《NEWS》2020.5.7ヤフーニュースより
監視、嫌がらせ、吊し上げ――自分の「正義」が暴走する「自粛ポリス」の心理/社会心理学者・碓井真史
緊急事態宣言や外出自粛要請が出るなかで、「自粛ポリス」の存在感が日に日に増している。店舗に貼り紙をする、県外ナンバーの車を監視する、バーベキューの写真を投稿した個人のSNSを晒す、芸能人がSNSに投稿した写真の粗探しをする――。こうした嫌がらせだけでなく、無自覚に行う相互監視も含まれる自粛ポリス。「他罰する快楽」に溺れてしまう人々が後を絶たないのはなぜなのか。緊急事態が私たちの心を蝕み、「ポリス化」する背景を探った。
「ちょっと喉がつっかえてゴホンと言っただけで、『コロナだ! あっちいけ!』となる。県外ナンバーの車も、本当はどこからきているのか確かめる術がないのに、『とにかく危なっかしい奴らは出ていけ』。店の貼り紙も投石も、自粛ポリス的な発想の人たちには『正義』ですから、堂々とやってしまうんです」社会心理学者の碓井真史さんは、「自粛ポリス」とも呼ばれる人々の心理をこう分析する。「生活への不安や欲求不満で、攻撃性が高まるんですね。みんな、★イライラをぶつける相手を探している。それが家族への八つ当たりだったり、県外ナンバー車の監視だったり、お店や役所への文句なんでしょうね。ある意味、私たちの中にある防衛本能でもあるんです。不安が高まれば、★自分を守りたくなる。それが★『よそ者』への攻撃に向かっていくんです」今、日本中に広まりつつあるのは、人それぞれの「正義」だ。非常時に人々がパニック状態になり、よそ者や少数派を攻撃する心理は、SF映画などでもよく描かれてきた。理由を探し出し、独自の正義感から悪に対して鉄槌を振るう。「コロナ禍の現在は、県外ナンバーも、人が集まる商店も、少し咳をしている人も、仲間ではなく敵。『敵は追い出さねばならない、それが正義だ』という発想です。それを受けて、感染した人が『申し訳ない』と謝ってしまう。心に余裕があれば、他人を攻撃する必要はない。病気への不安、経済的な不安から、『他人の行動が許せない』という怒りを増大させていると思います」
【碓井真史】(1959~)
社会心理学者。新潟青陵大学大学院教授。博士(心理学)。日本歯科大学新潟生命歯学部、新潟厚生連佐渡看護学校他の非常勤講師、新潟市スクールカウンセラーを兼任。TeNYテレビ新潟番組審議委員。専門は社会心理学(内発的動機づけ、犯罪心理学、自殺予防など)。
「何でやってるの? 休場にしろよ」(原文ママ)ツイッターで、こんなダイレクトメッセージを送られた弁当店もある。SNSでの誹謗中傷は、毎日止むことはない。すでに多数の裁判事件になっているのだが……。「★人の感情は『比較』なんですよね。相手と自分とどっちが上なのかっていう風に考えると、損してでもいいから相手の収入を減らしてやれ、っていう発想になる。SNSの誹謗中傷も貼り紙行為も違法行為になりかねませんが、リスクを冒してでも相手を貶めたい。当人にとっては正義の鉄槌なんです。正義のためなら、違法なことも許されると思っているんです」公園で遊んでいる子どもたちが、白い目で見られてしまうこともある。「科学的な根拠は特になく、目にした情報を集めて、★自己流のルールを作ってしまう。絶対に私は正しいぞ、と思っている。自分の★気に食わない情報は排除する。自粛ポリスの考え方は、こういうものです。非常時では、★普段隠れている偏見や差別が出てくることもある。でも、これは、ほとんどの人たちにも当てはまる。★パーソナリティーって結局、環境次第なんですよ」芸能人のSNSにも異変が起きている。レジャーや優雅な暮らしぶりが「不謹慎だ」と叩かれるため、写真公開時に「これは緊急事態宣言の前に撮ったものです」といったエクスキューズが見られるようになった。「芸能人は、いわば『反撃してこない隣人』。だから、自粛ポリスの正義からすれば、攻撃しても良い相手ですよね。居酒屋で芸能人の悪口を言っても何の問題もなかった。でも、それをネットの公の場で言うことの意味を自粛ポリスは理解していない。心の奥底にある★攻撃したい思いと、★攻撃できるターゲットがそろった時に、自粛ポリスが発生する。それがこのコロナ禍で、条件が揃ってしまっているのかもしれませんね。そして伝染していくんです」自粛ポリスに近い心理を誰しも抱きうる、とも碓井さんは指摘する。冷静に他者とコミュニケーションを図るには、どうしたらいいのか。「人間の思考回路は、『近道的な思考回路』と『遠回りにゆっくり考える』という2通りだと心理学では考えられています。例えば『ドイツ人は真面目だ』とか『アフリカ系アメリカ人はリズム感がいい』みたいなのが近道な考え方。実際には、真面目じゃないドイツ人も、特に音楽が好きではないアフリカ系アメリカ人もいます。ゆっくり考える思考パターンに戻せば、短絡的な思考を離れて冷静になれる。まずは『心の中のパニックを沈めろ、落ち着け』です。★情報から離れることも一つの手段でしょう」短絡的な行動をする人たちを頭ごなしに責めるのは効果的ではない、と碓井さんは言う。「『なるほど、あなたの考え方はごもっともですね、今はこういう時ですしね。でも、ちょっとゆっくり考えてみたいですね』という★共感的な対応が必要だと思っています」今年のゴールデンウイーク中に放送された「サザエさん」(フジテレビ系)に、家族でレジャーに出かけるシーンがあった。それが「不謹慎だ」と「炎上」したという一部報道があった。実際には、せいぜい「ボヤ」以下だったのだが、こうした★一部メディアの大袈裟な「炎上」報道が、★本物の炎上を呼ぶ危険性も指摘されている。ネット上の自粛ポリスと、★それに便乗するマスコミ。