・・・こういう「問題提起」があったことを知りませんでした。
《NEWS》2020.6.28美術手帖より
「美術館女子」、批判受け公開終了。読売と美連協「改めて検討」
読売新聞オンラインと★美術館連絡協議会(以下、美連協)が公開し、様々な批判が噴出した「美術館女子」のウェブサイト。その公開が終了した。同サイトをめぐっては、★「ジェンダーバランス」の公平性や美術館を★「映え」の道具として使っている点などに対して批判が噴出(論点整理はこちら )。読売新聞グループ本社と美術館連絡協議会事務局は6月15日、連名で「今後のことについては、様々なご意見、ご指摘を重く受け止めて、改めて検討する方針です」としていた。公開終了となったウェブサイトには、「本ページは公開を終了しました。次回以降の連載については、さまざまなご意見、ご指摘を重く受け止めて、改めて検討していきます」との文言だけが記載されている。また美連協ウェブサイトの「新着情報」からも、「美術館女子」は削除されている。なお「美術館女子」の企画意図について、読売新聞と美連協は6月15日時点で次のように回答している。「地域に根ざした公立美術館の隠れた魅力やアートに触れる楽しさを再発見していくことを目的として、読売新聞社と美術館連絡協議会が始めたものです。新型コロナウイルスの影響で国内の美術館が一時休館を余儀なくされましたが、アート作品だけでなく、建物を含めた美術館の多様な楽しみ方を提示し、多くの方に美術館へ足を運ぶきっかけにしていただきたいと考えました」。
《美術館連絡協議会》事務局:読売新聞東京本社事業局内
近年、地方公共団体による美術館開設が相次いでいるが、これらの美術館相互の連絡を密にし、館運営の向上を図るべく、全国から35の公立美術館長が集まり、★1982年12月9日美術館連絡協議会を発足した。同協議会は美術館の今後を左右するのは学芸員職員等の人的力であるとし、館相互の協力により交換展、共同企画展、巡回展等を活発にすると共に、学芸員の海外研修を実施して、国内にとどまらず、より広い情報を求めようとするものである。理事長には河北倫明が互選された。地方文化の向上と、地方間文化交流の活性化という点で注目される。
《参考》「全国美術館会議」/会長:建畠晢(埼玉県立近代美術館長)
美術館は、美術作品やそれに関わる資料・情報を集め、保存し、研究し、公開しながら、未来の世代に伝えていくという使命をもっています。また、コレクションの展示や特別展、教育普及活動をはじめとする様々な営みを通じて、地域社会と連携し、市民と交流しながら文化創造の拠点となる役割も担っています。一般社団法人全国美術館会議は、このような美術館の使命の実現を支え、その活動を社会的にしっかり根付かせるため、総会、総会記念フォーラム、講演会、学芸員研修会、研究部会等を毎年開催し、その成果を会員館や広く美術関係者、また、一般の方々と共有しようと考えています。日本の美術館がともに考え、ともに行動することをめざして、★1952 (昭和27)年に設立された当会議は、2020年4月1日をもって一般社団法人に設立登記し、現在、正会員:391館(国立10館、公立249館、私立132館)、個人会員:20名、賛助会員:51団体で構成されています(2020年4月1日現在)。(第68回総会/札幌市:令和元年5月22日)
《参考》「ジェンダー★バランス」/「アジア・欧州対話:ジェンダーをめぐる課題」タンペレ会議(2002年)より
ムサ・ビン・ヒタム氏(マレーシア前副首相)は、「適正な」ジェンダー・バランスとは何か、という問いを提起した。同氏は、それは単に★数の問題ではないとし、良いガバナンスとは平等と人権であることを★男性が納得しなければならないと強調している。ジェンダー不平等を含めた人権問題に取り組み、しかるべき変革がなされるためには、伝統と文化に拠って立つ指導者の意識を取り除かなくてはならないのである。では、そうした意識を変えるにはどうすればよいのか。我々は、参加者のエネルギーやその人脈を活かすことができる。この会議の成果のひとつは、各人がそれぞれの活動の場において行動を起こし、支援体制の確立に向けて努力するように、参加者全員の意欲をかき立てたことである。指摘されているように、提案の多くは既に実行されているが、すべての地域で実施されているわけではなく、一貫しているわけでもない。まずは我々のもつ豊かさを認識したうえで、価値を付加することをめざすべきである。
《参考》「インスタ★映え」が食品ロスを増やす…残念すぎる事実が実証された/2019.11.15廃棄物資源循環学会研究発表会講演集2018年 29 巻 A8-1より
