★日本しか使わない「ノーサイド」/スポーツの言葉考(6)時事通信社より
その精神は世界共通「ノーサイドの笛が鳴った」。ラグビーの記事で、試合終了時を表現する時によく使われ、テレビの実況でも耳にする。ラグビーを愛する人たちにとって、この言葉は特別だ。日本ラグビー協会広報の富岡英輔さんは「幼い時に見たテレビドラマ★『青春とはなんだ』(1965~66)でノーサイド精神を学び、その時から大好きな言葉の一つです」と熱く語る。
※東宝制作、テアトル・プロ共同制作で日本テレビ系で放送された★夏木陽介と藤山陽子主演の学園ドラマ。原作は★石原慎太郎の同名小説で、当初は2クール26話の予定で放送されていたが、好評で1年間の放送になった。よって原作から離れたオリジナル・ストーリーになったため第27話からそれまでの「原作・石原慎太郎」から「原案・石原慎太郎」というクレジット表記に変更された。
本作が始まる3ヶ月前に日活によって★映画化(1965年7月14日公開)。野々村健介役は★石原裕次郎だった。その後、番組の終了直後に本作と同じ東宝によっても、劇場版が『これが青春だ!』(1966年)のタイトルで製作、公開された。これは『でっかい太陽』、『燃えろ!太陽』(1967年)とシリーズ化された。
海外では、「ノーサイド」と言ってもラグビー用語として知っている人はほとんどいないだろう。国際試合での試合終了は「フルタイム」が共通語で、日本の国際審判員もこれに準ずる。かつて日本を指揮した現イングランド代表監督のエディー・ジョーンズ氏も、来日時は知らなかった。もともとは、かつてイングランドで使われていた専門用語で、試合終了以外の意味はなかったようだが、日本に伝わって解釈が加わった。★「試合が終われば、敵味方関係なく、お互いを尊重し、たたえる」。ノーサイドの精神と言われるものだ。どういういきさつでこうなったのか定かではないが、日本の美徳とマッチしたのか。★松任谷由実の楽曲やドラマのタイトルでも用いられ、日常生活でも使われるようになった。解釈も根付き方も日本特有だが、精神はラグビー文化として世界に古くから根付いている。大成功だった2019年W杯。★日本中が歓喜に沸いたスコットランド戦の試合後、リーチマイケル主将は相手ロッカーを訪ね、日本選手と激しくやり合ったジェイミー・リッチーに日本刀(模造)を直接手渡した。相手に敬意を表しての行動に、リッチーはSNSを通じて日本代表へメッセージを送った。「試合では全力で相手に立ち向かったが、★笛が鳴れば、そこには尊敬しかない」まさにこの試合は「ノーサイドの笛が鳴った」と表現するのにふさわしかったと思う。
《ノーサイド》(no side)Wikiより
ラグビー(特にラグビーユニオン)において、試合終了のことをさす★古い英語表現で、日本においては現在でも使用されている(現在の英語圏では no side という表現は一般的ではなく、代わりに full time が用いられている。ワールドラグビーは「ラグビーではかつて審判が試合終了を宣言するために「no side」と叫んでいたが、ノーサイドという表現は日本で生き残り、試合終了のホイッスルが鳴れば全員がお互いの違いをわきに置くという意味になった」、またスポーツマーケティングに関わる海老塚修は「No sideの由来は『試合が終了したら、どちらのチーム(サイド)という区別なく、同じ仲間である』という精神に基づいていると聞いたことがある」と述べた。
◆ラグビーで多発?スポーツ界の「和製英語」問題/文:箱田勝良/東洋経済オンラインより
https://toyokeizai.net/articles/-/292684?display=b
ラグビーではプレーヤーがコートで自分のいる位置よりも前方にボールを投げると反則となります。ラグビーをよく知らない方は、もし試合を見ることがあったらプレーヤーがボールをパスするときに、横や後方にしか投げないのを確認してみてください。もしも前方にパスを出してしまうと★「スロー・フォワード(Throw forward)」という反則を取られてしまいます。ボールを意図的に前方に投げたわけではなく、落とすだけでも反則となってしまいます。こちらは★「ノック・オン(Knock on)」と呼ばれています。この2つの反則のうち、実はThrow forwardのほうが和製英語で、Knock onは英語でも同じ表現を使います。
× Throw forward → ○ Forward pass(スロー・フォワード)
○ Knock on(ノック・オン)
スロー・フォワードは、英語ではForward passと言い、直訳すると「前方へのパス」という意味です。もしも英語でレフリーがThrow forward! とコールをすると「前に投げなさい!」と、真逆のことを指示しているように聞こえてしまいそうですね。
ノック・オン(Knock on)は英語ではLost forwardと言うこともあります。knockは「たたく」「当たる」という意味で、onはonward(前方へ)という意味ですので、「前にはじく」という感じの意味でしょう。Lost forwardは「前方に落とした」という感じに聞こえます。ノック・オンは、パスを受け取るときにうっかりしてしまうことがありますので、プレーヤーは体を前方ではなく、横に向けてパスを受けることもあるそうです。そうすれば、万が一ボールを落としても前方にいかず、ノック・オンになる可能性が低くなるらしいですね。
スロー・フォワードのほかにも、日本で使われている表現と英語の表現が異なるものがあります。
ラグビーでは「ボールを持っているプレーヤーは、タックルをされて倒れてしまったときには、ボールを離さなければいけない」というルールがあるのですが、これを破ると★「ノット・リリース・ザ・ボール」という反則を取られます。英語で書くとNot release the ballで、「ボールを離さない」というのをそのまま英語にした感じですね。
