KIZUNA69 | すくらんぶるアートヴィレッジ

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■岩手・釜石市つながるデッキ/向き合う玄関

東日本大震災の被災地では、仮設住宅で暮らす高齢者の生活支援が課題になっている。国は各地の仮設住宅地にデイサービスなどを行う介護拠点を設ける方針だ。加えて、住民の交流をうながす新しい仮設住宅の建設に取り組む自治体もある。

●新生活への不安

「私も夫も今は元気。でも仮設で暮らして2、3年もしたらどうなるのか」岩手県釜石市の避難所で、60代の女性が不安な表情を見せた。息子夫婦と暮らす自宅は津波に流された。仮設住宅に入りたいが、3世代での入居は難しく、夫と二人で入居するつもりだ。「避難所で同じ集落の知り合いは5人。仮設に入れば、さらにバラバラになる」と女性は語る。被災地の高齢化率は高く、こうした不安を抱く高齢者は多い。住民のつながりを保ちながら、高齢者が仮設住宅で安心して暮らすには何が必要か。この課題に釜石市が打ち出したのは、「コミュニティケア型仮設住宅」の建設だ。同市の平田総合公園内に建てられる236戸のうち60戸を、高齢者や障害者などが暮らす「ケアゾーン」として整備する。特徴は、住戸をつなぐウッドデッキと、“長屋”のような住戸配置だ。屋根付きのデッキは車いすでも動きやすい。また、通常は北側にそろえる玄関を向き合うように配置、井戸端会議のような交流が生まれやすい環境も作る。近くにデイサービスや生活相談を行う介護拠点も併設し、スーパーマーケットも誘致する。新型仮設は東京大学高齢社会総合研究機構と岩手県立大が提案した。計画を作った大月敏雄・東大准教授は「住民が外に出たくなるような空間があることで、住民同士の見守りもしやすくなる。安心と安全を確保する設計で、多くの地域で取り入れてほしい」とする。

●生きる意欲

仮設住宅での生活支援の重要性は、1995年の阪神大震災で注目された。地域のつながりとは関係なく仮設住宅に入居したため、高齢者の孤独死が問題になった。一方、介助が必要な高齢者や障害者を対象とした「ケア付き仮設」も一部に設置され、成果を上げた。兵庫県芦屋市では、14室の居室にリビングが付いた仮設住宅が設置された。一人でできないことを生活援助員らが介助するだけでなく、入居者が互いに支え合う関係ができた。当時の入居者で、現在はケアハウスで暮らす100歳の香川はなゑさんは「みんな大事にしてくれた。あんなにいいところはなかった」と振り返る。自宅が全壊し、入居当初は「死んだ方がまし」と口にしていたが、仮設住宅で意欲を取り戻した。2004年の新潟県中越地震では、長岡市内の仮設住宅にデイサービスや訪問介護などを行う介護拠点が設けられ、孤独死防止や介護予防に役立った。国も今回、仮設住宅地に100か所以上の介護拠点を設ける方針。見守りやデイサービス、配食など、地域の必要に応じた支援ができる。芦屋市でケア付き仮設の運営に携わった社会福祉法人「きらくえん」の市川禮子理事長(73)は「震災で心身共にダメージを受けた人たちには、だれかがそばにいて、いざという時にも対応してもらえる安心感は大きい。プライバシーを守りながらも、人の気配がする環境を作ってほしい」と話す。

●復興モデルになる

「コミュニティケア型仮設住宅」の意義を、野田武則・釜石市長に聞いた。仮設住宅に入居したことで、地域の絆が崩れることを心配している。従来のコミュニティーを守ることに加えて、仮設に入った後の新しい絆作りが重要になる。新しい仮設住宅は、利便性だけでなく、心のふれあいを大事にした現実的な設計だ。従来は偶然、その地域に生まれたことで人間関係が作られたが、この仮設住宅では、住民が意識しながら絆を作ることができる。震災後、若い世代が流出し、高齢化率は40%を超えているだろう。互いに助け合うことを目指すこの仮設住宅は、復興での地域作りのモデルになる。


