【明倫小学校】
明治2年(1869)に下京第三番組小学校として開校した明倫小学校は、平成5年(1993)に124年の歴史をもって閉校しました。
明倫小学校―その名は、石門心学★心学道場「明倫舎」を校舎にあてたことに由来します。占出山町・錦小路通りに面した正門がありましたが、明治8年には山伏山町の土地を購入し、室町通りに面して正門を構えました。その後も手洗水町の土地などを購入し、昭和2年に現在のような敷地となりました。現在ではこの頃の校舎の面影は残していませんが、錦小路通りには門の跡が残されています。古くより呉服問屋で栄え、釜師や画家も暮らした明倫学区。文化への関心、教育への熱意も強く、子どもたちへのあたたかい想いによって「明倫小学校」は育まれてきました。皆川泰蔵や木島桜谷、菊池契月の作品をはじめ様々な芸術品も、作者本人や明倫小学校の卒業生、町の方々らから寄贈されています。(これらの作品は現在、★「京都市学校歴史博物館」に収蔵されています)
●EUGENE KANGAWA×PIERRE JEAN GILOUX
反転しながら接続されるパラレルワールド
2015年9月9日(水)~2015年10月18日(日)
これまでコンタクト・ゴンゾとステラーク、堀尾貞治と冬木遼太郎など、若手作家とベテラン作家が出会うことで、現代美術が抱えている問題や、アートが社会に対してできることを模索してきたNEW INCUBATION。本展は、出展するアーティストにとっても、鑑賞者にとっても、刺激に富んだ挑戦の場となることを目指しています。第7回を迎える今回は、『パラレルワールド または私は如何にして世界を愛するようになったか』と題し、近年目覚ましい活躍を見せる作家EUGENE KANGAWAと、日本での活動を広げつつある映像作家PIERRE JEAN GILOUXを招きます。KANGAWAとGILOUXは、個人の内面ではなく外的事象を制作の出発点とし、異なる領域との協業や、アートと社会のあいだの境界を越えた活動に積極的に関与してきました。しかし、対象へのコミットメントの態度、アーティストとしての主体性のあり方は対照的です。冷静なまなざしで世界を捉え、脚本あるいは設定のみをつくりだすような「最小限の介入」によって、純度の高い作品を結実させるKANGAWA。自らのつくりだすCGの虚構に幻惑されているかのようにイメージに対して「最大限の介入」を行い、想像力とユーモアにあふれたヴィジョンをつくりだすGILOUX。今回はそれぞれの視点から現代の風景を描き出した映像作品を展示します。両者の映像作品からは、それぞれがどのように世界を見て、どのように理解し、どのように再構成したのかが浮かび上がってきます。自然風景が現実以上の強度で切り取られ、秩序正しく作り込まれたKANGAWAの映像は、むしろフィクションに接近していっているように見えます。その一方で、GILOUXがデジタル画像処理によって再構築した虚構の都市は、生物のように有機的に変容していく現実の都市の姿を神秘的に表現しています。それぞれの手法で制作された作品は互いに鋭いコントラストを成しながらも、創作と実写が反転しながら接続される関係にあるように思えます。また、いずれの映像もどこか予兆的で、現代の世界に対するカウンターイメージとしても機能しています。KANGAWAとGILOUXの作品に垣間見える二人の世界観のパラレルな関係、本展の関連企画としてパラレルに開催される期間限定の”特別な”インスタレーション、そして、両作家の目を通して見る世界と私たちが体験する世界の並行関係。本展では、異なるレベルの「パラレルワールド」が重層的に繰り広げられます。KANGAWAは、Terry Rileyとの協働を行うほか、アートの領域を拡張するその試みが海外からも注目を集めています。また、ヴィラ九条山で滞在制作中のGILOUXは、そのユニークな作風から世界各国で高い評価を得ています。二人のハイクオリティーな映像作品をこの機会にどうぞご覧ください。
昭和6年(1931)には、大改築を経て現在の校舎となりました。当時では最先端の鉄骨建築です。京都市営繕課によるデザインで、赤みを帯びたクリーム色の外壁と、スぺイン風屋根瓦のオレンジ色、雨樋の緑青色が、温かみのある雰囲気を醸し出しています。明倫学区には祇園祭の山鉾町の多くが含まれていることもあり、建物の正面は祇園祭の山鉾を模したといわれています。趣のある講堂や、格天井の見事な78畳の大広間、屋上に建つ和室などの特徴的な部屋の他にも、階段の手すりや外壁の装飾、丸窓など、そこかしこに見所があります。また、北館には荷運びや避難経路としても実用的なスロープが採用されています。京都芸術センター開設に伴う改修は、その姿をほぼそのまま残して実施されました。
講堂・大広間・和室「明倫」、制作室として使用している教室などは、イべントで開放している際にしかご覧いただけませんが、図書室や喫茶スぺース、廊下を巡るだけでも、明倫小学校の雰囲気を充分に楽しんでいただけることでしょう。学区に暮らす方々が、長い年月大切に育ててこられたこの「明倫小学校」は、今も「京都芸術センター」として、たくさんの人々が学び、創造し、憩う場として開かれています。
【石門心学】
江戸時代に石田梅岩(1685~1744)が創始した庶民のための生活哲学です。石門とは、石田梅岩の門流という意味です。陽明学を心学と呼ぶこともあり、それと区別するため、石門の文字を付けました。梅岩は、儒教・仏教・神道に基づいた道徳を、独自の形で、そして町人にもわかりやすく日常に実践できる形で説きました。そのため、「町人の哲学」とも呼ばれています。
・・・保存そして活用に値する素晴らしい建物です。ここで学べた子どもたちは、幸せですね。再度、この施設を利用して有意義な「生涯学習」されることを願っております。