H・S・Z(13)造形遊び1 | すくらんぶるアートヴィレッジ

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・・・この夏、「造形教育」にかかわって研修講師をつとめる機会がありました。重要なキーワード「造形遊び」について、

 

★「造形遊び」って何?/日本文教出版より

https://www.nichibun-g.co.jp/data/web-magazine/manabito/art/art035/

○名称の観点/学習指導要領上、「造形遊び」は正式名称ではありませんでした。「材料をもとにした造形遊び」「楽しい造形活動」など様々な呼び方をされていました。そのためか教科書でも「絵」「造形遊び」とは示されていません。でも、改訂で「造形遊び」は正式な名称になりました。教科書にも用語として用いられています。

○内容の観点から/図画工作科では、学習内容を「表現」と「鑑賞」の二つに分けています。そして「表現」を「造形遊び」と「絵や立体、工作に表す」に分けています。簡単に言えば、★材料や場所あるいは行為などに出会って始まるのが「造形遊び」、★明確な目的があって始まるのが「絵や立体、工作に表す」です。別の内容というわけではなく、図のように一つの内容を二つの側面からとらえるという考え方です。

○能力の観点から/「造形遊び」も「絵」も、育てようとする能力は一緒です。問われるべきは、★学習を通して「発想や構想の能力が高まったか」「創造的な技能が十全に働いたか」です。「これは造形遊びだったか、絵だったか」ではありません。★授業研究会でジャンルにこだわる議論を行うのは生産的とは言えないでしょう。

○ジャンルの観点から/一方、「これは絵」「これは彫刻」というふうに、ジャンルに分けて考えることも必要です。このとき、図画工作には、そのような一般的な言葉でうまく表せないことがあるというわけです。例えば校庭の遊具をシートで包む定番の学習活動を何と呼べばいいのでしょう。「絵」ではないし、かといって「つつむ行為から発展した何か」と言うのも変です。これを「造形遊び」と呼んでいると考えてはどうでしょうか。

○行為の観点から/そもそも、行為だけを取り出したら、大人も子どもも、造形遊びも工作も、区別はできません。例えば、「絵」の題材に「真黒にした画用紙を消しゴムで消しながら描く」という題材があります。消すという行為そのものを楽しみ、そこから新しい発見が生まれるような活動です。あるいは作家が「風景画」で、山肌の質感を表そうと無心に絵具をキャンバスに重ね、その行為から思わぬ効果が生まれているとすれば、それはまさに「造形遊び」の状態です。★行為性は「造形遊び」で最も大切な要素です。

○〔共通事項〕の観点から/このように「造形遊び」には「絵や立体、工作と共通する部分」と「絵や立体、工作と異なる部分」があります。その二重性が「造形遊び」の分かりにくさでした。でも新しい学習指導要領で、「形や色を手掛かりにイメージを膨らませて表現する」という行為的な部分は〔共通事項〕と設定されました。「造形遊び」で重視してきた内容が〔共通事項〕として小中で一貫し、広がったという言い方もできるでしょう。〔共通事項〕には「造形遊び」の二重性の解消という側面もあるのです。

○発達の観点から/教科書を眺めて「絵や立体、工作」と「造形遊び」の題材を比べてください。低学年ほど渾然としています。中学年から分かれはじめます。★高学年では、テーマ性がはっきりしてきます。中学1年生にも、★小学校との接続として「造形遊び」が想定されています。さらに中学生一人ひとりの作品の中に「造形遊び」性を探すことができるでしょう。どの教科でもそうですが、学習内容は発達に沿って分かれ、具体的になっていきます。「造形遊び」も同じです。発達に応じて、その現れ方は変化します。

○指導の観点から/低学年ほど「造形遊び」はシンプルに提案されます。例えば★「どんどん ならべて」のような定番題材では「今日はたくさんあるものを並べてみようか!」で十分でしょう。それだけで、子どもたちは次々と工夫します。でも高学年で、先生「並べてみよう!」、子どもたち「お~!」とはならないでしょう。高学年では、色、光、雰囲気、そこを通る人の気持ちなど、様々な手掛かりを与えたり、★テーマを明確にして探求的に進めたりすることが考えられます。

