あしひきの 山のしづくに 妹待つと われ立ちぬれぬ 山のしづくに巻2-107大津皇子
この歌は天武天皇の皇子で大津皇子が石川郎女に恋して山の中で逢う約束をしたのに、とうとう来なかった時の心境の歌です[私は山のしづくに濡れて待っていたよ、山のしずくに濡れてさ]と言うのです![山のしずく]と言う言葉は日本語として非常に素晴らしい言葉です。 というのは、真っ暗な夜、じっと彼女を待っている。すると木の葉にたまった夜露でしょうが、それがポタリポタリと落ちてくる感じと、胸の動悸まで伝わってくるような言葉、それが[山のしずく]なんですね!日本語はこんなにこまかいことを、こんな短い言葉で表せるのですね。日本人に生まれて良かったです! そこで石川郎女は何と答えたか! 吾を待つと 君が濡れけむ あしひきの 山のしずくに ならしものを 巻2-108 [私を待つというので、あなたはお濡れになったそうね。お濡れになったその山のしずくになりたかったわ]と言うのです!この歌は[山のしずく]をめぐって、お互いの愛を打ち出している見事な愛の唱和ですね。川端康成の作品にも日本語の美しさがあり読み返してみたいと思いました。
