徳を得る | 満願寺窯 北川八郎

満願寺窯 北川八郎

九州、熊本は阿蘇山の麓、小国町、満願寺窯からお送りするブログです。
北川八郎の日々の想いや情報を発信してまいります。

「光る足」

1999年2月から2000年12月まで百回にわたって毎週火曜日 熊本日日新聞のコラム「ワラブギ談義」の原本を10年ぶりに開きました。当時53才~55才。当時から伝えていることは変わりなく その心を読み返したく連載します。


2000・3・31 no61



私は後ずさりして トイレの修理をお願いしている左官の穴井さんの所に行った。妻も穴井さんのそばを離れない。穴井さんは六十歳を超えた小柄な左官さんだが 声も動作も目も とても優しいのだ。十分もそばにいるとそれを上品と感じてしまう。優しさが重なり徳となると上品に変化するようだ。


話しかけると仕事の邪魔になると思いつつ そばに寄ってしまう。息子の魚彦も麦彦も同じとみえて穴井さんの近くをウロウロ。家族みんなが吸い寄せられておかしかった。


私も穴井さんから良きエネルギーを吸収し 早々先ほどの客に注ぎに行った。じきに穏やかになる。「ここは何となく居心地がいい」とコーヒーを飲まれ ゆっくりとしていかれた。穴井さんに感謝した。私は二つの徳を得た。


熊本市内に用事があっての帰り 長い列の渋滞に巻き込まれた。わきから車が割り込んできた。そんな時 私は怒りの方向に心を向けず「この人に事故がないように」と口にして譲ることにしている。この時 私はその車の人から徳を与えられ その人はずるをした分 徳を失った。


少しずつ小さな徳のレンガを積むと 運が良くなってゆく。人を許し 良き祈りを習慣にすると徳が与えられる。

険しい顔をした客が 満願寺温泉の陶器の展示場に来られた。近くのレストランの食事について強い批判を始めた「全くムカムカする」。気分を害したらしく みぞおちをさすっている。