南小国の宝 | 満願寺窯 北川八郎

満願寺窯 北川八郎

九州、熊本は阿蘇山の麓、小国町、満願寺窯からお送りするブログです。
北川八郎の日々の想いや情報を発信してまいります。

「光る足」

1999年2月から2000年12月まで百回にわたって毎週火曜日 熊本日日新聞のコラム「ワラブギ談義」の原本を10年ぶりに開きました。当時53才~55才。当時から伝えていることは変わりなく その心を読み返したく連載します。


1999・10・22 no38


鎌倉時代の北条氏の三代以上の墓がある所が全国に三カ所ある。鎌倉と信州の別所温泉 そしてここ南小国の満願寺温泉だ。北条氏は温泉地が好きだったのだろうか。


初めてこの地に来た時 こんな所に北条氏の墓が・・といぶかしく思った。元冠の時北条氏は他に直轄領がなく 満願寺から博多まで早馬を飛ばし指揮を執ったという。元を防いでこの名刹 満願寺が建った。


その隣の満願寺小学校のグランド横に巨大な杉群がある。七百年以上もたった七本の杉は北条時定の墓を守っている。ここは神秘的でトトロが住んでいるようだ。その杉群の聖域に入ると 心が「森(しん)」として背筋に光が走る。


七本の杉は北条氏の墓から出る光に押されるように放射状に傾きながら天をつく。よく倒れないなと仰ぎ見る自分の方が倒れるほど傾いている。七本の中心部に立つと背筋がじんじんとしてくる。


特に面白いのは墓の左横の大きな杉だ。彼には時の武将を感じる。今も懸命にあるじの墓を守っている。その腕は太く 力こぶは巨大でまるで仁王像のようだ。ここは不思議な空間だ。訪れた人は皆去りがたく 去った後も心地よいエネルギーをもらう。


小学校の丘の上にも「千年杉」がある。樹木が数百年以上経て巨木になるまで育つ土地はたくさんはない。南・北小国には他にも千年以上を経た木が幾本もある。この大地には人間の経路にも似たエネルギーのツボがあるのだろう。