H・S・Z(8)点線面 | すくらんぶるアートヴィレッジ

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《点と線から面へ》著:ヴァシリー・カンディンスキー(1866~1944)/1926バウハウス叢書『Punkt und Linie zu Flache』

芸術にも科学を―。20世紀はじめに“抽象絵画”の概念をいち早く提唱し、絵画作品の新局面を切り開いたカンディンスキーが試みたのは、絵画の構成要素を徹底的に分析し、理論的・科学的に吟味することだった。点や線がもつ本源的な力を把握すること。そうしてこそ、それらが平面の上に置かれたときに相互に共鳴し合い、生きた作品としての“コンポジション”が実現するのだ。絵画にとどまらず、さまざまな造形芸術に大きな影響を与えた古典的名著。

 

《点線面》著:隈研吾/2020岩波書店

https://www.iwanami.co.jp/book/b496850.html

国立競技場の外壁は全国の杉の板で覆われた。今、私たちの目の前にあるのは小さな点や線である――。建築家は風通しのよい物のあり方を求め続けて、木や石、そして土などさまざまな物質との会話を繰り返し、ついに新しい世界の扉を開いた。未来を考えるすべての人のための方法序説。待望の書き下ろし。図版200点収載。

★トビゲラの幼虫は、小さな点のような身近な素材を集めて巣を作る。この虫をまねて、身体のような建築を作れないだろうか。あるいは、日本の伝統木造建築が磨いてきた、細く、移動する線を、今再び取り戻すことはできないだろうか。そして、砂漠では一枚の布が、テント暮らしを続けるベドウィン達の生命を守っていたように、面の持つしなやかな力を活かせないだろうか。著者は建築に眠る可能性を磨き上げながら、日夜、木や石などの物質との対話を繰り返してきた。新しい物理学は、大きな物に小ささを、小さな物に大きさを発見しようとするが、物質も人間も時間の中を漂う粒子であるとする世界観こそが、ヴォリュームを解体する方法を成熟させ、建築の未来を開く。(隈研吾)

 

https://realsound.jp/book/2020/05/post-551281.html

《参考》「隈研吾建築都市設計事務所」News letter#28より

https://kkaa.co.jp/

2つの本を書下ろしで書いた。国立競技場の設計に携わっていた、忙しい時期に、よく2冊も本を書く時間を見付けられたものだと自分でも感心するが、この時期だからこそ、本を書くことができたのだということもできる。すなわち「新国立」といういままでの人生で味わったことがないようなプレッシャーが、僕の背中を押して、この2冊を書かせたのである。「新国立」という事件が人生で起きなければ、この2冊の本は生まれなかったであろう。

1冊は岩波書店から出る★『点・線・面』である。自分の建築的方法が前の世代の建築家達と、そしてさらにその前のモダニズムの建築家達とどう異なるかを、徹底的に総括しようと考え、僕の方法を『点・線・面』の方法、すなわち粒子の方法と呼んでみたわけである。『点・線・面』はの中心的人物でもあったロシアの画家★ワシリー・カンディンスキーの著作と同名で、実は僕はこの本を高校時代に読んで衝撃を受け、そのままずっと座右に置いていた。僕流の『点・線・面』を書いていてもっとも興奮したのは、量子力学以降の現代物理学と僕の方法の平行関係について思考した時である。コルビュジェ等のモダニスト達はアインシュタインと自分達をパラレルだと考えていたが、モダニズムの基本はニュートンの静力学であるように僕には見える。空間の中を方程式に従って物が運動するニュートンを古典力学が第一段階。時間と空間を接続したが、依然として法則(方程式)というものの存在は否定しなかった第二段階。対象とする世界の超拡大、超縮小に伴い、そのすべてを貫通して支配する法則の存在自体と否定し、すなわち物理学という学問自体を否定したような量子力学以降の物理学が第三段階。このような三段階説で、この世界の現状がかなりリアルに見えてきたし、僕という建築家の方法と、この量子力学以降の方法の平行関係が見えてきて、興奮した。最新の量子力学については、恩師・原広司が絶賛する大栗博司の一連の本から多くを教わった。

 

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00054.html

前回の東京オリンピックのとき、隈先生は小学4年生でした。競泳種目で4つの金メダルを獲得した18歳のドン・ショランダー選手の勇姿をテレビで観て感激したという隈少年。大会後、建築好きのお父さんに連れられ、競泳会場だった代々木競技場第一体育館のプールによく泳ぎに行ったそうです。「外観の迫力が圧倒的で、子どもながらに度肝を抜かれました。中にあるプールでは、高い天井の窓から差し込む光が水面に反射してキラキラ輝いていて。自分もこんな建物を作ってみたいと思いました。建築家を志したのはそこからです」2本の主柱をワイヤーでつないで大屋根を吊り下げるという、世界的にも珍しい吊り屋根構造の体育館を設計したのは、★丹下健三先生。後に「世界のタンゲ」となる東大建築学科の大先輩が仕込んだ、強度と美しさが融合したアーチは、時を経て後輩が設計に携わった新しい競技場にも取り入れられています。「スタンド全体を覆う円形の大屋根は、中央部に行くにつれて盛り上げています。外縁と高低差をつけることで、柱がなくても十分な強度を持つ屋根になりました。丹下先生のアーチを自分なりに踏まえたつもりです」

 

《東京オリンピック2020》

https://olympics.com/tokyo-2020/ja/

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開会式および閉会式コンセプト

人類が新型コロナウイルスというかつてない困難に向き合う中で、開催される東京2020大会。どんなに遠い場所で起きたこともつながっていて、私たちは誰もが無関係ではいられない。そのことを世界中が実感する日々でもありました。そしてそれは、国を超えて情報と知恵を分かち合い、助け合える方法を模索し続ける日々でもありました。そのような状況で開催されるこの大会だからこそ、スポーツの力で世界中をつなげ、未来に向かって希望を生み出す場にしていきたい。前を向いて生きるエネルギーを、一人ひとりに届ける時間にしたい。今までの常識を変えて、よりよい当たり前をみんなで作っていくチャンスにしたい。そして、脅威に対する世界の連携、さらに大会の実現が、たくさんの人々の計り知れない献身と努力に支えられていることに深く感謝し、あらためて称賛と尊敬の意を大会を通して伝えていきます。

2021年7月23日/20:00 ~ 22:30/会場:オリンピックスタジアム

世界中の人々がコロナウイルスという脅威の中で日々を過ごし、これまでの大会とは明らかに違う環境で迎える東京2020大会。私たちは年齢、国籍、立場など様々な違いを持つ上に、今は同じ場所にいることも難しい状況にあります。だからこそ、アスリートによってこれから繰り広げられる数々の挑戦を通じて、喜びや悔しさを共に感じる瞬間を届けていきたい。そう、どんなに離れていても、言葉や文化が違っても、スポーツには世界中の人々を感動でつなぐ力があると信じています。それは私たち人類が普遍的に共有している、かけがえのない財産です。あらためて「スポーツの役割」「オリンピックの価値」に気づき、これまでの日々を共に進んできた世界中の人々への感謝と称賛や、未来への希望を感じることができる時間をセレモニーでは目指します。人類は多種多様な違いを活かしながら、共感を通じて連帯し、助け合って生きていくことができる。そう感じてもらえる体験になることを願って。

 

・・・これでもかって言うくらい苦難の道を歩んできた「東京オリンピック2020」が、まもなく始まろうとしている。これ以上の不幸が重ならなければいいのだが、本当に祈る思いだ。