カテーテル
動脈に細い管を通しての、とても地味な手術で、動脈瘤にコイルを詰めて固めてしまう方法である。
さて、その検査のために何度もMRIを撮った。CTとの違いは???
■CTはコンピューテッド・トモグラフィ(Computed Tomography)
つまりコンピュータ断層撮影の略称で、広い意味で使う場合はMRIはもちろん、コンピュータを使って物体を破壊することなくその断面像を撮影するあらゆる手法を指す。でも、一般にCTと言う場合は、X線を使ったCTのことを指す場合が多い。X線CTの基本はレントゲン写真と同じで、X線を身体に照射して、透過したX線の量の違いから、内部の画像を作り出す。CTの場合は、検査機を身体の周りを一周させて、X線をいろんな方向から照射して、その結果をコンピュータで処理して、立体的な映像を再構成している。
■MRIはマグネティック・レゾナンス・イメージ(Magnatic Resonance Image)
磁気共鳴画像の略称。その名の通り、磁場内における核磁気共鳴現象を利用して断面画像を得る方法で、X線CTとはまったく違う。人間の身体を構成してる物質の大部分には水素の原子核が含まれおり、一定の強さの磁場の中に人体を置くと、この原子核が小さな電磁石みたいになって、同じ方向にスピンするようになる。磁場をなくすと、また元の状態(つまりバラバラな方向にスピンする)になる。ところが、人体の組織ごとに、元の状態に復帰するまでの時間が違う。MRIは人体に磁場を加えてから、水素の原子核の状態が元の状態に戻るまでの時間を測定して、その差をコンピュータで立体映像にしている。そうすると、不思議なことに内蔵とか血管とかの映像ができあがる。MRIが良いのは、放射線を浴びる必要がないこと、骨が写らないのでより詳しく内臓の状態がわかること等々いろいろあるが、磁気を使うので身体に金属を埋め込んでいたりする場合は使えないとか、逆に骨の病気を診るには不向きである。広義のCTには他にもPET(ポジトロン断層法)とかSPECT(単一光子放射断層撮影などもあり、どんどん改良が進んでいる。
頭や身体を固定され、身動きもできない。まるでアイロン台に乗せられて、全身から水分をしぼりとられるような、不安な気分である。
■村上春樹『アイロンのある風景』より
「三宅さんって、どんな絵を描いているの?」
「それを説明するのはすごくむずかしい」
順子は質問を変えた。「じゃあ、いちばん最近はどんな絵を描いたの?」
「『アイロンのある風景』、三日前に描き終えた。部屋の中にアイロンが置いてある。それだけの絵や」
「それがどうして説明するのがむずかしいの?」
「それが実はアイロンではないからや」
順子は男の顔を見上げた。「アイロンがアイロンじゃない、ということ?」
「そのとおり」
「つまり、それは何かの身代わりなのね?」
「たぶんな」
「そしてそれは何かを身代わりにしてしか描けないことなのね?」
三宅さんは黙ってうなずいた。
アイロンの絵と言えば・・・まず「ドガ」でしょう。
続いて・・・「ピカソ」
「ビュッフェ」も入れておきましょう。