・・・街アート・ブログ「街の風」で、戸田ギャラリーのことを書きましたが、その歴史たるやとんでもない唐物商です。江戸中期創業、現存★日本最古の茶道具商。いかにも唐物商らしく珍しい三階建土蔵の入り口にはエキゾチックなギリシャ風の渦巻き模様があしらわれている。この谷松屋戸田商店は松平不味公、★平瀬家、藤田男爵家、野村家、湯木家御用の茶道具商で、近年11代目と12代目の当主が対談集を出して古美術界の脚光を集めました。
《美を見抜く眼の力》著:古美術商・戸田鍾之助、戸田博/2004小学館
https://www.shogakukan.co.jp/books/09681661
https://www.shogakukan.co.jp/books/09681663
秘蔵の茶道具の名品の数々を見、その美を見抜く眼の力を語っていただく。江戸時代から続く「谷松屋戸田商店」は、大名茶人松平不昧公出入りという関西屈指の茶道具商です。本書は、その当主戸田鍾之助氏と、ご子息の博氏が茶人垂涎の名品を目前に、美の真髄をやさしく語り明かした古美術問答集です。道具屋が生涯にひとつは持ちたいといわれる名物茶入、茶杓、徳利、趣のある盃や香合など、茶道具の名品百余点をすべてカラーで紹介いたします。 「和」の世界に興味を抱き始めた女性のための月刊総合誌『和楽』に連載され、多くの読者に大評判となった読み物の単行本です。本書が全国に3000はある骨董店にとってのバイブル的な存在になりました。
不昧公はきれい寂びやね―道具が語る松平不昧の目筋
たまらぬものなり―光悦の赤楽「乙御前」を堪能
利口な茶碗やね―名残の設え、呼継茶碗の侘び
亭主七分の楽しみ―客人をもてなす「懐石」の醍醐味
数寄者の執念―名代の料理人、吉兆さんの道具噺
雅なお公家さんの書―日本文化の極み、平安の歌切
楽の妙手なり―長次郎からノンコウへの飛躍
無作為の作為―長次郎の楽茶碗がもつ力
われ長年の苦心の作なり―道具商の宝物「茶箱」
手がさのいい香合―お茶事の格を表す香合の逸品〔ほか〕
【戸田鍾之助】谷松屋一玄庵の十一代目・露慶。1925年、名古屋の茶道具業界の旧家『宇治屋』に生まれる。戦後、谷松屋戸田商店に婿養子に入り、当時廃業寸前だった商売をみごと立て直した。今や、日本有数の目利きの道具商として一目置かれている存在。
【戸田博】19489年、鍾之助氏の長男として大阪に生まれる。3年間のアメリカ留学を経て73年に東京の弥生画廊に入社し修業を重ね、76年に谷松屋戸田商店に入社。現在は同社の代表取締役を務める。現代美術やプリミティブ・アートにも関心を寄せ、広い視野で現代における茶の心を模索している。
《谷松屋戸田ギャラリー》
541-0044大阪市中央区伏見町3-3-10谷松屋戸田商店内/06-6121-6150
元祖「宗慶」から八代目「露吟」
その昔、唐物(輸入品)を取引する唐物商が軒を連ねていた大阪の船場伏見町。戸田家は、江戸時代より続く茶道具商として、この街で店を構え、屋号を谷松屋と称します。元祖、宗慶が没したのは元禄3年(1690)のことです。その子、初代権兵衛浄休以降、当主は代々権兵衛を名乗り、谷松屋権兵衛、略して「谷権」と呼ばれていました。四代権兵衛休芳は、当時の目利きで出雲松平家の御用道具商となり、大名茶人として名高い藩主松平不昧公の信任を得て数多くの名品を納め、文化5年(1808)には、不昧公より「弌玄菴」の庵号を拝領して、自筆の扁額を授かり、今日に守り伝えられています。八代目露吟は、天保14年(1843)に生まれ、明治38年(1905)に没します。明治維新を迎えて、文明開化の風潮と共に茶道など伝統的な芸能は著しく停滞し、道具商も衰退する一方の時代に当主となります。大名家などから多くの名品が市場に放出されますが、なかなか買い手がつきません。露吟は、当時でも茶事が盛んだった金沢に販路を開いたり、関西の茶道復興に尽くした豪商★平瀬露香さんや膨大な美術品を蒐集した大財閥、藤田伝三郎(香雪)さんら近代を代表する数寄者の愛顧を賜って数々の名物類を扱い、明治期きっての目利きと称されました。
・・・平瀬さんをはじめ、「博物場」についても様々な情報をお持ちのことと思います。ぜひとも、機会をみつけてお話を伺いたいものです。
《家庭画報 平成30年2月号》『藤田美術館の新たな船出』
藤田美術館館長・藤田清氏、藤田(傳三郎)翁が入門された武者小路千家・千宗屋氏、藤田家に明治時代より出入りしていた谷松屋戸田商店★戸田貴士氏の御三方がそろって、藤田美術館について、また国宝の絵巻を前にしての対談の様子が掲載されています。藤田美術館は、国宝9点・重要文化財52点を有する日本屈指の私立美術館で、2020年開館をめざして現在休館中です。
【戸田貴士】
1981年、谷松屋一玄庵の12代目、戸田博氏の長男として大阪に生まれる。3年間のフランス留学を経て、2003年に江戸時代から続く茶道具商谷松屋戸田商店に入社。現在は、同社の代表取締役副社長。