○評価の観点から/「造形遊び」では、★プロセスで働く資質や能力が重要です。例えば、子どもたちは、大きな黒い画用紙に絵具を垂らしながら「きれい」や「いい感じ」を★見つけています。そして、もっとそれを「きれい」に「いい感じ」にしようと★挑戦します。それは大人的に言うと「補色の組み合わせ」「バランスの追求」などの試みです。また、子どもたちは、★自分の手の動きや変化する様そのものが大事で、それ自体を飽きもせず繰り返します。それは★「行為そのものへの没入」で、そこから★「発見」が生まれたりします。先生はこれらの姿を肯定的に評価し、「子どもが感じてはいるけど、★言葉にはできない部分を言葉にする」「活動の★面白さを認め、後押しする」、時には「止めたり、★複数の提案をしたりする」などの指導につなげるとよいでしょう。

 

・・・アートで大切にしてきたことは「遊びココロ」「子どもココロ」ですから、まさしくここに書かれている《材料》や《場所》あるいは《行為》などに出会うところから再考したいと思います。

 

《参考1》「素材―その形と心」The Material -Its Form and Spirit

https://www.gallerydekasuga.com/ja/

落合陽一、ジャン・ワン、須田悦弘、宮永愛子など国内外の現代アーティスト15名が、それぞれ特徴のある素材から生まれた多様な素材から制作した作品、20点余りをご紹介します。キュレーションは、森美術館の元館長(現特別顧問)、南條史生が手がけます。ミニマルで均衡の取れた円相を描く森万里子の出品作《Oneness Ring》は、希少な天然鉱物の「蛍石」を原料とした工業素材PTFEから作られたマテリアルブランド“BLANC BIJOU”を素材にしており、その柔らかい純白の肌合いは、他に類をみない美しさを見せています。“永遠の白”と称されるこの素材は春日秀之が感性価値を見出したマテリアルで、アートとテクノロジーの融合といえる作品です。多くのアーティストが★素材に興味を持ち、その★扱いに習熟しそれをコントロールすることで★新しい可能性を開いています。展示作品はガラス、陶、木、ブロンズ、鉄、紙などを素材とした作品で、それらの多くは日本の伝統工芸においてもしばしば使われてきたもので、一部は最新のテクノロジーによって生み出されたモノです。ここでは新旧の素材と、その物作りの取り組みを紹介し、素材の生み出す多様なアートの可能性をご覧いただきます。

https://www.gallerydekasuga.com/ja/news_events/1456/

 

《おまけ》美術の素材と環境教育―女子美術大学のプロジェクト

http://www.joshibi.net/brand/index.html

女子美術大学ではデザインやアートの分野で、地球レベルでの社会文化と環境の様々な問題に対処できる人材の養成を目的に様々な実践型素材・環境教育を行っています。本プログラムは、現在まで本学で行われてきた、特色のある美術造形素材についての教育研究成果、エココンの参加などで積み重ねてきた環境教育の実践を基礎に展開するものです。環境問題に対する視点から、学生は地域性に基づいた土・砂・岩・植物などの自然素材をモデルに、自然環境の機能を理解し、各国とのデザイン交流を通して国際感覚を身に付けてきました。さらに、本プログラムは相模原・町田市域を、地球環境問題と結びついたアート&デザインの素材と環境活動のフィールド実習現場として活用します。学生が土壌や植物生態系の概念、農(植物)の栽培を大学近隣農場で体験できるとともに、NPO組織、自治体などとの地域連携、国際交流協定校との協働体制もはかるシステムです。文部科学省の行う「平成20年度 質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」に申請した本取組が採択され、さらに充実したプログラムへと成長中です。これまでの取組紹介とともに、最新の活動を報告してゆきます。

 

《参考2》Arts + Material~作品と作家の間には道具と素材があるはず、だ~/AMeeTより

https://www.ameet.jp/feature/557/

Arts(芸術)の世界において、数多のMaterial(素材)はArtist(作家)によって作品へとされ、新たな価値を得る。そしてArtistの精神を表すものとしてのMaterialとArtistの間にはそれぞれの物語が存在するのではないか。本稿ではMaterialとArtistのみならず、その間に存在する★Instruments(道具)を軸としながら、作品と作家の間にあるものを探り、アートの世界を楽しむ一助としたい。

 

《参考3》富山県美術館開館記念展 Part 2「素材と対話するアートとデザイン」

https://tad-toyama.jp/exhibition-event/2975

「モノ」を創作するにおいて、素材と向き合い対話することは不可欠だ。アーティストは創作の過程において、めざす表現や技術を発揮できるように素材を選んできた。また、デザインのプロセスにおいても素材の選択は重要な要素であり、耐久性、適応性、コストが問われ、素材と加工技術の組み合わせで新しい価値が生まれる。本展では、木や金属から新素材まで、素材とその変容をテーマとした4つのセクションを通して、素材の魅力と素材に触発されて生まれるアートとデザインを紹介する。参加するのは、エマニュエル・ムホー、倉俣史朗、南政宏、須藤玲子、坂下和長、ニーナ・ファーベルトら。ムホーは、本展のために制作した新作《COLOR OF TIME》を発表する。