■「コミュニティーケア型」仮設住宅、釜石市が建設計画/岩手

●介護や子育て拠点併設
東日本大震災で被害を受けた釜石市は、敷地内に介護や子育て拠点を併設し、高齢者の孤立防止や地域交流につなげる「コミュニティーケア型仮設住宅」の建設を計画している。東京大学・高齢社会総合研究機構の提案を踏まえた。早ければ6月末に入居が始まる見通し。同機構の後藤純特任研究員によると、「コミュニティーケア型」では、住宅100戸に1カ所の割合で、介護の必要な高齢者用のデイサービスセンターや託児機能があるサポートセンターを置く。移動手段のない高齢者や身体に不自由がある人の利便性を確保するため、敷地内には仮設商店も併設。被災者自身にヘルパーや保育士として働いてもらい、雇用確保や人材育成にもつなげたい考えだ。また、仮設住宅で高齢者の孤独死が相次いだ阪神大震災の教訓を生かし、住宅の玄関を向き合うように配置。広場のような場所も確保し、入居者同士が顔を合わせやすい環境をつくる。住宅間の通路は歩きやすいよう板張りにし、玄関にスロープを設けるなど、バリアフリーにも気を配る。後藤研究員は「地域の人々のつながりや災害弱者のために設計した。他地域のモデルになってほしい」と意気込む。市内の平田公園で今月中に着工予定の約240戸のうち、3分の1がコミュニティーケア型になるという。市都市計画課は「仮設住宅の暮らしは長期化が見込まれる。入居者の健康が保たれる環境づくりが欠かせない」と期待する。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-かせつ2


■東京大学高齢社会総合研究機構

超高齢社会の広範で複雑な課題を解決するために、医学、看護学、理学、工学、法学、経済学、社会学、心理学、倫理学、教育学など、各領域の専門家が学問領域を超えて結集した組織である。当機構は、このような組織の特性をいかし、被災地における支援及び復興に対して、あらゆる英知を結集して被災者の皆様の役に立ちたい。

東北の被災地においては高齢化率が全国平均を超えている自治体も多く、一部では既に30%を超えている。また単身高齢者の割合も15%前後と高く、高齢者との同居世帯率も高い。長引く避難所生活においては、これまで自立した生活を送ってきた高齢者も、体力・気力もすっかり衰え、生活習慣も崩れてしまい、実質的な要介護度も上がっている。まず避難期においてはケアスタッフの充実(介護認定見直し含む)が重要である。そして仮設期~復興期にかけては高齢者の生活の質に配慮した仮設住宅地整備が必要となる。画一的な仮設住戸パタンの南面平行配置の仮設住宅地では、過去の震災で指摘されたとおり高齢者の寝たきりや閉じこもりが増え、認知機能及び身体機能はさらに低下してしまう。仮設期は最低でも2年~長ければ5年以上かかるが、住宅のみ構成される仮設住宅地はケアサポート機能を追加する余地がない。すなわちケアが必要となった時、高齢者は再びコミュニティから切り離され、元の生活とは一層かけ離れた地域にある高齢者施設へと隔離されてしまい、二度と戻れなくなる。復興に取り組む世代にとっても両親、祖父母のケアの問題は気がかりとなる。

●ケアタウン構想

(1)ケアタウンの理念

 持続的可能な都市(サスティナブルタウン)を目指していくという社会共通の目標のもとで、当機構はケアタウン構想を理念として掲げている。高齢化の進んだ被災地の復興に際して重要なことは、経済面での復興はもとより、高齢者が孤立することなく、安心してコミュニティ内での役割をもち暮らし続ける試みを実現することである。このことが、すべての人が将来に向けて安心して過ごせる超高齢社会のコミュニティづくりの第一歩である。

(2)環境移行の支援とコミュニティ復興の連続性

 また復興への道筋として最も重要なことは、避難期、仮設期、復興期の全過程を通じた環境移行の支援とコミュニティ復興の連続性の確保である。

環境移行の支援とは、あくまでも従来からのコミュニティが損なわれることなく、被災者が自分らしく生活し続ける環境を確保できるような支援のことである。

コミュニティ復興の連続性とは避難所から復興後の生活に至るまで「住まい」「生活」「かかわる人」が途切れることなく引き継がれることである。具体的には「住まい」の連続性は、コミュニティが崩れることなく避難所から仮設住宅に移れること。またまちの核にはコミュニティケアの拠点となるサポートセンターがあり、高齢者を含む全ての人がその人らしく過ごすためのケアシステムが展開されていることである。「生活」の連続性は、例えばコミュニティケアに関連して地元の人々を雇用し、農林漁業、製造業、サービス業など震災以前の職に戻る足がかりとして、コミュニティケアにビジネスとして関わることで生計の基盤を立て直すことである。これらは産業復興とともに地元の就労の場へと移行される。「かかわる人」の連続性とは外部支援が直接的なフルサポートをし続けるのではなく、徐々に地元によるビジネス(復興作業やケアサポート)を地元が中心となり立ち上げられるように専門家等の人材及び資金支援し、徐々に実施主体を地元に移行させていくことである。

●ケアタウンとは

(1)能力を活かし可能な限り自立できるまち

(2)地域社会で孤立をせずに暮らせるまち

(3)ミニマムケアで生活習慣を維持できるまち


・・・くやしいけれど、さすが東京大学ですね。