話は飛びますが、5月某日、ダンスオブシヴァ、というイベントでのこと。
山奥で泊まりがけのイベントです。
ミュージシャンは一応キャビンもあてがわれて、私はアウトドアの準備もないのでキャビンを希望したのですが、同室に何十代も続くインドタブラの家元の息子だというタブラプレイヤー、アリフ・カーン氏がおりました。
彼は今回のシヴァのメインゲストの一人で、まぁそのタブラの音には神を見る、いや聞く思いがするというか、千年単位で継承されてきたものに宿る何かを確かに感じたのでした。
しかし、私は疲労もあってか、いつもにも増してすさまじく壊れた英語しかしゃべれず、結局彼とは、旅をした先で苦しんだ様々な虫の話とか、そういうくだらん話ばっかりしておったのです。
その彼、キャビンにマイシーシャをキープするほどのシーシャ好きで、
朝起きたら一服。
演奏終わった夜に一服。
という具合。
「よかったらあんたも一服どう?」という感じで、時を選ばずシーシャパーティー開催です。
「シーシャはインドでもポピュラーなの?」と聞くと、
「シーシャは世界中でポピュラーだよ。」
と、なにいってんのそんなの常識じゃん、みたいなそっけないお返事。
「ふーん、中東付近ならよく見るけどねー」
と答えたところ、
「そうそう、俺、シーシャが吸いたくて、カイロまでいったんだよー」
とカーン氏。へっ!?私のヒアリングのし間違い?と思いましたが、
「れありー!?」とか適当につないでみると、それはこんな話。
「そしたらさー、あいつらのシーシャ、たて方が雑すぎるんだよなー。まずいっつうの。だからさ、カフェで、『こうやるんだよ!』って、見せてやったんだよ。そしたら、あいつらも美味い、って感心しちゃってさ。金払えって感じ。カイロまで行ったのにさー。でも友人のコネをつかってナイルクルーズで一発ギグさせてもらえる事になってさ。タブラたたいてきたよー。」
「ナイルクルーズで、エジプシャンタブラでなく、インドタブラを!?」
「そうそう(笑)」
ということで(以上わたしの壊れた英語脳によるヒアリングなので、多少のフィクションが含まれる可能性があります)、シーシャのために本当にカイロまで行ったという事がわかったのだが、
そこで。
「しっかし、カイロの交通事情はヘルだねー!」
「え、インドも相当なもんだって聞くけど、インドよりひどい?」
「インドなんて目じゃないよ。何だあれ。俺はぜったいあそこで運転する気にはならないね。ワーストワンオブザワールド。」
と、インド人の彼のお墨付きが出る、そのカイロの車事情。
車を運転している人にとってもかなりの恐怖が色々あるらしく、
とにかくクラクションを鳴らしまくるのは、ほんとうにふら~っと歩行者が止まらないで出てくるとか、車がウインカーも出さないで曲がったりとか(そういえば、ウインカー出して曲がる車、あんまり見た事ない。あ、珍しく点滅している、と思ったら、ずっとつきっ放しで消すのを忘れてる、というのなら見た事ある・笑)するので、クラクションで「話しかける」のは「必須」らしい。
こちらに在住10年以上、という方も、最初はなんでこんなにうるさいんだろうなー、なんであんなにならしまくるんだろうなー、と思っていたが、一度その「ふら~っと」歩行者を殺しそびれて以来、エジプトマナーによるクラクションを導入したという事であります。
さて、その車ですが、歩行者にとってはなにが困るって、
横断歩道というものがないのですよ。従って、信号もほとんどない。
四車線あっても、十車線あっても、基本は走る車をよけたりとめたりしながら、モーゼが海を割るごとく自力でわたらねばなりません。
大きな道路の向こうの、あの、あそこのスーパーに行きたいのよ…
という場合、その道路がほんとーに天の川くらいの絶望的な勢いで見えます。
というのも、カイロの道路の作り方は、できる限り車が停車しないでいいように、循環型で組み立てられているとの事で、走り続けて目的地まで行けるようになっとるそうです。ほんとかいな。観察していると、道路が交差していても、片方を信号で止めて、片方をまず行かせて、という感じではないので、なんとなくお互いが加減し合って譲り合ったりつっきったりしてやっとります。
また、道路の幅はえてして日本よりもゆったりたっぷりしているのですが、
そこに駐車する車によって、4車線くらいの道路が1車線になってたりということもよくあります。
さて、その二列だか三列だかに縦列駐車した車の真ん中辺のひとは、いったいどうやって車を出すんでしょうか。
まず、外がわ(道路よりということですね)の真ん中編に止めた人は、基本鍵をかけないでおくのが暗黙のマナーらしい。(!)