でもこの反則が起きたとき、実際に英語ではRelease the ball(ボールを離しなさい)とコールされます。Not release the ball!と言うと、Don’t release the ball(ボールを離してはいけません)みたいに聞こえなくもないですよね。先ほどのThrow forwardと同様に反対の意味になってしまいそうです。和製英語では、プレーヤーが行なっている行為を英語にしているのだと思われますが、これが命令形のように聞こえてしまうと「その反則をしなさい」という意味になってしまうのが厄介ですね。
「ノット・リリース・ザ・ボール」は
Holding on(ノット・リリース・ザ・ボール)Held on(ノット・リリース・ザ・ボール)
とコールされることもあります。これは「(ボールを)持ったままの状態です」、「(ボールを)持ったままの状態でした」という意味です。日本語でもこちらをカタカナにして使用したらよかったのですけれどね……。あ、でもHold on!と命令形になってしまうと、「(ボールを)持ったままでいなさい!」となってしまうので、同じことですね。
ラグビーにかかわらず、日本ではいろいろなスポーツにおいて和製英語が使われているようで、それらを問題視する声を耳にすることがあります。これについて、皆さんはどう思われますか。やはり、日本でも正しい英語表現を使うべきだと思いますか。それとも、和製英語のままでも別に構わないと思いますか。さまざまなスポーツで、和製英語が使われるようになったのにはそれぞれの事情があるのでしょう。そもそも、それらのスポーツが日本で始まったときや、用語が外来語に変更されたときに、どのような事情があれ、正しい英語表現が導入されていればこのような問題にはなっていなかったはず。でも、たとえそれらの用語が英語としては間違っているとしても、日本語の外来語としては受け入れて、使用し続けていいのではないかと基本的には思います。由来は英語でも、★日本でできた新語なのであれば、日本語としては「間違っている」とか「おかしい」とかいう問題ではないと感じます。ただ、気をつけたいのが、★「それらの表現を英語だと勘違いしてしまうこと」です。
とくにスポーツでは、プロや一流のアスリートであればなおさら、国際大会などで外国のアスリートと競技や試合をする機会が多くなります。レフリーも英語を使用する中で、その表現が理解できないというのは圧倒的に不利になってしまいます。その不安や混乱から、メンタルに影響して、思うように力を発揮できないかもしれません。相手の言うことがわからないだけでなく、自分が和製英語でコミュニケーションを取ろうとして、相手に通じないというのも避けたい状況です。そういった意味では、未来の日本人アスリートのことも考えると、スポーツに関してはどこかの段階で英語の表現に合わせていくというのは悪い考えではないと思います。これまでに使い慣れた表現を変更するというのは、かなりエネルギーのいることでしょうから、なかなか難しい問題ですが……。
ラグビーの試合終了には「ノー・サイド」という表現が使われます。「ノー・サイド」と聞くと、ユーミンの歌を思い出すのは筆者の世代のせいでしょうか。歌になっているくらいですから、皆さんもこの表現は聞いたことがあると思います。でも、英語ではラグビーの試合終了はFull timeと言います。× No side → ○ Full time(ノー・サイド)
No sideの由来は「試合が終了したら、どちらのチーム(サイド)という区別なく、同じ仲間である」という精神に基づいていると聞いたことがあります。しかも、ほぼ日本でしか使用されていないようで、「ノー・サイドは和製英語だ!」と言われることもあります。でも、ちょっと調べてみたら、実はこれ英語表現としても正しいようですよ。アメリカの有名なスポーツ専門チャンネルでESPNというのがあるのですが、イギリスにもESPNが存在します。アメリカではラグビーはそれほど人気がありませんが、イギリスではラグビーが盛んですので、イギリスのESPNのウェブサイトを見てみました。すると、この「ノー・サイド」の説明が載っていました。一緒に見てみましょう。
No side/Antiquated term used to describe the end of the match. Superseded by full time.
ノー・サイド/試合の終了を意味する古い言い方。フルタイムと言い換えられている。
つまり、現在は使われていないようですが、もともとは英語だったということですよね。「和製英語だ!」と騒いだり、「間違っている!」と指摘をしたりするのは、ちょっとオーバーリアクションでしょう。ここまでラグビーにおける「和製英語」を取り上げてきました。やはり「よくないもの」と感じてしまう方も多いのではないかと思いますが、これは私たち日本人が、★英語が苦手なことにコンプレックスを感じる傾向があるという背景もあるかもしれませんね。英会話教師らしからぬ発言かもしれませんが、日本国内では、(英語ではなく、あくまでも日本語であるとわかったうえで)堂々と和製英語を使い、国際舞台に出たときには、さっと★スイッチを切り替えて、スマートに英語の表現を使うことができるのがいちばんカッコいいですね。ラグビーをきっかけに、ちょっと和製英語のあり方について考えさせられました。
・・・そのようにカッコよくなりたいけれど、ちょっとムリみたい。コンプレックスのかたまりなんです。とほほ
《参考》「ノーサイド・ゲーム」著:池井戸潤/ダイヤモンド社2019
https://www.tbs.co.jp/noside_game_tbs/
2019年7月期にTBS系でテレビドラマ化された。
・・・「にわかファン」だけど、あの時の感動は忘れない。そして「ノーサイドの精神」も。