・・・これから「室生寺」に行かれる方には、ぜひ「芸術の森」にも立ち寄っていただきたく、たっぷりと紹介したいと思います。
室生山上公園『芸術の森』は、自然環境と調和した公園です。平成9年度に国土庁の支援を受け、過疎対策として「むろうアートアルカディア計画」の策定を行った。村出身の彫刻家井上武吉さんの「森の廻廊計画」を礎に、文化芸術の視点からの村づくりをすすめ、公共事業とアートの融合を事業推進の柱としている。県は地すべり対策の跡地を利用した公園整備を図るために、平成10年度「わが町の斜面地整備構成プラン」を策定。地すべりの視点と地域振興の視点から公園利用を検討した。その後、未来に伝える文化遺産として2006年10月にオープンした。この公園の広さは約7.8ヘクタール。古くからの自然と近代彫刻家の芸術が調和し、公園全体が風景彫刻となっている。地すべり対策集水池に元の水田の自然地形を活かした3つの島が並ぶ棚田の再現や、螺旋の竹林、光と影を利用した天文の塔や太陽の道がある。
★「アートアルカディア計画」1997-2000
「むろうアートアルカディア計画」は、室生村出身で国際的に活躍した彫刻家井上武吉氏の構想「森の回廊計画」を核に、住民によるワークショップを通じて策定された。豊かな室生村の風景を未来へと永く伝えてゆくために、「生活基盤と文化基盤の同時整備→室生らしい風景をつくる」という目標のもと、地域住民の生活を守ると同時に、未来への文化遺産ともなる美しい景観を創り出し、地域を活性化するための交流事業へ寄与しようとする。さらに住民がアーティストとの交流を通じて、自らの創造性を高め、新たな産業などの活性化をめざす総合的な計画である。室生村は、大都市から比較的近いところかに位置しながら、室生寺をはじめとする数多くの歴史文化遺産や自然環境に恵まれた美しい村です。この文化遺産や森や里山の美しい景観は、永年この村に住んできた人々が育んできたものです。しかし、近年、村の産業である農業や林業が経済的な価値を失いつつあるなかで、過疎化の問題を抱え、独自な発想に基づいた村の活性化が模索されています。
今、室生村が求めるものは、村を愛し、村に希望を抱き、将来の室生村を創造しようとする人々の強い想いなのです。多くの人々の力の結集なのです。室生村は千余年の歴史を持つ聖地室生寺や日本一大きい大野寺磨崖仏などの貴重な歴史遺産、さらには谷間の山里や豊かな森などの自然環境に恵まれた美しい村です。しかし、過疎化がすすみ、住民みんなが将来誇りを持って快適に住める村づくりが求められています。この村に生まれた彫刻家の井上武吉先生は、村全体を人間と自然とが共生する美術館とする「森の回廊計画」を考え、生涯をかけて実現したいという夢をもっておられ、数多くの構想スケッチを遺されました。
「むろうアートアルカディア計画」は、この井上先生の構想を活かして、文化を軸とした新しい村づくりをめざす計画です。住民の意向を最大限反映させ、住民全体の文化活動や新たな拠点づくりへと発展させ、村全域に展開し、村が経済的にも文化的にも活性化するために計画されたものです。すなわち、井上先生によってふるさとに蒔かれた文化という種が、住民の手によって育てられ、自然と共生して生活の中で息づき、長い時間をかけて大きな森となって村全体が活性化することを目指す計画です。
※井上武吉(Bukichi Inoue):彫刻家、室生村出身。ふるさとの風景を生涯愛し、深い谷から見上げる小さな天空のイメージから、マイ・スカイ・ホールという独自なテーマにもとづき、スケールの大きな作品を国内外に数多く遺した。三本松の道の駅は、モニュメント、建築を含め、空間全体をデザイン、計画の第一歩の作品となったが、同時に彼の最後の作品となってしまった。将来の計画について、数多くのスケッチを遺している。
室生寺の対岸にある室生地区は地すべり防止区域(面積:約145ha)に指定され、地すべり対策事業を実施している湿地部は「むろうアートアルカディア計画」のシンボル「山の上のモニュメント」の計画地であり、地すべり対策事業と室生村の整備計画を調整し、公共事業とアートが融合する事業展開を図る。「アートアルカディア計画」のシンボルモニュメントとして、室生・山田地区に近い山の上、太陽の道上に最も近い山の上のモニュメントを設置する。これは、大地をイメージした道の駅モニュメント「my sky hole」と対となり、天と地を結ぶ軸となります。そして、道の駅(三本松)と室生寺周辺を結ぶ「森の回廊」を象徴する文化軸です。
・・・まだまだ、続きますよ。