 

《おまけ》視ることの楽しみ―画材と素材の引き出し博物館/目黒区美術館より

https://mmat.jp/exhibition/archive/2021/20210116-349.html

展示と教育普及活動を結ぶものとして、美術の画材、素材に目を向け、教材の制作や教材のコレクションを行ってきました。その代表的なもの がオリジナル教材の『画材と素材の引き出し博物館』です。『画材と素材の引き出し博物館』は、キャスター付きの木製の箱(BOX)に引き出しが縦一列に収納されたもので、大別すると、画材・紙・木・金属の4種あります。引き出しの数は全部で 81 個。それぞれの引き出しには画材や素材がテーマ別に体系的に収められています。引き出しをそっとあけてみると、そこには絵具の原料や、日本画材と洋画材の違い、素材の特徴や表情、道具の加工工程などが実物資料でビジュアルにレイアウトされて、これまで知らなかった画材や素材そのモノ自体が放つ独特の魅力に気づかされます。本展では、この当館オリジナルの『画材と素材の引き出し博物館』を紹介いたします。普段はあまり気にとめないモノも、見方を変えると今まで気づかなかったモノの意味や表情が見えてくることがあります。さまざまな美術の表現を支えてきた画材や素材の、モノとしての成り立ちや特徴を知り、長い歴史の中で加えられてきた人智や人間の細かな配慮や技術の確かさ、つまりモノと人との関わりをこの『引き出し博物館』を通してみることは、美術を能動的に“視る”楽しみを発見することにつながるでしょう。

 

・・・これらのコンセプトに異論はない。しかし、もう一方で★画材としての「油絵(油彩画)」に固執するアーティストたちも多いという「乖離」。

 

《参考4》デジタル全盛の時代に、★写実絵画にこだわる理由/夢ナビより

https://yumenavi.info/lecture_sp.aspx?GNKCD=g009391&OraSeq=7266859&ProId=WNA002_Sp&SerKbn=g&SearchMod=1&Page=1&KeyWord=%E5%86%99%E5%AE%9F

現代では写実絵画は「表現」と考えられていますが、それが誕生した頃は★イリュージョンだと考えられていました。人々は実物そっくりの絵に幻惑され、画家にはそのような絵を描きたいという欲求がありました。写実する、つまり目に見えるものを模倣することに魅力があったのです。また、★記録するという機能もありました。貴族は自分の肖像画を画家に描かせることで、自らの存在を明らかにしました。写実への欲求を推し進めたのは、油彩の材料と技法です。油彩には光沢と質感があり、重ね混ぜ合わせることでグラデーションを表現することができます。★陰影と立体感、空気感を表現するのに適した画材でした。画家たちは、この道具を使うことでリアルに描くことを競い始めます。駆け出しの画家は、巨匠の絵を真似してその技法の秘密を学ぼうとしますが、決して同じ絵にはならず、試行錯誤するなかで自分なりの表現と技法を獲得するようになります。リアルといっても一通りではなく、画家によって何を重視するかは異なります。ボッティチェリの絵は平面的ですが、線の美しさに、リアリティがあります。また、色彩にリアリティを見出す画家もいます。画家によって、リアルを実現するための試行錯誤の中身、表現との格闘の仕方は異なっているのです。時代は変わり、写実絵画は、★カメラの開発で、「記録する」という機能は衰えました。抽象画の誕生で、表現は写実にとらわれず自由になっています。また、デジタル技術の発達で映像表現も高度になっています。このような中で、写実絵画にこだわる理由とはなんでしょう?それは、★手仕事としてリアルな表現を獲得するための苦しみや試行錯誤、例えるなら★「リアルというブラックボックス」に近づくための過程に意味があるのです。いくらテクノロジーが進んでも、芸術が存在する限りこの経験は残っていくでしょう。

 

