・・・やっぱり「動物園」の経緯も紹介しておきましょう。「博物場動物園」と書かれている資料もありますが、府立大阪博物場「動物監」というのが正式なようです。
《天王寺動物園のあゆみ》
機関紙「なまごえ」2015年1月100周年記念51号
http://www.jazga.or.jp/tennoji/nakigoe/2015/01/index.html
・1884年(明17)「大阪府立博物場附属動物檻」設置(中央区内本町橋詰町)。
・1903年(明治36)天王寺をメイン会場として開催された★「第5回内国勧業博覧会」、この時の余興動物園で飼育されていた63種の動物のうち、ゾウ(団平)、ライオン、トラなど9種20点を★府立大阪博物場「動物監」が購入。
【第5回内国勧業博覧会】
開催期間:1903(明治36)年3月1日~7月31日
場所:大阪市天王寺今宮/入場者数:4,350,693人
http://www.ndl.go.jp/exposition/s1/naikoku5.html
1903(明治36)年に大阪で開催された博覧会である。第5回内国勧業博覧会は当初、1899年に開催予定だったが、1900年のパリ万博、1901年のグラスゴー万博への参加準備のため延期されたという経緯がある。日清戦争(1894-95年)の勝利により各企業が活発に市場を拡大していたこと、鉄道網がほぼ日本全国にわたったことなどがあり、博覧会への期待は大きく、敷地は前回の二倍余、会期も最長の153日間で、最後にして最大の内国勧業博覧会となった。
・1909年(明治42)★「北の大火」により動物監移転論が出る。
・1913年(大正2)府会で動物監の廃止、動物の大阪市への無償譲渡が決定される。
・1914年(大3)6月大阪府より移管を受け新動物園建設市会で決定。9月新動物園建設開始(12月に完成)。12月26日開園式挙行。
・1915年(大正4)1月1日大阪市立動物園として開園(大人5銭、小人3銭、4歳未満無料、飼育動物数:60種以上230点、面積:26、025㎡、年間入園者:約57万人)。
※アジアゾウ雄「団平」飼育:1914年12月~1926年10月12日
http://www.jazga.or.jp/tennoji/nakigoe/2005/10/histry.html
団平は開園時から天王寺動物園で飼育されていました。しかし、団平が大阪の地を踏んだのはそれ以前で、1903年に現在の天王寺公園から新世界のエリアで開催された第5回内国勧業博覧会の余興動物園で展示されていた時のことでした。博覧会終了後、★府立大阪博物場に買い取られ「附属動物檻」で展示されていましたが、1913年の閉鎖に伴い大阪市に移管されました。
天王寺動物園は、中央区内本町橋詰にあった★府立博物場から移管されたゾウ、ライオン、トラなど動物181点を中心に大正4年に開園しました。小動物や猛獣は大八車や牛車で運んだのですが、ゾウの団平だけはそんなわけにはいきません。そこで深夜に歩かせて引越しさせることになりました。当時の松屋町筋は道幅6m足らずと狭く、そのうえ、菓子屋や玩具屋の軒先には石油ランプの看板門灯が突き出ています。暴れて民家を壊した場合に備えて修理のための特別予算を組んだという話が残っています。松屋町筋から下寺町を通り、3.3kmを10時間かけて歩いて移動しました。
《NEWS》2015.1.20日本経済新聞より
100年の節目、改革に着手 天王寺動物園の新世紀
2015年1月1日、大阪市天王寺動物園が開業100周年を迎えた。通常、元日は休園だがこの日は特別営業し、家族連れら約6700人が来園。花束贈呈やガイドツアーなどの記念行事に拍手と歓声を上げた。元日から特別営業し花束贈呈などの記念行事を行った。ただ園内を巡ると、アジアの熱帯雨林といった動物の生息環境を模した最新施設に人が集まる一方、空っぽの飼育舎や設備の傷みが各所で目に付く。「アシカ池など一部は戦前の設備が今も現役。老朽化し、安全面でも心配」と同園の榊原安昭獣医師は話す。1915年に東京・上野、京都に続く日本で3番目の近代動物園として開業した園は、1世紀の節目と共に一つの転機を迎えつつある。都心に11ヘクタールの敷地を構え、国内で唯一飼育する鳥のキウイをはじめ多くの希少種を展示するなど特色豊か。だが入園者数は近年120万人前後で推移し、全国の動物園で5、6位にとどまる。少子化や娯楽の多様化の影響もあるがピーク時(1973年度、約335万人)と比べるべくもない。入園者の4~5割は市内の小中学生や高齢者らで無料。経費の約7割を占める大阪市の負担は2012年度は7億6700万円に上った。市の財政難で経営合理化が続き、設備の新設・更新費は2007年度以降、ほぼゼロ。業務の外部委託などを進め、10年前の約4分の3に当たる60人弱の職員で約900匹を世話する。動物園の今後はどうあるべきか。
注目の的になっているのが北海道旭川市の旭山動物園だ。動物それぞれの特徴的な行動を引き出す「行動展示」を掲げて話題を集め、96年度に26万人だった入園者数は2006年度に300万人を超え、人気はなお衰えない。天王寺動物園も改革に乗り出した。指揮を執る改革担当部長を一般公募し、2014年7月、文部科学省官僚から転身した牧慎一郎氏が就任した。官僚時代は科学技術や宇宙関連の政策などを担当する一方、趣味の動物園巡りが高じて動物園を支援するNPOを発足。動物園をテーマにしたテレビのクイズ番組で優勝した経験も持つ異色の人材だ。牧氏は同園について「他の園の動向があまり研究できておらず、来園者の目線に欠けていた。工夫すべき点が多い」と分析する。一例に挙げるのが情報発信。どの動物の子供が最近生まれたのか紹介する情報コーナーが園の入り口になく、新設させたという。「独立行政法人化など今後の運営体制も検討すべき課題」と語る牧氏の任期は3年。次の100年に向けた基本計画を15年度中にまとめ、翌年度から実行に移す方針だ。