツレの男を解放します。

 

 

なんでも観世では縄を解かれたツレがずっと舞台に残っているそうですが、宝生はさっさと切戸口から退場します。ワタシ的には宝生の演出の方がシテに集中できて良いと思うんだけれど、身びいきかしら?

 

 

このシテも声が良く、前にも書いたけどリリコ・スピントという感じの比較的力強い美声で謡も(舞いも!)良く、ホント、惚れ惚れします。
ツレが退場してからは、シテの独壇場。クリからキリまで謡も聴き所満載、神楽もノリノリでホントに見所いっぱいで厭きる事のないお能ですが、今回に限り強行軍の疲れがときどき襲ってきて、瞬間何度かトリップしてしまいました。あ~、モッタイナイ。

 

 

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途中、仕舞が入るのも「別会能」や「七宝会」みたいで嬉しい♪
「車僧」ってお能は観たことがあっても仕舞は初めて、またこのシテの方がどんな謡でどんな舞をなさるのか、すごく拝見したかったので実現できて嬉しいです。
一言で言えば、素朴で力強い。天狗物だから余計にそういう印象を強く受けましたが、この方の三番目物もちゃんと拝見したいなぁ。
(HPに掲載されている仕舞のビデオじゃあ、わかりませんよ~)

 

 

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「竹雪」も東京で見逃しているので、観られてラッキーぐらいのノリだったんですが、これが予想を裏切って実に良かったです。
恋しさの余り実母を訪ねていった月若を、継母は呼び返し、雪の降る中に竹の雪を払えと命じたので、月若は寒さに死んでしまう。母と姉が駆付け、死骸を見つけた処に父も戻り、悲しむ中に奇跡が起きて月若は生き返る。
四番目物、季節:冬
  ☆社団法人能楽協会HPの曲目データベースより引用☆
子方は小学校高学年~中学1年ぐらいか、声は子供の高い声でも謡はきちっとしていて大人顔負けです。
父(越後の住人、直井左衛門何某)はワキが務めますが、見知った顔なので妙に安心感…。なんか手を振りたくなっちゃう気持ち。
後妻は狂言方が務めるのですが、まあこれが憎々しいことこの上もなく(つまりウマい)、なんでこんなのを後妻にしたんかなぁ~左衛門何某、経済的理由から?などと勘ぐれるぐらいな、見事な憎まれ役!
このお能のシテは前妻の月若の母なんだけれど、この後妻と比べて何ともやさしいお母さん。

 

 

さて、雪折れしないように竹の雪を払えと言われただけならまだしも、着物を脱がしちゃうんだよね~、この後妻は。そして寒さに耐え切れず月若は倒れて死んでしまうのです。倒れて死んだ上に雪が積もって月若を隠すんだけど、それを白い打掛で横になった子方をすっぽり覆って表現します。
その後、母(シテ)と姉(ツレ)が、白の水衣に雪の積もった笠をかぶり、雪掻き(よく野球部の子がグランドを成らすのに使ってるやつ)を持って登場。
ここの能楽堂は全体的に木の色が濃くちょっと古びた感じが趣きがあってステキなんですが、そこにシテとツレの白い装束が映えて、本当にキレイ。
舞台に入って雪掻きで掃く所作で、雪に埋もれた月若を探します。
ここらへんから、地謡も良いしお話が可哀想で、つい引き込まれてホントに泣けてきます。
何某も戻り、父母は月若の死をただただ嘆くばかり。姉は「継母を責めることはできないけれど、あまりにむごい仕打ちではないか」と美しい謡で父をなじります。(ここでもう涙、涙)
以前、水道橋でこの「竹雪」が出た時はもうもうやさしいお姉さんだったと観た人から聞きましたが、今回はどっちかというとキレイなお姉さん♪

 

 

で、ここで奇跡が起こり月若は生き返ります!
生き返る前には後見がそろそろと白い打掛を引いて子方の姿を見せるのですが、たいていの子方はここで寝ちゃってて、シテ&ツレにそっと起こされてボ~っとしながら起き上がるのがリアルっぽくて良いらしいんですが、今回の子方クンは頑張って起きていたので、バネで飛び上がるみたいにピョコっと飛び起きちゃったので、ちょっと笑ってしまいました。でも頑張ってたね~♪

 

 

ただひとつ残念だったのは、子方の身内の方と思しきご婦人がフラッシュをたいて写真を撮っていたことです。多分プロ志望だと思われる(実際プロと一緒に舞台を務めている)子方に対しても、学芸会のノリで舞台の写真を撮るのは失礼ではありませんか!

 

 

という初見の「竹雪」でしたが、堪能いたしました。
金沢まで足を運んで良かったな~、と♀ふたり、能楽堂を後にしたのでした。

 

 

さらに「来年は☆月にまた来たいね~♪」と鬼をゲラゲラ笑わせる金沢観能計画を練り始めたのであります。