<2003年月刊致知10月号より48回にわたり連載された「三農七陶」から抜粋します>
(前略)
振り返ってみると 40代・50代にかけて良き友がたくさんできた。
人の輪は40代に入ってぐんと広がった。
知り合う人との間に 心の線を引かないようにすると、ほんとに人として解り合えて好きな人となってしまうだろう。
今私には 来世にも会いたい人がいっぱいいる。
慈しみの始まりは まず人に好意をもつことから始まるのではないだろうか。
人を好きになると その人の健康を願い、仕事の成功を願い、悩みやトラブルの少なきことを心から願うようになるものだ。
若き頃には気づかなかった人の心と自然の広がりと深さを、この年齢になると感じる。
今の方が ずっと豊かな輝きの中に生きている感がある。
大好きな人たちや 仲間が楽しそうにしている姿が、私にとって嬉しい。
小さく集い合って 大声で笑わなくても 静かな笑い声のざわめきの中に居るのが・・特別何をするというのではないけれど・・心地よい。そんな日の帰り道は 道端の花や草や虫までも生き生きとして見える事がある。
最近 小中学生の娘さんと対立し続けるお母さんたちから 立て続けに相談を受けた。
お母さんたちは仕事を持ち 帰りが遅く 生きる意味を見失い、怒りとストレスの状態にあった。
小さな事で怒り 子供たちに期待してしまうあまり、言う事を「押し付け」だと理解しないで その重い期待に子供たちの心が荒れていっている。
まず 自分の心を調整することだ。
自分のことばかり考えず 人生のどこかで 人のために生きる喜びや 人のために生きる意味の尊さを知ると、その時点から運が変わる。
人生のどこでそのことに気づき 目覚めるかは運の大きな分岐点となる。
・・・つづく
(月刊致知2004年12月号)