この構図について、SNSコミュニケーションに精通するブロガーの徳力基彦さんはこう分析する。「テレビの場合は、視聴者が数百万人の単位。そのうちツイートする人が仮に1%だとして、そのうちの1/10がネガティブな投稿をしたら、数千件はネガティブな投稿が出る。メディアからすると、『これはまとめれば炎上に見えなくもない』っていう状況が、実は毎日起こっています。ただ、★それを炎上と呼んでいたらキリがない。マスメディアの世の中の取り上げ方もポイントです。★発信をしている人間のレベルアップが求められていると思うんです」出来事を伝えようとするとき、どうしても伝える人のバイアスがかかる。ネットを素材に、賛否両論の出来事を都合よく加工しやすい時代になっている、と徳力さんは言う。「毎日ネガティブなニュースの爆撃を受け続けていたら、どんなに精神的に健全な人でも、やっぱりメンタルがやられると思うんですよ。特にコロナ禍の現在、たいして炎上していないのに★『炎上』と書くのは、今はやめませんか、と言いたいですね」背景には、日本でのメディアリテラシー教育の遅れがある、と徳力さんは指摘する。★「メディアリテラシー教育では、『メディアの報道は間違う可能性がある』という前提を基本とします。ただ、日本はメディアが正しいのが前提になっている人が多く、間違った報道を信じてしまいがち。当然、個人でも間違った情報を発信することがあるわけです。去年、常磐自動車道での煽り運転事件のとき、『犯人と同乗していた』と別の人の名前がネットで書かれてしまったように。★リツイートですら、責任ある行為だと認識しなきゃいけないんです」ついつい、目にした情報を是としてLINEで知人に回してしまったり、ツイッターの情報も気軽にリツイートしてしまうものだ。「『正義感』なんですよね。いい話を聞いたから教えてあげようっていう、その行為自体は正しいと思うんですよ。でも、『情報ウイルス』にも人間は犯されやすくなっているんですよね。情報リテラシーが低いから、デマに感染するとすぐに広めてしまう」★それを防ぐためのリーダーシップを、政治や企業がとるべきだと徳力さんは語る。「自粛ポリスとして活動する★正義感があるなら、その力を本当に困っている人を救うことに使う方法を彼らに提示してあげるべきだと思います。★『何かやりたい』というエネルギーの向け方が何も提示されずに、『Stay Home』だけになっちゃうと、持て余す人がいるのはある意味当然。自粛ポリスのエネルギーをいい方に使えるように、困っている人と自粛ポリス的な人を、インターネットの力でつなげることはできると思います」緊急事態宣言は5月末まで延長され、政府の専門家会議が提示した★「新しい生活様式」という言葉が話題を呼んでいる。今は★新しい常識を作ろうとしている時間なのだ、と碓井さんは言う。「以前は『列は詰めてください』が常識でした。今は★『少し距離をあけましょう』となってきている。でも、★何が正しいマナーなのか、まだみんながよくわかっていない。みんな自分は正しいと思っていますから。でも、★携帯電話のマナーのように、新しい常識が確立されていくはずです。それまでは、まずは★意識できる人たちから、共感的なコミュニケーションを積み重ねていくことが大切だと思います」
・・・啓発ポスターなどを調べてみました。デザインやイラストなどいろいろあって面白い、みんな苦労・工夫しています。
《携帯電話のマナー》docomoより
https://www.nttdocomo.co.jp/info/manner/
気配り上手は、携帯電話上手、あなたのマナーが素敵なコミュニケーションを広げます。
「歩きスマホ」はやめましょう。気配り上手になりましょう。電源をOFFにしておきましょう。運転中の携帯電話の使用はやめましょう。カメラ付き携帯電話利用にあたってのご注意。医用電気機器の近くでのご利用上の注意。
・・・マナーは知ってるけど「守れている」かどうか?が問題ですよね。道路の「制限速度」も知ってるけど「守れていない」という現実、取り締まりや罰金がないと、ついついってことになっていませんか?(自分に言い聞かせています)
《参考》「エチケット」と「マナー」の違い/2014.9.23毎日新聞より
「エチケット」と「マナー」にはいずれも「礼儀作法」という意味があります。「エチケット」には「特定の相手を不快にさせないための気配り」といった意味合いが含まれます。デートの相手を不快にさせないよう振る舞いに気を遣ったり、商談相手に嫌な思いをさせないよう服装をきちんとしたりするのが「エチケット」なのです。「エチケット」はフランス語に由来しており、かつて宮廷を訪れた人たちが、そこで取るべき行動を指示した通用札のことを指していたそうです。 一方の「マナー」には「社会的に望ましいとされる行動や作法」というニュアンスがあります。「交通マナー」「喫煙マナー」「テーブルマナー」「ビジネスマナー」などがあり、いずれも「ルール」というほど厳しくはありませんが、ある程度は知っておきたいものです。「エチケット」も「マナー」も気遣いということですね。いずれにしても、大切なのは周りへの気遣いです。 形を覚えるのではなく、思いやりをもって行動しましょう。「エチケット」は★特定の相手を不快にさせないための気配りのこと、「マナー」は★社会的に望ましいとされる行動や作法のことです。
・・・震災以降「防災用品・備蓄」をするようになりました。今では「手洗い・うがい・マスク」が当たり前になりました。そして、高齢の母がいますので「うつらない」というより「うつさない」ことに重点をおいた生活様式に変わってきました。いつ変わるの?「今でしょ」です。