《おまけ》ニッポン放送より

https://news.1242.com/article/107714

「いったいなぜ、日本では、立体的な写実画が発達しなかったのか?」実はコレ… 専門筋の間でも、日本美術界における「大きな謎のひとつ」とされてきたんです。筆を握れば、自分が見えているとおりに書きたくなるのが、画家たるものの本能とも思えます。それなのに…いったいなぜ、日本には(ごく一部の例外を除き)まるで写真のような絵が残されていないのか?この理由に関しては、諸説ありまして、いろんなヒトが、いろんなことを言ってます。あるヒト、いわく…「浮世絵は★木版画だから、奥行きのある陰影をつけるのが難しい。ゆえに、写実画が発達しなかったのだ。」またあるヒト、いわく…「江戸時代の日本人たちは、世界一、識字率(※「読み書き」率)が高かった。西洋では、文字の代わりに絵で情報を伝えようとして、それが写実画の発展に繋がった。ところが、★読み書きができる日本人たちは、そこまで絵というものに必要性を感じなかったのだ。」またあるヒト、いわく…「日本では、昔から、写実的に描くと★魂が抜かれる…という考え方があった。のちに外国からカメラが入ってきたとき、みんなが写真を撮られるのを嫌がったことからも、この考え方が全国にあまねく広まっていたことが分かる。だから、写実画が発展しなかったのだ。」まさに議論百出、さまざまな理由が隠れていそうですね。さぁ、ところが… ごく最近になって、なんと!「江戸時代のニッポンにも、恐ろしくリアルで写実的な絵が、確かに存在した!」「しかも、その絵を描いたのが、浮世絵界の、超大物だった!」…そんなことが分かりまして、世界の美術界に、衝撃が走っているんです。つい先ごろ10/22日、ある地方紙で、以下のような内容のニュースが報じられました。オランダにある「ライデン国立民族学博物館」が、江戸時代の日本の風景とみられる絵画6点を所蔵していました。これらの風景画は、日本にいたシーボルト医師によって持ち帰られたものでした。なにしろこの風景画、ものすごくリアルに描かれていますから、博物館の職員たちも、「西洋の画家によって描かれたものだろう」と信じて疑いませんでした。ところが… 調査の結果、この絵を描いた人物とは、誰あろう…江戸時代の浮世絵師、「葛飾北斎」が描いた可能性が高いことがわかったんです!※シーボルトの子孫が所蔵していた目録と照らし合わせたところ、「北斎が我々(西洋)のスタイルで描いたもの」という記述が見つかった!~生前の葛飾北斎と、シーボルト医師は、長崎で出逢ったことがあったのだそうです。天才・北斎は、絵心もあったシーボルトから西洋画の描き方を訊き、サラサラ~~ッと「超写実画」を描いてみせた… というのが「真相」のようです。さらに、天才が天才を生んだ… という話があります。葛飾北斎の娘さんで、葛飾応為という浮世絵師がいました。この女性が描いた現存する作品は、10点前後と非常に少ないんです。ですから、長い間、お父さん、葛飾北斎の影に隠れまして、あまりスポットが当たることがなかったのですが…人によっては、娘さんの葛飾応為を、「父親以上の天才画家だ」と評する向きもあるんです。なにしろ、その作品のほとんどが、当時としては異例の描き方で、「おそろしくリアル」なんです!この「葛飾北斎、葛飾応為」という親子の例ひとつをとっただけでも、「一流の浮世絵師は、写実を、“描こうと思えば描けた”」ことが分かります。さしものゴッホも、浮世絵師のこうした凄みは、知らなかったのではないでしょうか?ちなみに、折も折、この娘さんのほうの「葛飾応為」を主人公とした日本のアニメーション映画が、話題を呼んでいます。その名を『百日紅(さるすべり)~Miss Hokusai』※2015年公開/原恵一監督。女優の杏さんが応為の声を務めているコチラの作品、非常に評判がよろしいようで、新海誠監督の『君の名は。』と並びまして、来年のアカデミー賞長編アニメ賞にエントリーされることが分かりました。

https://www.youtube.com/watch?v=otsXD8pkW4A

https://www.youtube.com/watch?v=rXQ856O40nw

江戸風俗研究家で文筆家や漫画家としても活躍した杉浦日向子の漫画代表作「百日紅」を、「カラフル」「河童のクゥと夏休み」の原恵一監督がアニメーション映画化。浮世絵師・葛飾北斎の娘で、同じく浮世絵師として活躍した女性・お栄が、父・北斎や妹、仲間たちとともに生きた姿を、江戸の町の四季を通して描く。アニメーション制作は、原監督作では初となるProduction I.Gが担当。声優には、お栄役の杏、今作で声優初挑戦となる北斎役の松重豊ほか、濱田岳、高良健吾、美保純、筒井道隆、麻生久美子ら豪華俳優陣が集った。

 

・・・「乖離」の底辺にあるのは?ひらたく言えば★「写実」そして画材としての「油絵(油彩画)」のような気がする。