そうすると、内側の人が車を出したいときは、外側の車をまず人力でおしのけて(!!)、そして車を出し、そしてまた人力でもどす、とこういう事になる。
しかし中には、「そんなことして盗まれたらたまるかよ」と(じぶんの路駐は棚に上げて)鍵を閉める人も当然いる訳で、
あるいは二列どころか三列くらいの縦列駐車もあるわけで、そんなときは、どうするのか。
なんと、道の周りになんとなく座っているおっちゃんたちを呼び寄せ、車をもちあげさせて(!!!)外に出すというのです。
なんてこったい。
こんな社会で、車をいい状態でキープするのは、至難の業、というか、無理。
友人の旦那さんは、人がそのためだけに在中している駐車場に車を入れているようですが、
そうでない場合、バックミラーのカバーとか、タイヤのあれこれとか、ワイパーとか、
気がつくとどんどん持っていかれるそうです。
だからもう、それは修理しないんだって。修理してもまた取っていかれるのがわかっているから…
なんてエコロジカル!(笑)
昨年来たとき、オールドカイロを案内してくれた大学の教授というエジプト人は、
兄弟だかいとこだかの新車に乗ってやってきました。
オールドカイロは、その名の通り、車なんてない時代につくられた街なもんで、車の幅なんて計算して道幅作っているわけない訳よ。
そこに、ガンガン車を切り込ませていくのはエジプトマナーらしく、そういう人はいっぱい他にも見かけど、
細い一本道。真ん中編まで来たところで、なんと向かいから15台くらいの車の列が。脇道はありません。引き換えそうにも後ろは人やらロバやら馬やらでぎっちり。向いの車の列は、どうも結婚式の参列らしく、大にぎわいで、こっちの車なんてあんまり眼中にない感じ。
さて、どうしたか。
ぎりぎりですれ違ったのです。
普通のぎりぎりじゃないですよ、ほんまもんのぎりぎりです。
両脇はでこぼこしたかたい石造りの建物の壁。
乗っている間中、右からも左からも、ぎぎぎがががという大変不吉な音がし続けておりました。
当然の事ながら、後で見ると、
白い新車に、くっきりと、ストライプが入っておりました。
いとこだか兄弟だかと殺傷沙汰にならなきゃいいけど…と、真剣に心配をする私をよそに、
エジ在住歴のながい友人は「ま、エジプトじゃ新車の寿命は短いから。いずれこうなるよ。」
…そうですか。
そういうもんですか。
ほんとにそれでいいんですかー!!!
