いひっ(2) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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仮設ドーム


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-かせつ1



災害からの復興や生活支援の活動のなかに、“デザイン”が持ち込まれるようになった。かたちやアイデアが優れているのはもちろん、現地の人々みずからが使える素材や技術で、できるのもポイントだ。それは、暮らしの安全と安心を守る、土木・建築の原点ともいえよう。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-かせつ2



■ネーダー・ハリーリ(Nader Khalili)

人間はこれまで、木や石や土を使って住宅をつくってきた。なかでも土は、世界中のどこにでも存在する建設材料である。適切な木や石がない土地でも、土だけは手に入る。月にだって土は存在する。このどこにでもある材料にこだわって住まいを考えてきたのが、イラン系アメリカ人の建築家、ネーダー・ハリーリである。彼は、ネイティブアメリカンが住居をつくる際に用いていたアドビという伝統的な素材に着目した。アドビとは、砂や粘土、わらなどを混ぜ合わせ、型枠で成形し、日干しにして固めたレンガのことである。この日干しレンガは、空気中の熱気をゆっくりと吸収するため、室内が涼しく保たれるのが特徴だ。熱帯地域の住宅に適した素材である。最初に試みたのは、土から生まれたアドビの建築物をさらに強固なものにすることだった。彼はアドビを積み上げた住居を陶芸の窯に見立て、その内部で三日三晩火を燃やし続けた。するとアドビは岩のように硬くなり、防水性も高まることがわかった。いわば“セラミック建築”をつくったのである。1975年ごろのことだ。この建築はその後さらに改良が重ねられ、セラミックレンガによる「ルーミードーム」というシェルターシリーズとなった。ルーミーとは、ハリーリが尊敬する13世紀のペルシャの詩人の名前だ。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-かせつ3



ルーミーは「賢人の手にかかれば土も黄金の価値を持つ」という言葉を遺している。ハリーリの研究は月の土を使って住居を建てる方法にも発展した。1984年、この研究結果にNASAが注目し、ハリーリはNASAとともに月のシェルターを検討することになる。ここで彼は土を詰め込んだ土のう袋を積み上げてつくるシェルター「エコドーム」を考案する。ただし、50×80cmの通常の四角い土のうでは自由な空間形態を生み出すことができない。そこでハリーリは長いチューブ状の土のう袋をつくり、これに現地の土を詰めながら巻き上げていくことで、ドーム状のシェルターをつくりだすことに成功した。チューブ土のうの自重、摩擦、採光などを考慮し、ドームやアーチ、ヴォールトなどの構造を組み合わせながらシェルターをつくったのである。トグロ状のチューブ土のうは各所を鉄線で固定してあり、構造は極めて安定している。シェルターの内部にも外部にも土を塗ることで、外観もインテリアも美しく土着的な佇まいを醸し出す。土のう袋は年月が経つと溶けて土と一体化するため環境への負荷も少ない。最初に試みたのは、土から生まれたアドビの建築物をさらに強固なものにすることだった。彼はアドビを積み上げた住居を陶芸の窯に見立て、その内部で三日三晩火を燃やし続けた。するとアドビは岩のように硬くなり、防水性も高まることがわかった。いわば“セラミック建築”をつくったのである。1975年ごろのことだ。この建築はその後さらに改良が重ねられ、セラミックレンガによる「ルーミードーム」というシェルターシリーズとなった。ルーミーとは、ハリーリが尊敬する13世紀のペルシャの詩人の名前だ。ルーミーは「賢人の手にかかれば土も黄金の価値を持つ」という言葉を遺している。ハリーリの研究は月の土を使って住居を建てる方法にも発展した。1984年、この研究結果にNASAが注目し、ハリーリはNASAとともに月のシェルターを検討することになる。ここで彼は土を詰め込んだ土のう袋を積み上げてつくるシェルター「エコドーム」を考案する。ただし、50×80cmの通常の四角い土のうでは自由な空間形態を生み出すことができない。そこでハリーリは長いチューブ状の土のう袋をつくり、これに現地の土を詰めながら巻き上げていくことで、ドーム状のシェルターをつくりだすことに成功した。チューブ土のうの自重、摩擦、採光などを考慮し、ドームやアーチ、ヴォールトなどの構造を組み合わせながらシェルターをつくったのである。トグロ状のチューブ土のうは各所を鉄線で固定してあり、構造は極めて安定している。シェルターの内部にも外部にも土を塗ることで、外観もインテリアも美しく土着的な佇まいを醸し出す。土のう袋は年月が経つと溶けて土と一体化するため環境への負荷も少ない。「ルーミードーム」や「エコドーム」は、構造上の強度を何度もテストし、カリフォルニア州の検査を通っている。これら一連の土のシェルターをハリーリは「スーパーアドビ」と名づけ、戦争や自然災害などから逃れた人たちや都市部のホームレスたちのための住宅として提供している。ハリーリは言う。「地球上で伐採される樹木の65%以上は建築用資材となる。これらを使わなくてもいいシステムを生み出せば、環境問題や資源問題に貢献できる。世界の平和を手助けできるだろう」。ハリーリの提唱するスーパーアドビは、いずれも土を主な材料とした建築物である。住居のサイズを決め、大地に穴を掘り、その土でシェルターをつくる。それを焼くとセラミック建築であるルーミードームとなり、細長い土のう袋に詰めてトグロ状に巻き上げればエコドームになる。まさに「大地の建築(Earth Architecture)」である。ハリーリは2008年に亡くなったが、彼が1991年に設立したカルアース研究所では現在も大地の建築に関する研究が続けられている。同時に、多くのワークショップを実施し、世界中の建築家に大地の建築に関する技術を提供している。また、研究所に蓄積されたさまざまなノウハウを世界中の大学に伝える遠隔教育にも力を入れている。インターネットで動画が配信できる昨今では、戦争や災害が起きた地域で活動する建築家たちにもスーパーアドビのつくり方が広まりつつある。環境、資源、エネルギー、難民など、建築家がさまざまな社会問題と向きあう時代が訪れている。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-かせつ4

