コンテナ (Container)2
■倉庫用コンテナにも及んだ建築基準法改正の余波
建築基準法に適合する倉庫用コンテナ、コンテナメーカー「ワイ・エス・シー」代表取締役の森山三郎さんの話によると「残念ながら売れていない」と打ち明ける。同社の倉庫用コンテナ「くら蔵」は、建築確認を得るために、JISの認定材料を使用し、一級建築士が構造計算を行い、基礎を設ける。そのため、通常のコンテナハウスを設置するのに比べて約2倍のコストがかかる。「基礎を設けず、地面に固定していない、建築基準法には合致しないが安価なコンテナハウスがまかり通っている。当然ユーザーは、違法でも安価に済むコンテナハウスを選ぶ」。こうした“売れない理由”を説明した。2004年8月、横浜市港南区にコンテナハウスを設置した事業者に対して、横浜市が撤去を命じた。敷地が第一種低層住居専用地域で、建築協定がかかっていたこともあって、住民が反対運動を起こしたためだ。これを機に、全国でコンテナハウスに対する規制強化の動きが目立つようになる。国土交通省も同年12月6日、「コンテナを倉庫として設置し、継続的に使用する例等が見受けられる。このような随時かつ任意に移動できないコンテナは、その形態及び使用の実態から建築基準法第2条第一号に規定する建築物に該当する。(中略)既に設置されているコンテナを利用した建築物について、建築基準法に適合しない事項がある場合には、違反建築物として扱い、是正指導又は必要に応じ是正命令されるようお願いする」という技術的助言を、各都道府県の建築主務部長あてに出した。「この助言によれば、ほとんどすべてのコンテナハウスが違法建築とみなされ、事業が成立しなくなる」と危機感を抱いたワイ・エス・シーなど、約20社の倉庫用コンテナ会社が05年3月、「レンタルボックス事業者連絡協議会」(現在は日本レンタルボックス協会。森山氏は副会長)を結成。05年暮れに、「国交省との協議で、コンテナをある一定の配置にすれば確認申請時に基準緩和を認める、という大臣認定を取得できる、大まかな合意に達していた」と森山氏は言う。基準緩和の内容は、建築確認申請時の構造計算免除や、JIS相当品を部材として認めることなどだったという。ところが折悪しく、構造計算書偽造問題が世を騒がせた。「国交省は倉庫用コンテナの大臣認定どころではなくなり、話し合いは中断してしまった」(森山氏)。国交省は、「大まかな合意に達していた」という点は否定するものの、「大臣認定について相談を受けたまま、改正建築基準法の準備などで忙しくなり、やり取りできなくなったのは事実だ」と認める。つまり「くら蔵」は、大臣認定を取得できなかったため、“力ワザ”で建基法に適合させた倉庫用コンテナなのだ。大臣認定を取得もできない。特定行政庁などによる、建基法に合致していないコンテナハウスに対する取り締まりが強化されている様子もない。その結果、コンテナハウスの建基法適合に取り組んだ会社は、高価な“適法”コンテナの在庫を抱えてしまった。「もし姉歯問題が起きず、建築基準法改正の騒ぎがなければ、大臣認定を取得できたはずだ。建基法に合致した製品をより安価に提供でき、普及にもつなげられたと思うのだが」と森山氏はため息をつく。建築基準法改正の余波は、こんなところにまで及んでいた。
■吉村靖孝さんがコンテナ規格の被災者用住宅を提案
吉村靖孝建築設計事務所(東京都渋谷区)は東日本大震災の被災者に対し、コンテナ規格の住宅を設計し被災地に届けるプロジェクト「エクスコンテナ・プロジェクト(EX-CONTAINER PROJECT)」を立ち上げた。吉村さんが以前、設計したコンテナ規格のホテル客室ユニットで得た設計ノウハウを活かし、応急仮設住宅だけでなく、再建住宅やコミュニティ施設として利用できるようにする。4月4日時点で想定するのは3タイプ。20フィート・コンテナを横に2つ並べる「仮設住宅スタンダードタイプ」(広さ約28m2)、縦に2つ積む「仮設住宅2階建てタイプ」(広さ約26m2)、2つのコンテナの間に空間を設け広さを約50から60m2にする「常設住宅タイプ」だ。いずれのタイプの住宅にも、洗面、バス、トイレ、キッチン、居室が付く。工場で内装まで仕上げることを想定しており、現場への資材搬入や建設作業を削減できる。吉村さんによると、一般的な応急仮設住宅の建設コストは1戸当たり約300万円かかり、これを2年で撤去すると月額12万円以上のコストになる。エクスコンテナ・プロジェクトの仮設住宅スタンダードタイプの建設コストは300万円を目標にする。仮設住宅2階建てタイプは400万円、常設住宅タイプは500万円がそれぞれ目標とする建設コストだ。仮設住宅と常設住宅を別々にデザインするのではなく、共通化して、仮設と常設を横断する選択肢を提供する。現在、ホームページで、寄付を募集している。賛同者が集まり始めており、設計の支援を申し出る人や、建材を提供したいというメーカーも出てきているという。まずは仮設住宅のプロトタイプを1棟建てる予定だ。4月4日現在、半年で20棟、1年で50棟程度を当面の目標として活動している。
コンテナで忘れてならないのが・・・
写真家であるグレゴリー・コルベールの作品を展示する移動式仮設美術館です。「ノマディック」とは「遊牧」という意味です。ニューヨーク、サンタモニカと巡回して、東京のお台場に2007年3月から6月まで設営されました。市松に積み上げた貨物コンテナや坂茂さん得意の紙管などリサイクル、リユースの考えに基づいてつくられています。
建築家・坂茂が立ち上げた「Voluntary Architects' Network」は、20世紀末から世界で漸増する地域紛争や自然災害の復興支援を行なってきました。《紙の教会》を建てるきっかけになった1995年の阪神淡路大震災から、2010年のハイチ地震復興活動までを貫く坂茂の「Voluntary Architects' Network」による活動が、21世紀の新たな建築家像を描き出します。この本では、坂茂+慶應義塾大学SFC坂茂研究室による約20の活動を紹介・解説するとともに、その活動に共鳴するブラッド・ピット氏(俳優、カトリーナ被災地復興支援組織「Make It Right」主催)、北山恒氏(横浜国立大学Y-GSA、2010年ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナー)との対談、その他資料を収録。「紙の建築家」「行動する建築家」と呼ばれてきた坂茂の核心に迫る一冊です。
そして今回の東日本大震災でも、坂茂さんは活躍されています。