…
そのほか、カイロ名物は単車の複数人乗り。
二人乗りは、あたりまえ。じーちゃん同士ですら二人乗りしています。
若い子が三人で。赤ちゃん抱いた奥さんをのっけて。
さらには、赤ちゃんを抱いた奥さん、その間に子供一人とばーちゃん、…5人!?とかね。
こういうのが、車の陰からその脇をねらってひょいっと突っ込んでくるので、
ただでさえ止まる気配のない車の間をぬって道路をわたるのにヒーハー言っているところに持ってきて、本当に心臓が口から飛び出そうになります。
白いボディに、下がブルーのマイクロバスは、その外見からして、すでに相当ヤバそうな感じむんむん。車の前が完全にブッツぶれていたり(喧嘩に強い猫は前側に傷をもつと言われますが、あれですね。一歩も引かず向かっていく、ということですね。)暗い車内とは裏腹に、いかがわしいブルーや赤の電飾ギンギンだったり。一応人を運ぶ乗り物ですが、見るからに警戒色ギラギラな感じです。とてもサラームな乗り物とは思えません。とにかく無傷のマイクロバスをみたことは、まずないです。ドアがないのも当たり前。ドアからはみ出て人が乗ってたり。そして結構な確率でギンギンにシャァビな音楽がかかっています。
この音楽を始め、うるささで群を抜いているのが、トゥクトゥクです。
黄色いボディの三輪バイクで、後ろに座席がついています。エジプトの人々の見事なお尻を考えると、1.5人がせいぜいな幅ですが、一応大人三人がけが基本らしい。運転しているのは、たいてい10代半ばの青年(…というか少年…)で、これでもかというほどの大音量で音楽がかかっており、さらにそれにも負けない勢いで、クラクションをならし続けます。座席は固いし、車輪も小さいので、
舗装のしっかりしていない道でのろうものなら、お尻に青あざ、尾てい骨にヒビ、位の勢いでガンガン叩き付けられます。急発進急ブレーキが基本。もはや、交通というよりアトラクションと思った方が楽しめます。
これらマイクロバスやトゥクトゥクは、基本先に行かせた方がよいようです。止まってくれると思わない方が身のためなようです。日本のタクシーもかなり歩行者見てもとまりませんが、あんなのかわいいもんです。なんせ、そんなに大きな道じゃなくてもスピードがすごいんだから。
と、こんな感じのなかなか喧噪としたカイロですが、
私はこのテンポ感、色合い、スリル、これらにドキドキしたり、舌打ちしたり(車からニーハオとかいわれるしね)、地団駄踏んだり(わざとよけずにぶつかりそうになってきたりするからね)しながらも、嫌いにはならないのであります。全体の醸し出している感じが、なんというか、
あー、これカイロのリズムなんだなー、カイロの音なんだなー、という、いわば風物詩なんですな。
シャァビの音楽は、こういうところから生まれてくる、そういう音なんだな、と思います。
実際にクラクションのならしかたには、明らかにエジプトのリズムと密接な関係が見られます。
結婚式の車はたいてい「ザッファ」のリズムでクラクションを鳴らし続けています。
「D-PPP-P-D-P-P---」というかんじ。
最近よくすれ違う暴走族(若い子たちのバイクと車の群れ)は、音楽をがんがんにかけて、色々奇声を上げて飛ばしながら「マスムーディカビール」のあたまのところだけを繰り返してました。
「D-D-PPP-」
ほかにもよく聞くのは4拍子の「バラディ、DD-PD-P-」とか、トゥクトゥクの子の早撃ちでファラヒを聞いたときはその早さにビビりましたね。2拍子で「DP-PDーPー」
おもしろかったのは、こっちではけっこうクラクションを改造しているのがあって、
車から、かつての日本の暴走族のような「ぱらりらぱらりら」というのが聞こえたりするのですが、三音目があがりきらないで微分音なため、マカームラストに聞こえたりとかね。
そうそう、暴走族といえば、よく日本ではハコをはいた車がありますが、
カイロではどうしてもスピードを落としてほしいところ(小学校の前とか)に、道路がもっこりもってあるので、あのハコは一発でやられますな。カイロ向きではないようです。なんせ、歩行者も暗くて見えないでつんのめりそうになるくらいがっつりもってありますから…(そんなの私だけか)
本来カイロといえば「タクシー」で苦しむ人が多いようですが、今回私はメトロに乗っているので、あんまり使っていません。一度つかったタクシーのおじちゃんも、静かで良い人でした。
最近白タク(こちらでいうメータータクシーの事)が増えて、カイロのタクシーは初心者にとってめっきり使いやすくなったようです。
