《東京新聞・中日新聞「平和の俳句」》
https://www.tokyo-np.co.jp/heiwanohaiku/
戦後70年の2015年1月1日から1日1句を朝刊1面に掲載してきた「平和の俳句」は、2017年12月31日をもって、終了いたしました。平和の俳句は、現代俳句の第一人者の金子兜太さんと作家のいとうせいこうさんが、14年夏に本紙で行った「終戦記念日対談」をきっかけに発案し、お2人を選者として始まりました。17年10月の掲載句からは金子さんに替わり、俳人の黒田杏子(ももこ)さんを選者に迎えました。この3年間の投稿総数は、13万1288句に及び、多くの熱い思い、応援の声に支えていただきました。ありがとうございました。
https://www.tokyo-np.co.jp/heiwanohaiku/2018/
戦後73年、平成最後の2018年夏、「平和の俳句」が復活しました。戦後70年が80年、100年、永遠へと続くように願いを込め、2015年1月1日から3年間、読者の皆さんと続けた「軽やかな平和運動」。復活版の選者は、故金子兜太さん=2月に98歳で死去=とともに「平和の俳句」を提唱し、スタートから選者を務めた作家のいとうせいこうさん(57)、金子さんの後を継いで17 年9 月から選にあたった俳人の黒田杏子(ももこ)さん(80)、テレビ番組でおなじみの俳人★夏井いつきさん(61)の3人です。7349通の投稿から選ばれた計30句と関連する記事を8月15日の朝刊紙面に掲載しました。
【夏井いつきさん選評】心を揺する作品の数々
ただのシュプレヒコールではなく、詩の力で平和を訴えること。それが「平和の俳句」ではないかと考えます。その意味において<一本の鉛筆祈りを孵化(ふか)させる>に強い感動を覚えました。季語はありませんが、<祈りを孵化させる>は美しい詩語。そして<一本の鉛筆>で平和を訴えていこうという凜々(りり)たる意志に満ちています。「平和」という漠然とした言葉に、さまざまな視点で詩を紡ぎ、読者の心を揺する作品の数々。<蟹穴(かにあな)に蟹飛び込んで平穏なり>。蟹のように防空壕(ごう)に飛び込む自分を思う人もいるでしょうし、いま私たちが飛び込める穴はあるのか?と不安を募らせる人もいるでしょう。<平和ってリコーダーならミの音だ>。音階の「ミ」はあたたかい音だと感じる十一歳の少年。この子たちのために、怖い音、淋(さび)しい音に満ちた未来をつくってはいけないと固く固く念じます。
《反戦特集 平和の礎となった俳句》角川俳句No.086/2017年7月25日
https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g301611000173/
【付録】季寄せを兼ねた 俳句手帖〈秋〉
■大特集 感動の焦点を一句に~一物仕立ての俳句~
▼総論 一物仕立ての醍醐味「季語は取合せのグッズではない」仁平 勝
▼一物仕立ての名句70 時候・天文・地理・生活・行事・動物・植物
▼私と一物仕立ての俳句
二ノ宮一雄/山咲一星/山崎千枝子/小島 健/長島衣伊子/山田佳乃
★反戦特集 平和の礎となった俳句
▼巻頭エッセイ 深見けん二/関 悦史
▼平和の礎となった名句88 東日本編/西日本編
▼平和の一句
雨宮抱星/遠山陽子/山田春生/鈴木 明/岩淵喜代子/和田順子/太田土男
■シリーズ連載 宇多喜代子の「今、会いたい人」
「丹波竜のいた時代」
【ゲスト】足立 洌(丹波竜第一発見者・化石採集家)
■創刊65周年記念企画 忘れられない師の一句
■特別企画 「山会~明治から続く写生文の鍛錬会」
稲畑汀子(俳人)/辻原登(作家)/藤沢周(作家)/長谷川櫂(俳人・司会)
■特別作品 有馬朗人・大石悦子・山西雅子
【好評連載】
季語と俳人……大木あまり
俳人の愛した風景(津田清子)……横井理恵
弘美の名句発掘……井上弘美
男のドラマ 女のドラマ……榮 猿丸
俳句旅枕(釜石1)……渡辺誠一郎
埋字で学ぶ五・七・五……岸本尚毅
名言のウラ側(加藤楸邨)……岩井英雅
宇宙歳時記……布施哲治
現代俳句時評……外山一機
今月の気になる季語……内田春菊
《俳壇》 8月号(第34巻第9号)本阿弥書店編集部:2017年7月刊
http://www.honamisyoten.com/bookpages/HAIDAN-201708_180p.html
特集 俳句の力を問い直す〜戦禍・天災を超えて
巻頭評論:宮坂静生
必読資料:筑紫磐井
作品10句:宇多喜代子・金子兜太・岸原清行・長谷川 櫂
エッセイ:関 悦史・深野敦子・星野高士・渡辺誠一郎
巻頭作品10句
特別寄稿『春嵐』の頃—石田波郷論
俳句では季語としては、8月6日★「広島忌」は夏ですが、間に立秋をはさみますので、8月9日★「長崎忌」は秋となります。歳時記によっては、★「原爆忌」としてまとめて、夏または秋のいずれかになっている場合もあります。いずれにしても、8月の灼熱の地獄絵の光景は、終戦直後から現在まで、17字の世界でさまざまに描かれてきました。
●弯曲し火傷し爆心地のマラソン/金子兜太
