靴で損をしている | すくらんぶるアートヴィレッジ

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★日本人は「靴」で損をしている/MB(ファッション本作家、アドバイザー)

コーディネートを作る時、ちゃんと「靴」までセットで考えていますか?

私(MB)はテラスのあるカフェなどで「定点観測」をします。道行く人たちがどんな服装をしているのか、どんなコーディネートが好まれているのかなどを2時間も3時間も見続けて考えることが趣味であり仕事でもあります。その中でよく感じるのが「靴がおろそか」ということ。「あの人はすごいおしゃれだけど、何かが足りない・・・なんだろう」そう考えて思いを巡らせると「靴」という答えにたどり着く場合がかなり多い。

 

・・・実は、わたしもスリッポンを描くようになって、道行く人々の足元を観察することが習慣になり、上記と同じように感じています。

「靴」とは多くの方が思っている以上に重要なポイントです。私はよくメルマガで「頭と足先はコーディネートの司令塔」と言っていますが、頭と足先は体の先端・コーディネートの先端であり視線が止まる箇所です。コーディネートは「トップス」「ボトムス」「アクセサリー」で構成されますが、その全てが平等に重要というわけではありません。当たり前ですが「おしゃれ」は他人から判断される客観的なものです。であるならば「目立つ部分」は重要度が高く、「目立たない部分」は重要度が低いはずですね。 例えばアウターとインナーなら、隠れてしまうインナーの方が重要度が低いわけです。「面積の広さ」や「目立つ目立たない」「視線にとまりやすい」などでアイテムごとの重要度が決定されます。頭の先や足の先などは視線がとまる最も目立つ箇所。この二箇所はコーディネートの中で特に重要度が高い部分です。

★靴を履く文化、履かない文化

「靴はこれでいいだろう」となんとなく決めてはいませんか?アウターとインナーとボトムスの組み合わせは苦心して考えているのに、靴は最後に「これでいいか」と安易に決めていませんか?日本は欧米に比べてファッション後進国です。これは一つに「洋服」の歴史が浅いことが起因しているでしょう。イギリスはジャケットの着こなしを父親から教わるそうですが、日本ではお父さんなんて「ダサい象徴」みたいな扱いです。洋服を教える伝える様な「文化」がまだ形成されておらず、着こなしのルールは感覚的にも論理的にも根付いていない状況です。しかし実は「歴史が浅い」という理由に比べれば影響はごく小さいかもしれませんが、「家の中で靴を履かない」という文化もファッションを遅れさせている一つかもしれません。いやもちろんヨーロッパなどでも家の中で靴を脱ぐ文化はあります。しかし日本ほど明確に「ここからは靴を脱ぎましょう」と区別はされていません。時に脱ぎ、時に履くこともあります。私たちはコーディネートを「本気」で決める時、鏡の前に新聞紙を敷いて靴を置いて撮影します。「その一手間」がどうにも面倒くさく、靴は「まあこれでいいか」と考えてしまいがちです。欧米の感覚であれば靴を脱ぐ家だったとしても「まあ、あとで拭けばいいか」くらいの感覚で新聞紙が必要ないかもしれません。この差は大きい様に思うのです。ちょっと面倒だと思うのですが・・・「本気でおしゃれを作りたい」と思う時は、ぜひ「靴」までしっかり見て考えてください。

 

・・・衣服は鏡のある室内で見ながら決めますが、靴は玄関で適当に履いて外出する。そんな日常ではないでしょうか。

《イタリア人より「日本人観光客へファッションアドバイス」》Mako Kobayashi

★「日本人はオシャレなんだけど、一点だけ気になる点が・・・」

フィレンツェ市民から、日本人観光客のファッションについてよく言われることがあります。それは・・・「日本人観光客は老若男女問わず、きちんとしていて小綺麗で清潔感があって、世界中の観光客の中でもオシャレだと思う。だけど一点だけとても残念なことがある。それは・・・靴!どうしてみんなエレガントな洋服を着ているのに、ちっとも合わない運動靴を履いちゃうの?!」

