都市環境アメニティ賞(4) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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・・・「都市環境アメニティ賞」にこだわったからこそ、この「風の万華鏡」にたどりついたようなもので、正直ホッとしています。新宮さんの作品については、意識して観て周ってきただけに、こんな近くの作品を見落としていたとは、即刻、訪問させていただきました。


まんげ1


1994新宮晋

【株式会社ブレーンセンター】

530-0043大阪市北区天満4-2-13/06-6355-3300

http://braincenter.co.jp/

ブレーンセンター「風の万華鏡」

http://www.bcbook.com/windkaleidoscope.html

「風の万華鏡」は、動く彫刻と建築の一帯作品。総合デザイン・設計は日本の彫刻家である新宮晋。施工は松村組。設計管理は尾形建築事務所。構造は山田建築構造事務所。ブレーンセンターの本社ビル。1992年竣工。アートと建築が一体化となった独創的な建物で世界的にも例がない。他分野のアーティストが建築設計を行うという日本では極めて稀な試み。世界的な美術家新宮晋の初めての建築作品。


まんげ2


高さ約37メートルのビルに、大きさの異なる8つのオブジェを一直線に配置。上部の3つは自然風で、下部の5つはらせん階段の上昇気流で回転する。イタリアを代表する建築家、レンゾ・ピアノ氏は「本来は相反する芸術性と合理性が両立した、極めてまれな成功例」と絶賛している。制作にあたって、新宮晋は「大阪の出版社の社長、稲田紀男氏から、制作依頼の連絡を受けた。お会いしてみると、稲田氏は若々しく、自分の出版事業に意欲と自身を持っておられるように見えた。ともかく会社のシンボルになる彫刻を考えてほしい、まだ建築家は決まっていないという。話し合っているうちに、いっそ彫刻といっしょに建物の方も考えてもらえないか、ということになった。


まんげ3


それまで私は、建築を手掛けたことは一度もなかったが、総合的に全体を一人で考えることが出来るというチャンスは、とてつもない魅力だった。」と語っている。また、雑誌のインタビューで新宮晋は、「建築の専門家がこのビルをみると、よくこんな建物の許可がおりたなと不思議に思うようです。屋上のオブジェまで含めて全体を“建築”とみなすと、建築法規上はあの高さまで建てられないらしい。建築部分と作品を切離し、作品は屋上広告塔と同じ性質の構造物だからということで、許可がおりたようです。レンゾ・ピアノは『こういう形での美術と建築の融合というのは、当然のようでいながら、実は非常に珍しいものだ。ここまでお前に好き勝手やらせてくれたクライアントに、敬意を払う』と言ってくれた。」と語っている。


まんげ4


竣工当時の他の雑誌の記事では、「経済や効率の面からみても特筆すべきことは、エレベーターに敷地を割く代わりに、作品を設置したこと。作品を眺めながら螺旋階段を昇っても不思議と疲れを感じない。経済的に限られたなかでも、芸術との二人三脚がうまく進めば人に力を与える空間が生まれうるのだ。レンゾ・ピアノ(関西国際空港ビル設計者)がこのビル完成に際し述べた言葉は“企業の文化活動”への示唆になるだろう。日本社会では現実派が夢想家を駆逐している。だがこれは、夢と現実が一緒になりえた稀有な例である。」と評された。1994年には、都会のスカイラインを柔らかくすることが高く評価されて、この建物は★1994年大阪市都市環境アメニティ表彰を受賞している。2013年7月には、京阪電気鉄道株式会社の車内吊り・京阪電車各駅ポスター貼りの「京阪沿線繪になる名建築(水津俊和・画)」vol.10に選ばれ、2013年9月まで掲示されている。


まんげ5


《参考》2013.10.20ブック・アサヒ・コムより

「ぼくの頭の中InsideMyThinking」/著:新宮晋

無人探査機「ボイジャー1号」が先ごろ、完全に太陽系の外に出たという。同機は、地球の言葉や音、画像を記録した金属製のレコードを搭載している。地球外の知的生命に向けたそんな試みがまた行われるなら、そのときはこの一冊も搭載候補になるかもしれない。ちょっと大げさだけれど。風や水で動く彫刻で知られる新宮晋(しんぐうすすむ)(76)が、どうやって作品を生み出してきたか、という過程を示す本だ。いや、本の形はしているけれど、スケッチブックの複製だと思った方がいい。設計図は手描きだし、写真はクリップ止めのイメージ。文字も活字は使わず、日英ともに新宮自身の手書きだ。大阪万博のスイス館に隣接した池に浮かべた現代版ししおどしのような作品に始まり、関西空港では設計者のレンゾ・ピアノに頼まれ、ロビー内の空気の流れが見えるような作品を実現させている。一方で、なぜ作ったのか失念してしまった兵庫県のアトリエ近くの作品の話や、展示期間が終わった後も置いてほしいと言われたパリの公園の例も紹介されている。設計図は、科学読本の解説並みの分かりやすさながら、アートの味わいもちゃんとあって、色彩も鮮やか。完成後の動きを想像すると実に楽しい。風や水といった大自然の動きとかかわる作品のためか、どこかレオナルド・ダビンチの構想を思うことも。筆者は、地球を訪れた宇宙人がお土産にこの星ならではの自作を選んでくれるのではないか、と記している。ならばこの本も、お薦めだ。「ぼく」という地球人の頭の中が分かってしまうのだから。(本社編集委員大西若人)


・・・もちろん新宮さんの頭の中を知りたくて、購入しました。素敵な本です。