山奥で泊まりがけのイベントです。
ミュージシャンは一応キャビンもあてがわれて、私はアウトドアの準備もないのでキャビンを希望したのですが、同室に何十代も続くインドタブラの家元の息子だというタブラプレイヤー、アリフ・カーン氏がおりました。
彼は今回のシヴァのメインゲストの一人で、まぁそのタブラの音には神を見る、いや聞く思いがするというか、千年単位で継承されてきたものに宿る何かを確かに感じたのでした。
しかし、私は疲労もあってか、いつもにも増してすさまじく壊れた英語しかしゃべれず、結局彼とは、旅をした先で苦しんだ様々な虫の話とか、そういうくだらん話ばっかりしておったのです。
その彼、キャビンにマイシーシャをキープするほどのシーシャ好きで、
朝起きたら一服。
演奏終わった夜に一服。
という具合。
「よかったらあんたも一服どう?」という感じで、時を選ばずシーシャパーティー開催です。
「シーシャはインドでもポピュラーなの?」と聞くと、
「シーシャは世界中でポピュラーだよ。」
と、なにいってんのそんなの常識じゃん、みたいなそっけないお返事。
「ふーん、中東付近ならよく見るけどねー」
と答えたところ、
「そうそう、俺、シーシャが吸いたくて、カイロまでいったんだよー」
とカーン氏。へっ!?私のヒアリングのし間違い?と思いましたが、
「れありー!?」とか適当につないでみると、それはこんな話。
「そしたらさー、あいつらのシーシャ、たて方が雑すぎるんだよなー。まずいっつうの。だからさ、カフェで、『こうやるんだよ!』って、見せてやったんだよ。そしたら、あいつらも美味い、って感心しちゃってさ。金払えって感じ。カイロまで行ったのにさー。でも友人のコネをつかってナイルクルーズで一発ギグさせてもらえる事になってさ。タブラたたいてきたよー。」
「ナイルクルーズで、エジプシャンタブラでなく、インドタブラを!?」
「そうそう(笑)」
ということで(以上わたしの壊れた英語脳によるヒアリングなので、多少のフィクションが含まれる可能性があります)、シーシャのために本当にカイロまで行ったという事がわかったのだが、
そこで。
「しっかし、カイロの交通事情はヘルだねー!」
「え、インドも相当なもんだって聞くけど、インドよりひどい?」
「インドなんて目じゃないよ。何だあれ。俺はぜったいあそこで運転する気にはならないね。ワーストワンオブザワールド。」
と、インド人の彼のお墨付きが出る、そのカイロの車事情。
車を運転している人にとってもかなりの恐怖が色々あるらしく、
とにかくクラクションを鳴らしまくるのは、ほんとうにふら~っと歩行者が止まらないで出てくるとか、車がウインカーも出さないで曲がったりとか(そういえば、ウインカー出して曲がる車、あんまり見た事ない。あ、珍しく点滅している、と思ったら、ずっとつきっ放しで消すのを忘れてる、というのなら見た事ある・笑)するので、クラクションで「話しかける」のは「必須」らしい。
こちらに在住10年以上、という方も、最初はなんでこんなにうるさいんだろうなー、なんであんなにならしまくるんだろうなー、と思っていたが、一度その「ふら~っと」歩行者を殺しそびれて以来、エジプトマナーによるクラクションを導入したという事であります。
さて、その車ですが、歩行者にとってはなにが困るって、
横断歩道というものがないのですよ。従って、信号もほとんどない。
四車線あっても、十車線あっても、基本は走る車をよけたりとめたりしながら、モーゼが海を割るごとく自力でわたらねばなりません。
大きな道路の向こうの、あの、あそこのスーパーに行きたいのよ…
という場合、その道路がほんとーに天の川くらいの絶望的な勢いで見えます。
というのも、カイロの道路の作り方は、できる限り車が停車しないでいいように、循環型で組み立てられているとの事で、走り続けて目的地まで行けるようになっとるそうです。ほんとかいな。観察していると、道路が交差していても、片方を信号で止めて、片方をまず行かせて、という感じではないので、なんとなくお互いが加減し合って譲り合ったりつっきったりしてやっとります。
また、道路の幅はえてして日本よりもゆったりたっぷりしているのですが、
そこに駐車する車によって、4車線くらいの道路が1車線になってたりということもよくあります。
さて、その二列だか三列だかに縦列駐車した車の真ん中辺のひとは、いったいどうやって車を出すんでしょうか。
まず、外がわ(道路よりということですね)の真ん中編に止めた人は、基本鍵をかけないでおくのが暗黙のマナーらしい。(!)
