■笑顔戻る紙飛行機/宮城・名取の避難所
届け、僕らの復興への思い。東日本大震災による津波で大きな被害を受けた宮城県名取市の市立閖上(ゆりあげ)小の子どもたちが3日夜、避難先の市立館腰(たてこし)小体育館で開かれたコンサートの最後に、メッセージを書いた紙飛行機を飛ばした。
地震直後、閖上小の教室では、泣いている女子を励まそうと、男子が紙飛行機を投げ、笑顔を取り戻した。「みんな元気に頑張ろう」。思いを込めた紙飛行機が避難所にも笑顔を届けた。地震直後、同小3階にあった6年1組の教室には、低学年の児童も避難してきた。「怖い」。女子が泣いていた。「僕たちに何かできないか」と1組の男子9人が話し合った。「紙飛行機の羽にメッセージを書いて飛ばそう」。斎藤開君(12)が、紙飛行機を作って教室後ろのロッカーにしまっているのを知っていた児童たちの意見がまとまった。斎藤君は、教科書などに張る付箋を使って、小さな紙飛行機を作るのが好きで、2月下旬ごろから作り始め、毎日のように完成した数を友達に報告し、ためていた紙飛行機は約50個。みんなで約30個をその場で作り、教室の中で飛ばした。羽には「泣くな」「大丈夫」などの言葉を書いた。子どもたちは飛び交う紙飛行機を見て泣きやみ、教室にいつもの笑顔があふれた。同小は水が引かずに翌日まで取り残されたが、斎藤君たちは交代で起きて乗り切った。斎藤君自身も津波で自宅が流されたが「自分が役に立ててよかった」と笑顔で話す。コンサートは、館腰小に被災者の往診に来ていた北九州市の国際NGO「ロシナンテス」理事長、川原尚行さん(45)=スーダン在住=が子どもたちに提案して実現した。他の避難所で暮らしている閖上小・中の子どもにも声をかけ、約40人が集まった。慰問に訪れた歌手らと合唱し、校歌も歌った。館腰小に避難している被災者にも折り紙で紙飛行機を折ってもらい一斉に飛ばした。「空に向かってみんなで前に進もうぜ」「希望を持って頑張ろう」。力強い思いが込められた数百の紙飛行機が飛び交うと、体育館は笑い声と歓声に包まれた。同じ6年1組で、祖父を亡くした大林聖花さん(12)も地震後に紙飛行機に励まされた一人で、「ありがとう」と書いて飛ばした。大林さんも笑顔だった。「たくさん飛んでいてきれいだった。作ってよかった」
●ロシナンテス
スーダンは長年続いた内戦などにより国は疲弊し、国民の多くは貧困に苦しんでいます。難民問題をはじめ様々な問題が山積みになっていますが、特に医療問題は深刻です。ロシナンテスはこれらの問題を解決するため、医療活動、学校・教育事業、水・衛生事業、交流事業、スポーツ事業に取り組んでいます。私たちNPO法人ロシナンテスの名前の由来は、小説「ドンキホーテ」に出てくるドンキホーテの乗る痩せ馬のロシナンテから来ています。「私たち一人一人は痩せ馬ロシナンテのように無力かもしれない、しかし、ロシナンテが集まり、ロシナンテスになれば、きっと何かできるはずだ!と考え、「ロシナンテス」と名付けました。今後もこれを信念として一歩一歩進んでいきたいと考えておりますので、皆さまのご支援をよろしくお願い致します。
■消波ブロック、津波には逆効果/切れ目に集中、堤防決壊
東日本大震災で被災した福島県相馬市で、沖にある消波ブロックの列の間に津波が集中して、陸側の防波堤が決壊したことが、早稲田大の柴山知也教授(海岸工学)の調査で分かった。消波ブロックなどで高波や高潮に備えていた護岸設備は、前提としていない津波には弱かった。柴山さんらが調べた相馬市の磯部地区は、砂浜の海岸に設けられた海岸堤防が複数の場所で決壊し、津波が街中に流入した。多くの家屋が押し流され、現在は基礎部分が残されている。柴山さんによると、磯部地区の海岸堤防は海側に波の力を弱めるブロックを置いて台風などによる高潮や高波に備えている。堤防の沖には、海岸線と平行して消波ブロックが並べられている。消波ブロックの列は、海岸の水質悪化を防ぐためにすき間があけられている。海岸堤防は、消波ブロックの列の切れ目に面した部分だけが決壊した。消波ブロックの切れ目に津波が集中、強い水流となって海岸堤防を直撃したと考えられる。柴山さんの測定では、磯部地区を襲った津波の高さは6~8メートル。三陸地方を襲った十数メートルの津波に比べると低い。
福島県の基本計画では、磯部地区の海岸堤防の目的は台風などによる高潮や高波対策で、津波は想定外。国土交通省によると、過去に津波の被災経験の少ない地方では、海岸の防災対策で津波を考慮しないことが多いという。柴山さんは「津波に備えた防潮堤は、水流に耐える設計で崩れにくいが、磯部地区のような波の勢いを吸収する堤防は、長時間にわたり水流が押し寄せる津波には弱かったのだろう。同様の海岸は多く、対策を考える必要がある」と話した。
・・・テトラポッド好きの私としては、大切にしたい教訓である。