食べる以外の目的で食品が購入され、廃棄されて問題になった例に、1980年代のビックリマンチョコがある。おまけのシールが爆発的な人気となり、★シールだけを抜き取りチョコを捨てるなどの現象が起き社会問題になった。この件は製造事業者が公正取引委員会の指導を受け収束したが、SNS掲載目的の食べ残しは社会全体の課題として取り組む必要がある。世界では、約8億人の人々が栄養不足状態にあるが、★日本の食品ロスだけで全世界の食料援助量(約320万トン)の約2倍にのぼる。そして、国際連合食料農業機関(FAO)によれば、世界では、農業生産から消費までの全ての段階で、食料生産量の3分の1にあたる約13億トンが毎年廃棄されており、特に先進国ではかなりの割合が消費段階で無駄にされている。そこで、国連では、2015年9月に策定した★「持続可能な開発目標」(SDGs)の中で、「2030年までに小売・消費レベルおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減」させるという目標を設定している。食品ロスの発生は単にごみが増えるという問題にとどまらない。食料の生産のための農地は★森林等が切り開かれたものであるし、ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されたように、大量の漁獲は海洋資源を圧迫する。食料の生産から流通・廃棄のあらゆる段階で大量のエネルギーを消費しており、★その無駄は地球温暖化を加速する。なにより「命をいただいている」という★感謝の気持ちと、捨てることは★もったいないという意識の醸成が必要である。おりしも、「食品ロスの削減の推進に関する法律」が制定されたが、大量の食料を輸入し、食料の多くを輸入に依存している我が国として、真摯に取り組むべき課題であることを認識して行動する必要がある。
・・・今回の問題提起は、これまで気になっていた(違和感)様々な出来事にも通じており、この機会にキチンと考えてみたいと思います。
◆「美術館女子」は何が問題だったのか。「美術界のジェンダー格差を強化」「無知な観客の役割を女性に」
美術館連絡協議会と読売新聞オンラインが企画したウェブサイト「美術館女子」がSNS上で大きな批判に晒されている。この企画の問題点を、有識者のコメントとともに分析する。美術館連絡協議会(以下、美連協)と読売新聞オンラインによる新企画「美術館女子」が、開始早々SNS上で大きな批判に晒されている。本企画は、「読売新聞で『月刊チーム8』を連載中のAKB48 チーム8のメンバーが各地の美術館を訪れ、写真を通じて、アートの力を発信していく」(公式サイトより)というもの。その第1弾では、小栗有以(AKB48)が東京都現代美術館を訪れる様子を画像メインで伝えている。この企画に対し、6月12日の公開後の週末、SNS上では批判の声が相次いだ。指摘されている主な問題は、★「〇〇女子」という言葉に含まれるジェンダーバランスへの意識の欠如と、美術館がいわゆる「映え」のみの場所としてとらえられかねない見せ方をした点にある。
◆違うやり方できたはず
美術手帖で「統計データから見る日本美術界のジェンダーアンバランス」を執筆した社会学者の竹田恵子は、美術館の楽しみ方は多様であることが前提としつつ、「『美術館女子』企画は、ほとんどの女性が美術のなかで★『描かれる側/視られる側』=客体化されてきたという議論を無視しているかのように、女性観客をも客体化したつくりになっている」と指摘。さらに、以下のように続ける。「美術界自体は女性のほうが多い業界であるにも関わらず、女性は低い地位にある傾向が強い。★『~女子』という言葉は基本的に男性主体の文化に女性が参入する場合、有徴化するための言葉です。ゆえに当該企画は美術界のジェンダー格差を強化していると考えます。女性(観客)の主体性を無視し、『無知』の側に(のみ)置いていることも問題です。美術館に普段来ない層を呼び込むためならば、これらの構造的・歴史的背景を勘案していれば、もっと違うやり方ができたはずだと思います。ぜひ事前に、ジェンダーの専門家に聞いていただければ、違ったアプローチをご提案できたのになあ、と残念です」。
◆旧態依然のジェンダー意識