そうすると、内側の人が車を出したいときは、外側の車をまず人力でおしのけて(!!)、そして車を出し、そしてまた人力でもどす、とこういう事になる。
しかし中には、「そんなことして盗まれたらたまるかよ」と(じぶんの路駐は棚に上げて)鍵を閉める人も当然いる訳で、
あるいは二列どころか三列くらいの縦列駐車もあるわけで、そんなときは、どうするのか。
なんと、道の周りになんとなく座っているおっちゃんたちを呼び寄せ、車をもちあげさせて(!!!)外に出すというのです。
なんてこったい。
こんな社会で、車をいい状態でキープするのは、至難の業、というか、無理。
友人の旦那さんは、人がそのためだけに在中している駐車場に車を入れているようですが、
そうでない場合、バックミラーのカバーとか、タイヤのあれこれとか、ワイパーとか、
気がつくとどんどん持っていかれるそうです。
だからもう、それは修理しないんだって。修理してもまた取っていかれるのがわかっているから…
なんてエコロジカル!(笑)
昨年来たとき、オールドカイロを案内してくれた大学の教授というエジプト人は、
兄弟だかいとこだかの新車に乗ってやってきました。
オールドカイロは、その名の通り、車なんてない時代につくられた街なもんで、車の幅なんて計算して道幅作っているわけない訳よ。
そこに、ガンガン車を切り込ませていくのはエジプトマナーらしく、そういう人はいっぱい他にも見かけど、
細い一本道。真ん中編まで来たところで、なんと向かいから15台くらいの車の列が。脇道はありません。引き換えそうにも後ろは人やらロバやら馬やらでぎっちり。向いの車の列は、どうも結婚式の参列らしく、大にぎわいで、こっちの車なんてあんまり眼中にない感じ。
さて、どうしたか。
ぎりぎりですれ違ったのです。
普通のぎりぎりじゃないですよ、ほんまもんのぎりぎりです。
両脇はでこぼこしたかたい石造りの建物の壁。
乗っている間中、右からも左からも、ぎぎぎがががという大変不吉な音がし続けておりました。
当然の事ながら、後で見ると、
白い新車に、くっきりと、ストライプが入っておりました。
いとこだか兄弟だかと殺傷沙汰にならなきゃいいけど…と、真剣に心配をする私をよそに、
エジ在住歴のながい友人は「ま、エジプトじゃ新車の寿命は短いから。いずれこうなるよ。」
…そうですか。
そういうもんですか。
ほんとにそれでいいんですかー!!!