金子兜太(1919~)さんは、かつて長崎の爆心地の近くに住んでいました。一帯を歩き回り、次々に脳裏に現れた映像イメージをまとめながら字引を引き、この有名な句を完成させたそうです。短歌の作品も紹介しましょう。
原爆とふ死の灰とふ嘆くべき詞消えざらんわが国語辞典に/佐佐木信綱
白い虚空とどまり白き原子雲そのまぼろしにつづく死の町/近藤芳美
幾千の人のすみとほる聖歌のこゑ被爆の壁を祭壇として/木俣修
木俣さんの歌には「長崎浦上天主堂の原爆記念日の夜の弥撤を詠む。」と添えられています。
『原爆句抄』著:松尾あつゆき/編:平田周/装画:小﨑侃/書肆侃侃房2015
http://www.kankanbou.com/books/poetry/haiku/0177gennbakukusyou
手記と俳句から伝わる原爆の生々しい記録。1945年8月9日、長崎で被爆した松尾あつゆきは、最愛の妻と3人の子どもを手の中で次々に失っていった。炎天下で荼毘に付し、たったひとり残された長女みち子の看病をしながら、その日から出来る限り正確に起こった出来事を日記に書き留め、それをもとに200句もの原爆句を書いた。自由律俳句は今読んでも、たった今起こったかのように生々しく、痛々しく、激しい言葉がつぶてのように読む人の心を打つ。NHK BSプレミアムドラマ「だから荒野」で松尾あつゆきの俳句が取り上げられ、人々の共感を呼んでいる。
炎天、子のいまわの水をさがしにゆく
あわれ七ヶ月のいのちの、はなびらのような骨かな
まくらもと子を骨にしてあわれちちがはる
なにもかもなくした手に四まいの爆死証明
今はもうたびびととして長崎の石だたみ秋の日
《原爆忌俳句大会》に日本被団協賞「平和とは語り継ぐこと原爆忌」
第51回目原爆忌全国俳句大会(実行委員長安斎育郎)が2017年9月10日、京都市★「立命館大学平和ミュージアム」で開かれました。今年から日本被団協が後援団体に加わり「日本原水爆被害者団体協議会賞」も創設されました。150人から578句が寄せられ、8月30日の大会前最終実行委員会で大会賞はじめ入賞句を決定。日本被団協賞には、大平順一郎さん(新潟)の「平和とは語り継ぐこと原爆忌」が選ばれました。大会賞は能勢ゆりさん(京都)の「『おはよう』が最後のことば広島忌」でした。入賞者には記念の盾と賞状が贈られました。『被爆の野から-原爆忌全国俳句大会五十年の記録』(原爆忌全国俳句大会実行委員会編)が9月1日発行されました。大会の歴史を振り返りこれまでの入選句、あいさつやメッセージ、大会宣言、記念講演の記録などが収録されています。
https://blog.goo.ne.jp/6216671ct/e/dc6444eeda84c81412780b720bf9e3fb
第17回大会から始まった記念講演は34編が収録され、寿岳章子京都府立大教授、天野和夫立命館大学総長、田畑忍同志社大学学長などの学者・文化人のほか被爆者も名を連ねています。神奈川の土田康さん、東京の藤平典さん、長崎の谷口稜曄さん、静岡の杉山秀夫さんなど亡くなった被爆者の講演もあり、被爆証言集としても貴重なものとなっています。A5版710ページ、頒価5千円。問い合わせ∥〒605-0952京都市東山区今熊野法蔵町64 伊藤方 原爆忌全国俳句大会実行委員会事務局 電話・FAX075-551-3553
《NEWS》2018.2.21信濃毎日新聞より
「檻の俳句館」上田で開館へ 戦時下に弾圧された俳人を顕彰
戦時下に弾圧された俳人を顕彰する「檻(おり)の俳句館」が25日、上田市古安曽に開館する。館主は、「俳句弾圧不忘(ふぼう)の碑」を2017年12月、隣接地に設けた一人で、俳人・比較文学者のマブソン青眼さん(49)=長野市。俳人たちの似顔絵と俳句のパネル、解説を鉄格子を模した"おり"で囲んで展示。言論や表現の自由、平和について問い掛ける。紹介する俳人は、碑に名前と作品が刻まれた17人。入り口正面には「戦争をやめろと叫べない叫びをあげている舞台だ」を詠んだ、小県郡青木村出身の栗林一石路(いっせきろ)(1894~1961)のおりを掲げた。「戦争が廊下の奥に立つてゐた」の渡辺白泉(はくせん)、「大戦起るこの日のために獄をたまわる」の橋本夢道(むどう)らのおりもある。弾圧に関する本を置くほか、暗くして懐中電灯で照らして鑑賞したり、投句できるようにしたりする。俳句館は、弾圧された俳人たちを似顔絵などでより深く知ってもらおうと計画。建物は、「俳句弾圧不忘の碑」の建立に賛同した窪島誠一郎さん(76)=上田市=が館主を務める戦没画学生慰霊美術館★「無言館」の別棟展示室を改修した。
碑のある隣接地には、窪島さんが館主の信濃デッサン館の別館「槐多(かいた)庵」がある。俳句館開館の25日には碑の除幕式も開かれる。窪島さんは「彼らは表現することの死を強いられた。『俳句館』には『無言館』と同じ意義がある」、マブソンさんは、今は言論の自由が狭まっている風潮にあるとし、「私たちこそ、おりの中にいるのではないかと自問してほしい」と話している。入館無料。原則火曜休館。4月以降、マブソンさんと語りながら句会をする「檻の会」も毎月開く(千円)。
・・・「無言館」に行きたいと思って久しいが、「俳句館」もできたので、ますます行きたい。