キュレーターとしてジェンダーの問題に多角的に取り組んできた小勝禮子は、「今回の『美術館女子』は読売新聞社の企画を、美術館関連ということで美連協も関わることになったのだろう、美連協には気の毒なところもある」としながら、「企画者側の★おじさん目線から考えられているため、残念ながらアウトな部分しかありません」と批判する。「アイドルの可愛さ、魅力が中心で、美術館やアートは★ただの背景に過ぎない。そこには、美術館という空間やそこにある美術作品との出会いによる新たな発見や、美術を観る者の感動や思索が、まったく伝わってきません。『アートの力』の発信が視覚化されていないのです」。ジェンダー意識についても、男性的な固定概念が現れているという。「『作品』としての小栗有以、という言葉が(サイト内で)流れていましたが、それは★彼女を被写体として撮るカメラマン目線からの台詞でしょう。ここには、あくまで女性を創造の主体(芸術家)ではなく、撮影の対象としてみる★旧態依然のジェンダー意識しかないのです。『映える写真』を撮られることが『女性目線』であるとされていて、女性の興味関心は『自分を映え』させること、見た目(外見)の美しさだけに向けられているかのような、女性の内面(知性や専門性)に思い及ばない、★男性の企画者の固定概念による『目線』が如実に現れているとしか言いようがありません。ここにアートや美術館が介在する意味が、まったく考えられていないのです。私はいま、女子大で博物館学を教えていますが、学芸員資格の取得をめざす学生たちがこの特集を見てどう思うでしょうか?自分たちをバカにしないでと反発し、『女子』に対する社会(新聞社)の認識の低さに悲しくなるのではないでしょうか?」
◆無知な観客の役割を女性に担わせている
東京大学教授で同大芸術創造連携研究機構副機構長を務める加治屋健司は、「美術作品を見るのに知識は必要ではなく感動があればよいと、★作品に対する理解を軽視している点が問題だと思います」と語る。「美術館を『映えスポット』と呼んで、作品を鑑賞する場所である美術館を、インスタグラムなどの撮影場所のようにとらえているところも非常によくないと思います。こんなふうに館内各所で撮影したら、他の来場者の作品鑑賞の妨げになってしまうのではないでしょうか。さらに、★無知な観客の役割を女性に担わせているところも、ジェンダー公正の点で大きな問題だと考えています。まさに、このような無理解や不公正を問題にして批判してきたのが近年の美術であることを考えれば、大きな問題がある企画だったと思います」。
◆美連協・読売新聞は「改めて検討」
今回の企画に携わった美連協は、読売新聞と日本テレビの呼びかけによって、1982年12月に設立された組織。いまも事務局は読売新聞東京本社のなかに位置している。美連協は全国の公立美術館の連携を図る組織として運営されており、展覧会の共同企画や巡回展開催、あるいは美連協大賞の授与など、様々な側面で公立美術館を支えてきた実績がある。現在は47都道府県の公立美術館約150館が加盟する一大ネットワークだ。美連協に対しては、今回の企画意図やタイトルに込めた意味などを問い合わせたところ、読売新聞グループ本社と美術館連絡協議会事務局の連名で、次の通りの回答があった。全文を掲載する。
「本企画は、地域に根ざした公立美術館の隠れた魅力やアートに触れる楽しさ を再発見していくことを目的として、読売新聞社と美術館連絡協議会が始めたものです。新型コロナウイルスの影響で国内の美術館が一時休館を余儀なくされましたが、アート作品だけでなく、建物を含めた美術館の多様な楽しみ方を提示し、多くの方に美術館へ足を運ぶきっかけにしていただきたいと考えました。今後のことについては、様々なご意見、ご指摘を重く受け止めて、改めて検討する方針です」。
◆美術館のジェンダーアンバランス
美術館のジェンダーバランスをめぐっては、世界各国でも議論がなされているが、ここ日本でもそのバランスが取れているとは言い難い。美術手帖が2019年に行った調査では、東京都現代美術館、東京都写真美術館、国立国際美術館、東京国立近代美術館の収蔵作品の男女比(2019年1月時点)では、男性作家による作品が78パーセントから88パーセントを占めていることが判明した。また、職員について全国美術館55館(国公立、私立、独立行政法人すべて含む)における館長、学芸員、総務課職員の男女比を分析したところ、★学芸員は女性比率が74パーセントとかなり大きいのに対し、★館長職では男性比率が84パーセントと、比率が逆転している。
《参考》公立小中学校における管理職登用の男女格差/独立行政法人国立女性教育会館研究国際室 研究員・飯島絵理
・・・男女比率のアンバランスは、「美術館」だけの問題ではありません。日本の社会全体で考えなければならない問題だと、認識しています。そういう意味からも「〇〇女子」や「〇〇映え」の問題も考えていくべきだと思っています。