★日本人観光客の多くが運動靴スタイル

「歩きやすい運動靴」。それを履きたい気持ちはよくわかります。特にツアー旅行なんて、毎日すごく歩きます。だから「歩きやすい靴」を選ぶのは必要不可欠です。また、フィレンツェは古都の街。石畳はでこぼこしていて非常に歩きにくいですし、ヒールは危険を伴うくらいです。足が痛くて観光できない、というのも最悪のパターンです。ある最大手の旅行ガイドブックで、イタリア観光に最適の服装について「運動靴」と書いてあるのをご存知でしょうか?旅行ガイドブックにはスポーツ用品店がスポンサーについているのか?!と思えるほどですが、その服装アドバイスが功を奏しているのか、日本人観光客の足元のほとんどが実際に運動靴です。

★イタリア人から日本人観光客へ「靴」選びのアドバイス

もちろん、フィレンツェ市民も運動靴を履きます。でも何かが違う。何が違うのか。「じゃあ、日本人観光客はどうすればいいのか」についてイタリア人たちの意見を聞きました。

(その1)運動靴の場合は、恰好も少しカジュアルにする

デザイナーのLucio Antonucci(ルーチョ・アントヌッチ)の足元はスニーカー。カジュアルめの洋服とスニーカーの相性が抜群。日本人観光客のファッションで残念なのは、洋服と靴のバランスが悪いことなんだそうです。洋服がエレガントであればあるほど運動靴とのギャップが目立つので、「運動靴に合わせて洋服もある程度カジュアルにする方がいい」とのこと。日本人は、世界でも特にTPOを考える国民、シーンに合わせて行動できる国民だと思います。優雅なイメージがあるヨーロッパ旅行では少し上品な感じのスタイルを心がけるのではないでしょうか。観光客の気持ちを代弁すると「せっかく美しいイタリアに行くなら、エレガントな格好をしたい。だけど、沢山歩くから運動靴は外せない・・」というところ。しかし、靴と洋服の雰囲気が違い過ぎると、結果的に「残念」に見えるそうなので、洋服も少しカジュアルにするといいようです。

(その2)運動靴は、派手な色・柄ではなく、色味を抑えたタイプを選択

派手地味ミックスといったような、靴だけ派手な色で洋服は地味な色合い、といったファッション難度の高いスタイルを素人が挑戦してしまうと、失敗しがちになるように思います。蛍光イエローのラインが入った運動靴などをシックな格好に合わせる、というような大冒険をせずに、色味を抑えたスニーカーを選ぶのが、無難な運動靴選びのようです。

(その3)運動靴ではない、歩きやすい靴を選ぶ

イタリア人の足元は運動靴ばかりではありません。イタリアに来る機会がありましたら、是非彼らの足元にご注目ください。どういったものが履きやすくてオシャレなのか熟知しています。さて、どんな靴を履いているかというと・・2015年のPITTI UOMOでは素足にローファー&ドライビングシューズの人だらけでした。イタリアは革産業が盛んなので、上質なレザーシューズが多いのですが、その中でもローファー&ドライビングシューズはカジュアルにもフォーマルにもキマるのでイタリア人男性から大人気。フィレンツェのFMラジオ局の人気イタリア人DJのTony(トニー)さんは素足にローファーが定番。「日本ではナンパなイメージがあるよ」と伝えると「イタリアだって同じだよ、俺を見ろ!」と得意げでした。

 

《古代エジプト人もギリシャ人も靴のおしゃれさん》輪湖もなみ

https://p-dress.jp/users/250

西洋は立体、日本は平面。衣服というものの捉え方が真逆、というお話を書きました。どちらの衣服も理にかなっていて、長い歴史に根ざした素晴らしい文化だと思います。でも靴だけは、「バリエーションでは西洋にかなわない」って思うことがあるんです。サルヴァトーレ・フェラガモといえば靴。足を痛めない靴を製作するため、南カリフォルニア大学で解剖学を修めたフェラガモですから、同ブランドの代表アイテムが靴であることは疑いの無いところです。ウェッジ・ヒール、フラットフォーム・ソールなどの数々のアイデアは、靴に数々の革命をもたらしました。フェラガモのスカーフも、靴にまつわるデザインが多いようです。

 

・・・無頓着に履いている靴、「アート・スリッポン」をきっかけにオシャレとまでいかなくても、歩くこと・でかけることを楽しめたらと思います。