<2003年月刊致知10月号より48回にわたり連載された「三農七陶」から抜粋します>
前回つづき・・・
街に行った時、二人の高校生が仲良く歩き それぞれケイタイで別な人と話している。昔は・・女子高校生は唱和しながら帰っていたが・・・。
熊本市で高校生がバス停で化粧している姿を見た。
女性が角を曲がりながら くわえタバコで車を運転する姿も見た。
子供達や若い母親たちが喋らなくなったと 知り合いの自転車屋さんは言う。黙って自転車を持ってきて「パンク」(あんたのせいだよ)と言わんばかりの 一言だけ。
スパーのレジで人は 無言でお金を渡し ニコリともせずに去るという。
ケイタイのメールで喋って 現実の口が動かなくなるのだろう。
若い男女に聞くと皆、毎日必ず風呂に入るという。どうりで川がシャンプー状になり清流が日本から消えるはずだ。
人は一つ便利な才能を得ると 今まで持っていた大切な能力を失うという事に気づかない。
例えば 車を使い始めると 足が弱る。
パソコンやメールが上手くなると 漢字が書けなくなる。
柔らかい肉やケーキを食べ始めると 歯やアゴが後退する。
錠剤でビタミンや栄養を取ると 内臓は野菜や果物から苦労して吸収しなくなる。
年中 空調の効いた部屋に住むと 汗をかく能力が失われ 自律神経失調をおこす。(そんな人はどうか満願寺窯の穴窯を手伝っていただきたい。汗びっしょりで一日で二キロはやせられる)
天候も社会も 川も虫も そして人間も正常なコントロールを失いつつある。アメリカもドイツも英国もおかしい。こんなに豊かになったのに 人々はイラつき 他人を信じられず 利と保身と所有欲に走る。
人の喜びこそ わが救い。
人との間に線を引くと他人同士になり 線を消すと友人(身内)になる。
自然界は違いがあってこそ成り立つ。
男も女も 肌色も国籍も性格も違いがあってこそ この世はおもしろく感動的になる。
なんかおかしい。地震か噴火があるのかしら。
少し襟を正して 生きてゆこうではないか。
少し清貧の中で 人生を楽しんで生きてゆこうではないか。
少しマナーを正しくして 自分の責任の中で いさぎよく生きてゆこうではないか。
友よ・・・。
(月刊致知2004年1月号)