…
そのほか、カイロ名物は単車の複数人乗り。
二人乗りは、あたりまえ。じーちゃん同士ですら二人乗りしています。
若い子が三人で。赤ちゃん抱いた奥さんをのっけて。
さらには、赤ちゃんを抱いた奥さん、その間に子供一人とばーちゃん、…5人!?とかね。
こういうのが、車の陰からその脇をねらってひょいっと突っ込んでくるので、
ただでさえ止まる気配のない車の間をぬって道路をわたるのにヒーハー言っているところに持ってきて、本当に心臓が口から飛び出そうになります。
白いボディに、下がブルーのマイクロバスは、その外見からして、すでに相当ヤバそうな感じむんむん。車の前が完全にブッツぶれていたり(喧嘩に強い猫は前側に傷をもつと言われますが、あれですね。一歩も引かず向かっていく、ということですね。)暗い車内とは裏腹に、いかがわしいブルーや赤の電飾ギンギンだったり。一応人を運ぶ乗り物ですが、見るからに警戒色ギラギラな感じです。とてもサラームな乗り物とは思えません。とにかく無傷のマイクロバスをみたことは、まずないです。ドアがないのも当たり前。ドアからはみ出て人が乗ってたり。そして結構な確率でギンギンにシャァビな音楽がかかっています。
この音楽を始め、うるささで群を抜いているのが、トゥクトゥクです。
黄色いボディの三輪バイクで、後ろに座席がついています。エジプトの人々の見事なお尻を考えると、1.5人がせいぜいな幅ですが、一応大人三人がけが基本らしい。運転しているのは、たいてい10代半ばの青年(…というか少年…)で、これでもかというほどの大音量で音楽がかかっており、さらにそれにも負けない勢いで、クラクションをならし続けます。座席は固いし、車輪も小さいので、
舗装のしっかりしていない道でのろうものなら、お尻に青あざ、尾てい骨にヒビ、位の勢いでガンガン叩き付けられます。急発進急ブレーキが基本。もはや、交通というよりアトラクションと思った方が楽しめます。
これらマイクロバスやトゥクトゥクは、基本先に行かせた方がよいようです。止まってくれると思わない方が身のためなようです。日本のタクシーもかなり歩行者見てもとまりませんが、あんなのかわいいもんです。なんせ、そんなに大きな道じゃなくてもスピードがすごいんだから。
と、こんな感じのなかなか喧噪としたカイロですが、
私はこのテンポ感、色合い、スリル、これらにドキドキしたり、舌打ちしたり(車からニーハオとかいわれるしね)、地団駄踏んだり(わざとよけずにぶつかりそうになってきたりするからね)しながらも、嫌いにはならないのであります。全体の醸し出している感じが、なんというか、
あー、これカイロのリズムなんだなー、カイロの音なんだなー、という、いわば風物詩なんですな。
シャァビの音楽は、こういうところから生まれてくる、そういう音なんだな、と思います。
実際にクラクションのならしかたには、明らかにエジプトのリズムと密接な関係が見られます。
結婚式の車はたいてい「ザッファ」のリズムでクラクションを鳴らし続けています。
「D-PPP-P-D-P-P---」というかんじ。
最近よくすれ違う暴走族(若い子たちのバイクと車の群れ)は、音楽をがんがんにかけて、色々奇声を上げて飛ばしながら「マスムーディカビール」のあたまのところだけを繰り返してました。
「D-D-PPP-」
ほかにもよく聞くのは4拍子の「バラディ、DD-PD-P-」とか、トゥクトゥクの子の早撃ちでファラヒを聞いたときはその早さにビビりましたね。2拍子で「DP-PDーPー」
おもしろかったのは、こっちではけっこうクラクションを改造しているのがあって、
車から、かつての日本の暴走族のような「ぱらりらぱらりら」というのが聞こえたりするのですが、三音目があがりきらないで微分音なため、マカームラストに聞こえたりとかね。
そうそう、暴走族といえば、よく日本ではハコをはいた車がありますが、
カイロではどうしてもスピードを落としてほしいところ(小学校の前とか)に、道路がもっこりもってあるので、あのハコは一発でやられますな。カイロ向きではないようです。なんせ、歩行者も暗くて見えないでつんのめりそうになるくらいがっつりもってありますから…(そんなの私だけか)
本来カイロといえば「タクシー」で苦しむ人が多いようですが、今回私はメトロに乗っているので、あんまり使っていません。一度つかったタクシーのおじちゃんも、静かで良い人でした。
最近白タク(こちらでいうメータータクシーの事)が増えて、カイロのタクシーは初心者にとってめっきり使いやすくなったようです。