身をゆだねる | すくらんぶるアートヴィレッジ

すくらんぶるアートヴィレッジ

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

《NEWS》2020.3.11水島宏明/上智大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター

「9年かけて積み上げたものが一瞬に」「あさイチ」でアッキーが語った海洋放出による「風評」の不安

https://news.yahoo.co.jp/byline/mizushimahiroaki/20200311-00167176/

アッキーこと篠山輝信さんが電車やバスを乗り継いで毎年のように被災地を訪れて、「微妙な変化」を体感したままをレポートする名物コーナーだ。前回訪れたときとの違いや出会った人たちの表情の変化を「共感力」が抜群のアッキーが“等身大”の言葉で伝えてくれるので筆者も楽しみにしてきた。この日は多くのテレビ番組で被災地からの中継映像を交えて放送しているが、そこで暮らす人間たちの心境の変化は、たぶんどんな報道特別番組に比べても、この番組のこのコーナーが伝えるに違いないと考えて視聴した。東日本大震災から9年経った今も、岩手、宮城、福島の3県の様子をアッキーは伝え続けている。毎回、旅の出発点にしてきた岩手県の三陸鉄道の久慈駅に行くと、去年の★台風19号で列車が止まったまま。代行バスが動いていた。台風の被害の爪痕を横目に見ながら、宮古市田老などで消防団の男性など、以前取材した人たちを訪ねていくと思わぬ事実を知ることになる。台風による記録的な大雨で川が増水。大量の水が道にあふれ出たとき、津波を防ぐための「防潮堤」が被害を大きくしてしまったという。流れてきたがれきで排水溝がつまり、防潮堤の内側に川の水がたまってしまったのだ。東北の被災地では防潮堤によって、雨水の排水がせき止められて浸水などの被害をうけた地域が各地にあるという。

(アッキー)「皮肉な話ですよね。防潮堤は『波から守るために大事』と一生懸命つくってきたものが、大雨の被害になったときには十分じゃなかった」

(宮古市田老の消防団員のリーダー・田中和七さん)「雨水には弱いんですよ。雨水対策はいちばん重要視しなきゃいけないのに。ここに住んでいる人たちはそういうふうに思っていても都市計画をする人たちは『これで十分』という説明でした」

食堂を営む女性も「震災のときは『みんなで一緒にがんばろう』という感じだったのが、今回(の台風被害)は本当に食堂を止めたくなりました」とアッキーには本音を漏らす。アッキーは報道番組のキャスターたちも取材できないような切実な声を聞き取っていた。かつて取材して信頼関係がある人間同士だからこそ聞ける「本音」を引き出したすぐれた取材だった。お役所仕事の「津波から命を守るため」の「防潮堤」が大雨では住民たちにさらなる被害を及ぼす「皮肉」。(中略)

(アッキー)「(漁師の志賀金三郎さんが)今、大変、不安に思っていることがあるとおっしゃっていました。それが福島第一原発の汚染水です」

東京電力福島第一原子力発電所が溶け落ちた核燃料を水で冷やす作業をしている。その水は汚染されているため、放射性物質を除去しているが、すべてを取り除くことができない。そのため、タンクに入れて貯蔵しているが、その土地が不足するのでは?と懸念されている。そこで専門家たちの話し合いが行われ、処理後の水を基準値以下に薄めた上で「海に流す」案が浮上している。番組はそうナレーションで伝えた。今後は政府が地元や関係者の意見を聞いて、最終的な処分方法を決定するという。福島の漁師・志賀金三郎さんも「不安だ」「想定外の事態が起こるのでは」と将来を案じていた。スタジオに降りると、アッキーは自分が取材した実感を伝えていた。現地の人たちの心情に共感しつつも、立場の違う人たちにも配慮した、バランスが取れたすばらしい言葉だった。

(アッキー)「もちろん、これは大変難しい問題ですけど、この話をするときに金三郎さんがわざわざ船に僕を乗せて沖につれて行ってくださった。僕、沖で話を聞いたときに、金三郎さんの気持ちがちょっとわかったような気がして、当たり前ですけど、海の中って見えないんですね。だから、もしも、まだ決まっていないですけど、処理した水を福島の海に放出して、その後に1匹でも数値の高い魚が出たとしたら・・・。どこでなんでそうなったのかわからない以上、福島の海全体の不安につながって行って、9年かけて積み上げていったものが一瞬にして崩れてしまうんじゃないかと大変不安に思っていらっしゃるんです」

東日本大震災から9年目の311。おそらく数多くのキャスターやアナウンサー、記者、タレントたちが現地から、あるいはスタジオなどから、現地のことを考えた言葉を様々な番組で口にするだろう。だが、震災9年目になってもアッキーが現地の人たちに共感しながら取材して、紡いで出していく確かな言葉の数々はおそらく抜群にすぐれたものだと思う。どうか視聴者のみなさんは今日、そうした★「言葉」に注目していろいろな番組を視聴してほしい。いろいろな人たちの言葉から★「本気」かそうでないのかがわかることだろう。

 

・・・「言葉」から「本気」かどうか?残念ながら、巧みな「言葉」についつい信じて(騙されて)しまうのが常です。

 

《参考》新型コロナウィルス感染をめぐる報道ではどの報道機関がいちばん信頼できるのか?テレビ局であればどの局のどの番組が信頼できるのか?そういう時に「番組を評価する尺度」になるのが「誰を専門家として呼んでいるのか」だ。

