スタードーム(53)
■ノーマン・フォスター(フォスター・パートナーズ社)
1935年、英国マンチェスター生まれ。マンチェスター大学にて建築と都市計画を学ぶ。1961年、同大学卒業後、イェール大学建築学部修士課程に進む。1963年にリチャード・ロジャースとチーム4を共同設立する。1967年にフォスター・アソシエイツ(現在のフォスター・パートナーズ)を設立。ロンドンのメイン・スタジオを中心に世界中にプロジェクト・オフィスをもっている。また、260以上の賞や表彰を受け、55以上の国内外のコンペを獲得している。1983年に英国王立建築家協会のゴールド・メダル、1991年にフランス建築家協会のゴールド・メダル、1994年に米国建築家協会のゴールド・メダル、1999年にプリツカー賞を受賞する。1990年にナイトの称号、1997年にメリット勲位、1999年に一代貴族の爵位が与えられました。
■ラングレー・アカデミー
フォスター・パートナーズ社設計のラングレー・アカデミーが、マテュー・ピンセント卿により正式な開校となりました。建物は持続性を考慮したデザインの一例で、このテーマが建物そのものに体現されています。アカデミーはミュージアム・ラーニング(博物館学習)に特化した初めての学校で、舟こぎ、クリケット、科学学習をカリキュラムの呼び物にもしています。吹き抜けの閉じたアトリウムが3階建ての建物の中心部に位置し、1100人の生徒が集まるこのスペースを中心に生徒たちの社会生活が展開していきます。フォスター+パートナーズが手がけた数々の学校建築に繰り返し表れる要素が、同じくここにも見られます。すなわち、透明性と開放性によって特徴付けられた、まるで「学ぶためのギャラリー」であるかのようなアトリウムです。またそれは、今回のテーマ「ミュージアム」とも共鳴しています。アトリウム内部には、3つの黄色いドラムが床上で円形の柱で支えられています。
このような2階建ての鞘の中には、サイエンス・ラボが10部屋あり、科学教育の重要性を強調しています。スポーツと文化のブロックには、装置完備の劇場、テレビと音の録音スタジオ、防音装置付きの練習室、リハーサルスペース、スポーツホールと講義用の劇場など、音楽とドラマ専用の施設があります。アトリウムから伸びる二つの明るくて広々とした廊下には38の教室が並んでいます。建物は環境考慮型で、従来型の校舎に比べ水の消費量が20%、二酸化炭素は年間にして約150トンの削減につながり、環境問題や科学教育の場としても利用できます。生徒たちは、屋根の太陽光集光装置や、むき出しになった植物園はもちろんのこと、エネルギーがどうやって作られ建物中に伝えられるかを見せてくれるパイプ網を見ることができます。雨水は集積されてろ過され、衛生用水や潅水として再利用されます。水平の放熱孔システムが影を作ります。また課外時間には様々なコミュニティが使うことを想定し、長い時間をかけて持続性が保持されるよう計算して作られています。環境デザインに関しては、フォスター・パートナーズ社はブロ・ハポルドと恊働しました。フォスター・パートナーズ社の上級パートナーでデザイン・ディレクターのナイジェル・ダンシーは次のようにコメントしています。「環境面でのパフォーマンスと外観-ラングレー・アカデミーではこの二つは切っても切れないものです。このアカデミーは、ギャラリーやミュージアムをテーマとすることで、革新的な新しい教育観の先駆者となっています。」環境デザインを物理的に体現し、教育手段とすることで、学校それ自体がひとつの展示になっています。ラングレー・アカデミーは、博物館学習を提供し、自分たちのミュージアムを運営するイギリス初の学校です。博物館学習は、博物館に行くだけで終わりではありません。古代の工芸品やオブジェが教室に持ち込まれることで、疑問がわき、議論が起こり、分析が行われます。そしてカリキュラムを越えたつながりが作られるのです。博物館学習はまた、類を見ない意義ある文化的施設の利用を国中に提供しています。アカデミーでは今年だけで既に12の博物館学習を実施し、数百人の生徒が訪れています。
フォスター・パートナーズ社の建築はもちろんのこと、こんなコンセプトの学校が現実にあるなんて・・・またまたガツンときました。
■上海万博UAEパビリオン
会場の中でもフォスター・パートナーズ社設計による外観がひときわ目をひきます。うねった屋根は金色に輝くステンレス板に覆われ、まるで黄金色に輝く砂漠の砂のように、光のあたる角度により微妙に色を変えてゆきます。万博終了後は、展示館を解体し国に運んで同国の文化センターとして、組み立て再利用する予定だそうです。