■森田一弥建築設計事務所

(1)コンクリートシェル構造のドームによる仮設住宅ユニットの提案

コンクリートの型枠に空気膜ドームをふくらませたものを用い、ドームに被せた麻のメッシュに軽量骨材入りモルタルを塗りつけて建設する。モルタルが硬化する24時間後には空気膜ドームを脱型し、次のドーム建設用に使い回していくことが出来る。また、被災者自身が建設に参加しやすい技術を提供することで、建設後も被災者自身の自助努力によって恒久的な住宅として現地に適応していくことが可能である。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-かせつ5

(2)「SSS(SAKAN Shell Structure)」は、伝統的な左官技術を活用したシェル構造体からなる自助建設型仮設住宅モデルの提案

左官技術により作成されたSSSの無筋モルタルシェル構造体は、その厚さわずか15mm~30mm、鉄筋を一切用いずに実現したと言う点でも、世界的に他に類を見ないものである。SSSは一見単純明快なドーム(楕円体シェル)構造であるが、開口で切り抜かれた下部はドームの特性であるリング効果が失われており、むしろアーチ構造に近い。その構造システムは、①開口より上部のドーム構造、②対角線方向の2対のアーチ効果、③開口周りの4連の環状アーチ効果、の3つに分解して理解することが出来る。作用する鉛直荷重は①のドーム構造を介して面内応力に変換され、②または③の経路で最終的に地盤に伝達されるが、③に関しては環状の4連アーチが相互に釣合う関係にあるので、シェルの大敵である曲げは生じない。問題は②の半楕円形アーチであり、半円形アーチと同様、重力に対して脚部中央付近で曲げモーメントが発生する。また、ライズが非常に高いため、地震時にはむしろラーメン構造の柱に近い曲げモーメントが脚部上方に生じる。そこで、研究の初期段階で、開口周囲にリブを設けることが決定された。このリブは、複数のシェルを連結する際にジョイントとなると同時に、曲げに対して剛性・耐力を高める縁梁としての役割を果たす。また、③のアーチ効果を補剛し、②の負担を軽減する効果も期待できる。