NHK「ニュースウォッチ9」押谷仁・東北大学大学院教授(WHOでSARSなどの感染症封じ込めを指揮。政府の基本方針について助言する専門家会議のメンバー)

日本テレビ「news.zero」松本哲哉・国際医療福祉大学主任教授(感染学が専門)

テレビ朝日「報道ステーション」二木芳人・昭和大学医学部特任教授(感染症診療部門の科長も務める日本感染症学会感染症専門医)

TBS「NEWS23」上昌広・医療ガバナンス研究所理事長(都立駒込病院、虎の門病院などで勤務。元東京大学医科学研究所特任教授)

小川キャスターと上理事長とのやりとりは数あるニュース番組の中でも特筆に値するものだった。少なくともNHKや民放含めて他のニュース番組でも、あるいは新聞社でさえもこの問題を深彫りした報道はまだ見ていない。

(小川彩佳キャスター)「それでなかなか試薬が足りないということを言っていた?」

(上昌広理事長)「中国の場合は、スイスの製薬企業が即座に検査に入っていて無償で(試薬を)提供したんですね。それを使ってやっています。だから大量に検査ができた。これを導入せずに自前主義に力を入れたと。ここに問題があると思います。」

(小川彩佳キャスター)「自前主義というのはどうしてそういうことになるのですか?」

(上昌広理事長)「どうしてなんでしょうね? 私は一つは予算の問題と、もう一つは感染者を多く見せたくないんじゃないかというウラがあるような気がします。」

(小川彩佳キャスター)「患者さんにちゃんと向き合おうとすることにはならないわけですよね?」

(上昌広理事長)「そうです。とにかくウィルスの診断はPCRしかできないわけです。で、早く検査して、早く診断して、早く治療しないと手遅れになるんですよ。何人かもう亡くなっておられる。そのためにも検査は必須ですから。とにかく手軽に、誰にでも検査ができる体制にすることが大切です。」

この後で「NEWS23」ではこの日に発表された「政府の基本方針」について、ボードで説明しながら進行した。特にキャスターの小川が「PCR検査について現在は『医師が認めるPCR検査を実施する』だったのが、今後は『入院を要する肺炎患者の確定診断のためのPCR検査に移行』する」と説明してから、「これはどういうことでしょう?」と上理事長にコメントを求めた。その際の上理事長の言葉が衝撃的だった。

(上昌広理事長)「これはもうメチャクチャですね」「なぜかと言いますと、高齢の持病をもった方で亡くなっていますよね?弱い患者さんがわかっている。そういう人には早く診断して、早く治療しないといけない。最近になって、効く薬がわかってきていますよね。どうしてこんなに入院を要する肺炎まで待たなきゃいけないのか。これはもう医療倫理にかかわる問題だと思います。ちょっと私は常識ではありえないと思います。」

(小川彩佳キャスター)「それから(健康)保険が適用されないのかどうかという問題もありますね?」

(上昌広理事長)「そうです。保険が適用されると実はどこのクリニックでも(検査が)できるようになるんです。検査を医者に出せば、われわれ臨床医も非常に楽です。一方、軽い症状の患者さんもわかるんですね。軽い症状の若い人がふだん通り働いて周囲に(ウィルスを)まき散らすわけですから、そういう方々に正確に診断することは本当にとても大切なんですね。」上理事長はこう言った後でスタジオの「政府の基本方針」=(今後は)入院を要する肺炎患者の確定診断のためのPCR検査に移行、というボードを手で示して断言した。

(上昌広理事長)「それがこのルールだとできないです」

一人の医師が自分の問題意識をテレビというメディアで表明した報道だった。かつて起きた戦争でも経済政策でも環境政策でも原発政策でも、私たちが日々メディアを通して得ている情報は、それが専門的な見地から見た場合に正しいものなのかどうか、その時点ではよく分からないことは多い。だからこそ、政府が出した「基本方針」に対しても異を唱える専門家がいるのなら、それを丁寧に報道していく必要がある。政府が緊迫感をもって発表する政策にも疑いをもつことは緊急時のニュースのウラを考えるという意味では大事なことだ。空気を読まない。忖度しない。大勢に流されない。それにはそれなりの★覚悟も求められる。そんな覚悟のある専門家が登場した、覚悟を感じさせる秀逸な報道だった。

 

・・・そんな上昌広さんに対する批判も多い。「PCR検査」の在り方についても、様々な考え方があり、私たち無知なものにとっては何を信じてよいのか右往左往するばかり。ええ加減にしてくれと言いたい。

 

【PCR検査】国立感染症研究所2020.3.11

https://www.niid.go.jp/niid/ja/others/9478-covid19-16.html

新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、本感染症)は1月28日に指定感染症として定められ、患者については、感染を疑われる要件を満たした者に、分離・同定やPCR検査が実施されています。これまで国立感染症研究所(以下、本所)は、地方衛生研究所、大学、研究機関、民間検査所などで広く検査が可能となるように協力をおこなってきました。しかし、本所での活動内容に関する★情報発信が不足しており、そのために市民の皆様に★誤解を招いてしまった部分があると考えています。このことを率直に認めるとともにお詫び申し上げます。こうしたコミュニケーション上の反省を踏まえ、本感染症のPCR検査法に関するこれまでの本所の取り組みについて整理し、紹介するのが本文書の目的です。

 

・・・情けない話ではあるが、結局のところ政府や国の機関が言うことを信じる(★身をゆだねる)しかない。結果がどうであろうと。