恩師 | 満願寺窯 北川八郎

満願寺窯 北川八郎

九州、熊本は阿蘇山の麓、小国町、満願寺窯からお送りするブログです。
北川八郎の日々の想いや情報を発信してまいります。

「光る足」

1999年2月から2000年12月まで百回にわたって毎週火曜日 熊本日日新聞のコラム「ワラブギ談義」の原本を10年ぶりに開きました。当時53才~55才。当時から伝えていることは変わりなく その心を読み返したく連載します。


1999・10.29 no39


恩師は人生の見方を変えてくれ 生きる上の重要な転機を与えてくれる。現実には恩師と呼べる人にはなかなか出会わないものだ。出会ったとしたら大きな幸運といえる。


満願寺小学校は児童29人。全校で三クラスの小規模校だ。小学校六年の時 魚彦は宝とも言える先生に出会った。その先生は子供のいいところを見抜き 信じる不思議な力を持っていた。先生のクラスになった子供たちは少しずつ精神的に安定していった。


先日 小規模校野球大会があった。下馬評にも上がっていなかった満願寺小は一試合ごとに力をつけ見事優勝してしまった。そこでの先生の采配は素晴らしかった。試合を通して子供たちは自信をつけ成長した。


その後 先生は学級で「よかった探し」を始めた。一日の終わりに「今日よかったこと」を発表する子供たちは生き生きをしていた。小国のような小さな町の大人たちによく見られることだが お互いに生まれた時から顔を知っていると相手の悪いところを指摘できなくなる。よかった探しをしているとこの弊害が出始めた。そこで次週から「悪かった探し」を始める。子供たちの心は揺れる。間違い探しの発表には勇気と優しさが必要だ。


こうして交互の「よかった」と「悪かった」探しの積み重ねを通して心の痛みや励まし 勇気などを体験させていった。先生は評価せずにひたすら聞き役に回ったという。先生は願う。子供たちが「よかった」「悪かった」を乗り越え 友情の輪を広げて人生を楽しんで生きてほしいと。