スタードーム(52)
2010年7月5日、カザフスタンの首都アスタナにオープンした「カーン・シャティール」。
同国のヌルスルタン・ナザルバエフ大統領と設計者たちが「世界最大のテント」と太鼓判を押すレジャーセンター。針のような頂上部と全体が傾斜したデザインは、カザフ人の移動式住居ユルトをイメージしている。設計を担当したロンドンの建築事務所フォスター・パートナーズ社のシニア・パートナーであるナイジェル・ダンシー氏によると、ユルトは伝統的な遊牧民の建築物で、カザフスタンの歴史と結びつきが深いという。
「カーン・シャティールとは、カーン(王者)のテントというような意味だ」。1997年、ナザルバエフ大統領は首都をアルマトイから寒冷な気候の北中部にある当時アクモラと呼ばれたアスタナに移した。今回のカーン・シャティールのお目見えは、この遷都から13年後にあたる。
完成までに3年半を要したカーン・シャティールは、世界最大のテント、正確には世界最大の張力構造建築物とされている。中央には高さ150メートル、重量2000トンの三脚支柱が立ち、スチールケーブルでできた巨大なネットと3層構造の透明なプラスチックでできた屋根を支えている。
この屋根から太陽光が取り込まれ、テント内の温度を暖かく保つ。建設には650名に及ぶプロの登山家が集められ、気温が摂氏マイナス40度を下回ることもあるこの地域特有の厳しい冬に作業を行わずに済むよう慎重に日程を組まねばならなかった。
「コンセプトは、アスタナ市民が1年中楽しめるような場所を作ることだった」と、フォスター・パートナーズ社のダンシー氏は話す。
新春から、このスケールの大きさに頭をガツンとやられた感じである。