◆十禅律院/紀の川市粉河2849
天台宗安楽律法流の寺である。粉河寺の奥の院かと思われる場所にひっそりと建っているが、「粉河寺とは関係がない」という。
もともと粉河寺の塔頭であったが、江戸後期に紀州徳川家の寄進により独立し、天台宗の寺となったらしい。寺の部屋中の壁や襖、天井には同じ柄の壁紙が張られていた。これは御止ばりといって、殿様の部屋に使われるやり方だという。紀州の殿様もたびたび立ち寄ったのだろう。現在では無檀家の寺であり、財政的に補修もままならない状態である。それでも庭園は手入が行き届き、紀州徳川家の加護を受けていたであろう往時を偲ばせている。庭は「洗心庭」といってバックの和泉山脈を借景とした枯山水庭園である。さほど大きくはないが、庭の向こうに広がる山々と同化して、まさに心が洗われる想いがする。昔は周囲の山全てが松林だったようで、もっと秀逸な借景庭園だったという。案内書には、十代紀州藩主徳川治宝(とくがわはるとみ・1789-1824)が築庭させたとある。
・・・お話をうかがっていると、とても寂しい気持ちになる。この寺は、これからどうなるのだろうか、自分にできることは何もない。せめて、このブログを通して、多くの方々に「粉河寺」へ行かれたのなら、ぜひ「十禅律院」へも立ち寄っていただきたいと、お願いすることぐらい。
・・・お寺も戸・扉・窓を閉められる時刻となり、誰もいない境内をゆっくりとサクラに別れをつげる。
・・・遠路ではあるが、ここまで来て良かったと、本当に思える。上淡路街道を橋本に向かっている途中、友人から連絡が入り「華岡青洲」の話になった。次は、ぜひ訪問したいと考えている。