最後の写実 | すくらんぶるアートヴィレッジ

すくらんぶるアートヴィレッジ

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

・・・「写経」を貼りこんだ作品を作り始め、母が「米寿」を迎えた春、縁あって「造形作家」として本格始動することになった。個展会場(ギャラリーいろはに)のメインになる作品を模索していた時、友人から「写実表現」をという要望があった。今さらという感はあったが、米寿の祝いとして「母の肖像」を描いてみることにした。

 

・・・母にもう一度絵を描いてもらいたいと願い、多くの展覧会に出かけた。大切にしている写真、「久保惣記念美術館」で宮本武蔵の「枯木鳴鵙図」を見せたくて訪問した際のスナップである。

 

《和泉市久保惣記念美術館》

594-1156和泉市内田町三丁目6番12号/0725-54-0001

http://www.ikm-art.jp/index.html

★「枯木鳴鵙図」画:宮本武蔵

http://www.ikm-art.jp/degitalmuseum/num/001/0010141000.html

武芸者 宮本武蔵(1584~1643)は、墨画を善くし、二天の号をもって知られる。その画技は減筆体を特徴とし、同様の作風を示す海北派や長谷川派との関連も考えられるが、特定の師や作画時期については詳らかではない。身動ぎもせずに鋭く目を据える鵙と枝をゆっくり這い上る★虫。すくとして残る枯れ枝と微風に揺らぐ低木。それぞれは静と動の対比において捉えられるが、次の瞬間に虫を待ち受ける運命を予測するとき、均衡が破られる前の張り詰めた空気さえ感じさせる。形態把握の的確さや描写の迫真性からは、天賦の才ばかりか修練によって培われたするどい観察力、洞察力に基づいたゆたかな筆力を想起させずにはおかない。自らの兵法の要諦を説いた『五輪書(ごりんのしょ)』のなかで、書画などの諸芸にかかわることも兵法を鍛練する手段であると述べており、その作画に武を極めようとする真摯な気魄が反映されているとみられる点で、画業をもっぱらとする画人とは性格を異にする。

 

《参考》名画「枯木鳴鵙図」を模写して見えた宮本武蔵の人間性/文:砥上裕將(水墨画家)

https://kanmontime.com/blog/tomita/kobokumeigekizu/

 

・・・何の予備知識もなく、「虫」を発見し作品に魅入る母に、私の方が感銘を受けた。すべてを鑑賞し、多少疲れた様子でゆったりとソファにもたれる姿。これしかない、ただどう描くのか、描いてみないとわからない。

 

 

・・・母の頭髪を「写経」のコラージュで表現するなど、「写実」ではガマンできない、皮肉にもあらためて確認することになった。

・・・以来、使用しているカタカナ名は、母がデイサービスにお世話になり、すべての衣服に名前を書く際、マジックではカタカナが書きやすく、自分も連れもってカタカナ名を使用することにした。

 

・・・さらに名刺への表記は、母の写経を用いたカタカナ名です。そして今、卒寿(90歳)を超え「写経」することもできない母の世話と、造形制作の二本柱です。