えへっ(46) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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萬国パクランカイ(5)


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-てら1


■寺山修司さんの詩集「ロング・グッドバイ」の中に次のような一節があります。

休息するのには駅が必要だ だが どこにも駅はなかった

「つまりあなたは こう訊きたいのですね 駅はどこだ、と」

どこだ どこだ 新しい駅はどこだ、と。


■そして、「ねじ式」の中の有名なセリフ・・・

もしもし この近所に医者はありませんか

ぼくは必死になって医者を探しているのです

するとお前さまはイシャを探しているのだね

あなたに義侠心というものがあるならぼくを医者へ案内して下さい

なるほど

きみの言わんとする意味がだいたい見当がつきました

きみはこう言いたいのでしょう

イシャはどこだ!

悪質な冗談はやめて下さい

ぼくは死ぬかもしれないのですよ

ほら ぼくの顔はだんだん蒼褪めていくではないですか

ねッ おしえて下さい

イシャはどこだ!


●寺山修司

1935年12月10日に生まれた(83年没)。しかし戸籍上は翌年1月の生まれということになっている。このタイムラグについて寺山の母は「走っている汽車のなかで生まれたから」と冗談めかして答え、寺山自身この個人的な伝説に執着するようになったと『誰か故郷を想はざる』で振り返っている。手掛けたジャンルは短歌、俳句、詩、小説、戯曲、映画、評論と多岐にわたり、自ら「職業は寺山修司」と公言して憚らなかった。既に没後24年が経過しているが、活動の幅広さと執筆量の膨大さから、未だに全集が編まれていない作家である。


●「ロング・グッドバイ」は、寺山がアンダーグラウンドシアター蠍座公演のために浅川マキに書き下ろした長編詩というか物語である。その詩を歌うことを拒む彼女に対して、寺山は「これを歌わないなら僕が演出する意味がなくなる」とまで言って説得したらしい。おどろおどろしい怨念を渇いたブルースで普遍的な情念として表現できる浅川以外に、これを歌える者はいないに違いない。浅川はステージでこの歌がレコード化できない理由を切々と語り、大切に長年歌い継いできたらしい。だが、浅川のいない今、もうこの作品がこの世で歌われることはない。発売された浅川のベスト・アルバム「long good-bye」にも、その詩を歌にした「ロング・グッドバイ」は収められていない。そもそもレコーディングがされておらず、ライヴで歌い継いできたものだから、CD化されるはずもない。仮に浅川の歌った音源が残っていたとしても、この曲は今後、公に録音されて発表されることはないと思われる。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-てら2


■写真集「Elliott Erwitt "Personal Exposures"」の中の1枚、キャプションには「San Miguel de Allende、 Mexico、 1957」とある。『ねじ式』のシュルレアリスムを象徴するこのシーンが「引用」だったことは、それだけで「事件」と呼ぶに相応しい。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-てら3


Elliott Erwittエリオット・アーウィット(1928年7月26日 - )

1953年にロバート・キャパの推薦により、25歳という異例の若さで報道写真家集団「マグナム」に入会。1955年、ファミリーオブマン展に出展。1988年に「Personal Exposures」、1992年に「我々は犬である」、1994年に「ふたりのあいだ」、1998年「美術館に行こうよ」、2001年に写真生活50周年記念として集大成写真集「Elliot Erwitt Snaps」を出版。彼の作品は、バリバリのドキュメンタリーからスナップや広告など幅が広く、左側の「Personal Exposures」の表紙にもなっている、車のバックミラー越しのカップルの写真は非常に有名です。またもう一つの特徴は、ユーモアにあふれた笑える写真が多いということです。特に「美術館に行こうよ」などは美術館の中での面白おかしい瞬間を撮影した写真集です。「着衣のマハ」の絵の前の女性と、隣に展示されている「裸のマハ」の前に群がる男性を写した写真は、思わずふき出してしまいます。おしゃれで楽しい写真、それがアーウィットの写真です。


・・・特に、犬が大好きなようです。


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■つげ義春さんの代表作「ねじ式」の一場面、それは交友社発行の「鉄道ファン」昭和41年8月号に掲載された慶応義塾大学鉄道研究会による写真紀行・台湾の汽車2=阿里山森林鉄道そのものです。


・・・実際に「鉄道ファン」を取り寄せて確認しました。昭和41年と言えば、私は中学生でちょうどHOゲージにはまっていましたから、当時「鉄道ファン」をよく見ていました。まさか、つげ義春さんの作品に登場するとは驚きです。


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いろいろな話題を提供してくれる刺激的な「ねじ式」です。


発表後、多くの漫画家によってパロディ化されました。代表的なものは長谷邦夫さんによる『バカ式』、赤瀬川原平さんによる『おざ式』、蛭子能収さんによる『さん式』、江口寿史さんによる『わたせの国のねじ式』、部分的なパロディー使用例ではゆうきまさみさんの『究極超人あ~る』、高橋留美子さんの『うる星やつら』など。また『ポケットモンスター』のメノクラゲは名前がメメクラゲからきています。